静かな場所

音楽を聴きつつ自分のため家族のために「今、できることをする」日々を重ねていきたいと願っています。

明日、20回目の命日(ベートーヴェン/作品131を聴きながら)

2010年10月13日 22時46分24秒 | バーンスタイン(ベートーヴェン)
 明日は10月14日。今年もバーンスタインの命日がやってきた。
今年は20回目。早いものだ。20年前のことをつい先ごろのように思い出す。
 亡くなる一週間ほど前のこと、つけっ放しのテレビの前を通ったら、たまたまやっていたニュース番組にレニーの指揮姿が映っていた。
私はびっくりして、てっきり「バーンスタイン死去」のニュースかと早合点してしまったが、それは彼が引退を表明したというニュースだったことが後で判り、ほっと一安心したのだった。
ところが、それから数日後に、彼は本当に逝ってしまった。
「ああ、本当に(体調は)悪かったのだな・・・」と、その時にあらためて思った。
引退と死去のニュースの間があまりに短いことが、彼がギリギリまで指揮や若い人への教育に情熱を燃やしていたことを裏付けているようで、胸を焦がした。
そういえば、ロンドン響との最後の来日公演でいくつかの曲を日本人指揮者に任せたり、途中で帰国してしまったことを皮肉交じりに揶揄していた著名人もいた。
何も知らなかったとは言え、メディアを通して憶測でものを言うことの愚かさと恐ろしさを後で感じたものだ。

 1990年・・・・あの年のことをいろいろと思い出す。
 ちょうど二男の発達遅滞がほぼ明らかになり、特にカミさんはそのことをなかなか受け止めきれずにもやもやと悩むようであった。
気丈なようでありながらも次第に神経を削りつつあった。
そういうことで、私は、今ほどではなかったが家事をやったり子どもの相手をしたりしながら、それでもエアチェックや録画をせっせとやっていた。
TVドラマ「ゲゲゲの女房」の中で、水木しげるが飯もそこそこに仕事部屋へ立っていく場面を見たカミさんが、結婚して間もない頃の私と似ていると言って苦笑していた。
私は仕事に追われていたのではないが、当時はFMのエアチェックに余念がなく、午後7時過ぎのクラシック番組をしょっちゅう録音していた。
だから、夕飯と時間が重なると、途中でもバタバタとオーディオのある部屋へ走って行ったり、曲の終了前やテープをひっくり返すころにも、やっていることを中断してチューナーの前に行ったりしていた。
その姿が、TVドラマの中で向井理扮する水木しげると、どこか似ていたと言うのである。
90年の12月にはBSチューナーを導入し、その日以降は衛星放送もよく見ていた。
暮れにはバーンスタインの特集もいくつか組まれ、後に映像ソフト化された札幌PMFの記録や、海外ニュースでのチャイコフスキー5番(終楽章)、ヤング・ピープルズ・コンサートの連続放送などを観た。
あれから20年。レニーが亡くなる半年前に生まれた二男も成人式を終えた。・・・なんて、ちょっと感慨。



ベートーヴェン/弦楽四重奏曲第14番嬰ハ短調op.131
(弦楽合奏版)


ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団



指揮:レナード・バーンスタイン


録音:1977年




 ベートーヴェンの弦楽四重奏曲は、以前にも書いたかと思うが15番(作品132)は、比較的早くからその魅力に惹かれ、何度も聴いてきたが、この14番には随分てこずった。なかなか親しめなかった。
 独白的で内向的な「晩年のベートーヴェン」らしさがプンプン臭う特異な楽曲。
 初聴きのバリリ四重奏団の演奏も、聴き始めた当時は耳にうるさい難解な曲としか思えなかった。
 それが「何とエエ曲か!」と開眼させてくれたのが、この演奏。最初は77年ザルツブルクでのライヴをFMで聴いた。
 その後、友人がヨーロッパへの新婚旅行のお土産として買ってきたくれたのがこのCDであった。彼はクラシックには全然興味なく、全く予備知識なしでジャケット・デザインだけで、このCDを私への土産に決めたと言っていた。当時は国内盤では出ていなくて、私は狂喜したものである。
 すばらしい演奏である。
 まだ、今の私にとっては、聴くたびに新しい感動を与えてくれる曲であり演奏である。
どうのこうのと、分かったようなことが言える段階では全然ない。
 同じ内容のお説教を様々な語り口で聴いているような不思議な充足感がある。16曲中「14番」だが、実質は15番目に作曲された。バーンスタインは、だから、最後の一つ前と最後の弦楽四重奏曲の弦楽合奏版を残してくれたということだ。
 雑誌の記事だったか、ドキュメント番組の中だったか、出処を覚えていないのだが、最後までバーンスタインに反目していたウィーン・フィルの数人のメンバーも、この演奏を機に彼と「和解」したということである(らしい)。

 いつも彼の誕生日と命日には彼の音盤を扱ってきたが、今年はじっくりと聴くひまもなく、夏以来何度も繰り返して聴いていた当盤について少し触れた。
 ああ、もう寝る時間になっちゃった。









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2 コメント

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>jupiterさん (親父りゅう)
2010-10-14 20:50:13
恐縮です。
レニーの亡くなった年と、そのころの我が家のことを「のすたる爺」らしく思い起こしておっただけなんです。
ご心配、本当にありがとうございます。妻はゆるゆると快復の階段を昇っております。あわてずに歩んでいくようにしたいと思っています。
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Unknown (jupiter)
2010-10-13 23:14:33
じーんと来ます。
親父りゅうさんは本当に凄いです、そして音楽を愛好する心の余裕が素晴らしい
これからも
奥様大事にしてあげてください
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