静かな場所

音楽を聴きつつ自分のため家族のために「今、できることをする」日々を重ねていきたいと願っています。

「あるロシアンシューレの系譜」(下野竜也指揮名フィル定期)

2007年10月06日 02時53分50秒 | コンサート
(2007.10.6 am9:18一部訂正)

昨年12月のブル5以来の下野&名フィル定期。
数ヶ月前にチケット買ったものの、いろいろあって「もう行けないかも?」と思ってたが、無事に聴きに行くことができた。
そして、その内容は(私には)もうたとえようもない素晴らしいものだった。
     

名古屋フィルハーモニー交響楽団 第340回定期演奏会

「あるロシアンシューレの系譜」


プロコフィエフ:交響曲第1番ニ長調 作品25『古典交響曲』
グリエール:ハープ協奏曲変ホ長調 作品74*
ラフマニノフ:交響的舞曲 作品45

管弦楽:名古屋フィルハーモニー交響楽団
指揮:下野竜也
ハープ:グザヴィエ・ドゥ・メストレ*

10月5日(金)6:45pm開演 (1日目)
愛知県芸術劇場コンサートホール



1曲目のブロコを下野さんは速い目テンポにて開始。
ああ、いいなぁ。
年間に数回のコンサート通いの私であるから、まあ、ちょっと「気」の入った音楽が眼前で流れ始めたら、もう細かなことは気にならない。
その音楽の魅力や力にただただ酔いしれ平伏すのみ。
この曲のように、中学の頃から親しんでるが生では初めての場合は特にそう。
スコアも持っていないから、目の前で演ってもらって初めて知る「カラクリ」もあったりする。

繰り返しせずに突入した第1楽章展開部、その後半の例の霊感に満ちた部分の高揚感!
チェリが「さあ、プリマドンナの登場だ」と比喩した第2楽章のテーマの入りや第3楽章中間部の持続音と細かなフレーズのミックスの妙、そして、流星群の真っ只中に居るかのようなフィナーレと、曲の美味しい所を全て味わって既に大満足。
下野さん、やっぱりオーラありまする。

2曲目のソリストは、ウィーン・フィルの若きソロ・ハーピスト。
長身で腕が長く、ちょっとイケメン?
実は、グリエールと次の「交響的舞曲」は馴染み薄い曲だったので、チケ入手以来、予習を重ねてきた曲。
当ハープ協奏曲は2種のCDで、かなり聴き込んで今日に備えていたのです。
これ、本当に素敵な曲ですよ。
自分が知らない曲で、こんなに美しいのがまだまだあるんですねぇ。
なんかねぇ、ボエームっぽいメロディみたいな第1楽章に続いて、第2楽章はブラ4と「エニグマ」がちょっと聴こえてきたりして・・・終楽章も、どっかで聴いたような懐かしい響きで・・。

で、今日の演奏は、当然のことながらCDでの印象を大きく越える美しさでした。
生で聴く「ウィーン・フィルのハープ」は、たまらん美音。
それに寄り添う下野&オケのデリケートで「そそる」こと。
夢幻のひとときとはこういうことを指して言うのか、なんて思っちゃった。
ところが、メストレ氏はアンコールを2曲もサービスしてくれて、夢幻モードはさらに倍加され、もう会場全体が極上のヒーリング・シアター化(?)。
ハープのソロっていいですね。
音量差もかなりあって、ホール全体が共鳴するかと思えば、天上から天使のささやきが降ってくるかのような極微音も。
オケのメンバーも客席もとっても「癒され」ましたね。
涙顔の人、けっこう多かったかと・・・。
拍手も含めてメストレ氏のアンコールは20分ほど続きました。

ソリスト・アンコール曲→バリジュ=アルヴァース/マンドリン、 ドビュッシー/アラベスク第1番



さて、後半のラフマニノフは、不案内故にエンリケ・バティス指揮のナクソス盤にて「予習」を重ねてきた曲。
今日の演奏は、バティスの演奏を「生ぬるい」と思わせる、爆裂かつ泣きモード全開の演奏でした。
これ、ラフマニノフ最後の作品なんですね。
「長い間、ライ麦畑のささやきや白樺のざわめきも聞いてないのに、どうやって作曲なんかするのか!」(プログラム・ノートより引用)って言ってたアメリカでのイライラ生活のピークを乗り越えた後に生みだされた傑作のひとつなんですね。

もう、冒頭のすぐあとのバスドラムの一撃からやられましたよ。
緩急のコントラストがすごく効いてて、目(耳)が離せない。
身をくねらせるサックスと管の絡むところは「じっくり酔いしれ感」高得点で、次ぐ弦の演歌部分は、しっかり泣かせてくれてました。
いろんな要素がごちゃ混ぜのようでいて、けっこう自然に流れる不思議な曲です。
35分間の中に、悲劇もラブ・ロマンスも、宇宙戦争もオカルトも犯罪サスペンスも、みんな入ってます。
伊福部音楽の原型や、ちょいマシ目な大河ドラマのテーマなんかも入っちゃってる感じ。

第2楽章は、まるでニューヨークの雑踏の上に現れた「くるみ割り人形」の亡霊みたいな音楽。そうそう、ショスタコの6番みたいな場面もありますね。

そして第3楽章は、またまた、これは真面目な映画だと思って観てたら、ええっ実は喜劇なの?みたいな、あるいは大人のラブ・シーンが盛り上がってきたかと思いきや突然全軍出撃の場面に放り出されたりと、予定調和とはとても言えない道筋を辿って進みます。「ディエス・イレ」がここでは輝かしく登場。プログラムに記載されてたロシア聖歌「アレルヤ」は私には聞き取り不可でした。
そして行き着くフィナーレは・・・この部分はバティス盤も凄かったのですが、今日の下野さんの爆烈ぶりは、もう右手の指揮棒がすっぽ抜けてビオラとチェロの間の2~3列目あたりにすっ飛んでしまうほど。
下野さんは、その後は小澤さんみたいに棒なしで、もう全身リズムの聖化となり、勝利の凱歌のようにも破局への警鐘のようにも聴こえる、この凄まじいクライマックスを「(不動明王+毘沙門天)×2」のような形相で振り続け、タムタムの崖崩れクレッシェンドを引き起こして終結。
拍手に応える最初のお顔はちょっと笑みが失せた荒い息で青ざめてました。

幾つもの演奏を聴いてみえる方であれば、いろいろと細かなことに気付かれたかも知れませんが、でも私は、前から8列目で、こんな音楽を頭から浴びせかけられて、とても「どこがどうの・・・」と言えるものではありませんでした。
ラフマニノフが最後の作品に込めた、一言ではとても表せない「何か」が、このハチャメチャながらも全然バラバラではない、とてつもなくパワフルな曲に感じられて感動でしたよ。
50歳を越えて、初めて「ブラボー」を叫んでしまいましたよ。
あっ、もちろんフライングじゃないですよ。カテコ終了前のいいタイミング(だと自分では思ってますけど・・・)でした。

下野さん、名フィルのみなさん、今回も素晴らしい演奏会でした。
ありがとうございました。


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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
よかったようですね。 (ピースうさぎ)
2007-10-06 10:58:21
こんにちは。

なるべく行こうと思っている名フィルの定期、今回はちょっと行けずに残念ですが、
親父りゅうさんのエントリーを面白く読ませていただきました。
自分も聴いたかのような気になりましたよ。

ブログランキングに参加ですね。ポチッとクリックしておきました。
返信する
>ピースうさぎさん (親父りゅう)
2007-10-06 12:19:13
名古屋フィル、ホントにいいですね。
それに名古屋は大阪より近いのがうれしい。
サイン頂いても帰りの電車に間に合うのがいいです。

名フィルと下野さんの相性はいいみたいですね。
次回(08年)も楽しみです。

ランキングは、ブログ村からのお誘いメールを見て「じゃあ、ちょっとやってみようかな」って・・・。
でも、ランキング向上心は全然ありませんので(ゴメンなさい)、むしろランキングページで他人さまの素敵なブログを見つける楽しみのためにやっているみたいな感じです。でも、ボチッと押して頂けるとうれしいんですけどね(笑)。
返信する
はじめまして (あろーん)
2007-10-07 09:55:23
みなさん、定期演奏会関係のブログが多いなぁと思いつつ、私は土曜日(2日目)16:00よりの340回定期演奏会に県芸コンサートホールに行ってまいりました。
確かに、グザヴィエ・ドゥ・メストレさん。イケメンさんでしたね。それにそれ以上に音色に独特なものがあり、他にはない優雅さ、あでやかさを肌で感じることが出来、とても満足でした。私のときもアンコールを2曲もやっていただき、モルダウともう一曲ピアノソナタ?をやってくれました。ハープの独奏は本当に初めてだったのでうっとりして聴いてました。それと同時にオーケストラの女性の方がうっとりして、拍手をされてたときは、「あー、この人も完全に観衆になっちゃってるなあ」と感じたくらいでした。
なんにせよ、今まで聞いたオーケストラとはまた一味も二味も違った感覚を味わうことが出来ました。やっぱり、秋ですね(笑)
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>あろーんさん (親父りゅう)
2007-10-08 01:04:24
初めまして。
ようこそお越し下さいました。

2日目はアンコールの曲も違ったんですね。
それは聴きたかったです~。

彼(メストレ氏)、今度BSに出るので見逃さないように気をつけなくっちゃ。
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