(2022年6月25日投稿)
【はじめに】
『ローマの休日』(Roman Holiday)は、1953年製作のアメリカ映画である。
監督はウィリアム・ワイラー。 アメリカ映画初出演となるオードリー・ヘップバーンと名優グレゴリー・ペック共演のロマンティック・コメディである。
今回のブログでは、この映画の英語のセリフを考えてみたい。
参考とするのは、次の著作である。
〇藤田英時『名作映画を英語で読む ローマの休日(字幕対訳付)』宝島文庫、2009年
【『ローマの休日』のあらすじ】
・ヨーロッパを周遊中の某小国の王女アン(ヘップバーン)は、常に侍従がつきまとう生活に嫌気が差し、滞在中のローマで大使館を脱出。
・偶然出会ったアメリカ人新聞記者ジョー(ペック)とたった1日のラブ・ストーリーを繰り広げる。
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〇藤田英時『名作映画を英語で読む ローマの休日(字幕対訳付)』宝島文庫、2009年
【目次】
・第1部 「ローマの休日」シーン別リーディング
・第2部 「ローマの休日」のリスニング 発音の変化7つの公式
さて、今回の執筆項目は次のようになる。
・「ローマの休日」シーン別リーディング の構成
・「真実の口の言い伝え」
・祈りの壁「かなわぬ願い事」
・アパート・室内「ジョーとアン王女の心中」
・車の中「ジョーとアン王女の切ない別れ」
・大使館の応接室「アン王女の記者会見」
・アン王女が口ずさんだ詩について
・第2部 「ローマの休日」のリスニング 発音の変化7つの公式
「ローマの休日」シーン別リーディング の構成
〇藤田英時『名作映画を英語で読む ローマの休日(字幕対訳付)』宝島文庫、2009年
「第1部 「ローマの休日」シーン別リーディング」は、次のような構成になっている。
「ローマの休日」シーン別リーディング
Scene 1 ニュース映画 「アン王女のヨーロッパ親善旅行」
Scene 2 大使館・接見室 「アン王女の公式歓迎会・舞踏会」
Scene 3 大使館・アン王女の寝室 「アン王女のヒステリー」
Scene 4 大使館・アン王女の寝室 「医師の注射」
Scene 5 ホテルの一室 「記者仲間のポーカー」
Scene 6 フォロ・ロマーノ 「ジョーとアン王女の初めての出会い」
Scene 7 タクシー 「タクシーの行き先」
Scene 8 マルグッタ通り・ジョーのアパートの前 「運転手とのやり取り」
Scene 9 ジョーのアパート・室内 「ジョーとアン王女とパジャマ」
Scene 10 大使館・大使の書斎 「アン王女の失踪」
Scene 11 ジョーのアパート・室内 「ジョーの寝過ごし」
Scene 12 アメリカン・ニュース社のオフィス 「ジョーの遅刻」
Scene 13 ヘネシーのオフィス 「ジョーの言い訳と支局長の追及」
Scene 14 ヘネシーのオフィス 「ジョーと支局長の賭け」
Scene 15 ジョーのアパート・中庭 「ジョーの借金話」
Scene 16 ジョーのアパート・室内 「ジョーとアン王女の自己紹介」
Scene 17 彫刻家のスタジオ 「相棒のカメラマンへの電話」
Scene 18 ジョーのアパート・室内 「掃除婦のアン王女への説教」
Scene 19 ジョーのアパート・テラス 「ジョーとアン王女のお別れ」
Scene 20 ジョーのアパート・室内 「さようなら」
Scene 21 ジョーのアパート・中庭 「アン王女の借金」
Scene 22 横町・市場 「アン王女の青空市場めぐり」
Scene 23 理髪店 「アン王女の大胆ショートカット」
Scene 24 バー・電話 「電話使用中」
Scene 25 トレビの泉 「ジョーのカメラ探し」
Scene 26 理髪店 「カット終了とダンスへの誘い」
Scene 27 スペイン広場 「アン王女とアイスクリームと花」
Scene 28 スペイン広場の階段 「アン王女の告白と休日の始まり」
Scene 29 ロッカズ・カフェ 「お互いの詮索と相棒カメラマン」
Scene 30 ロッカズ・カフェの中 「ジョーとアービングの密約」
Scene 31 ロッカズ・カフェのテーブル 「アン王女の初めてのタバコ」
Scene 32 ヴェネツィア広場の通り 「スクーターの乱暴運転」
Scene 33 警察署 「ジョーたちの必死の説得」
Scene 34 サンタマリア イン コスメディン教会・真実の口 「真実の口の言い伝え」
Scene 35 モルガーニ通り・祈りの壁 「かなわぬ願い事」
Scene 36 サンタンジェロ城下の船 「パーティでの大騒動」
Scene 37 テヴェレ川・橋の下のアーチ 「ジョーとアン王女の初めてのキス」
Scene 38 ジョーのアパート・室内 「ジョーとアン王女の心中」
Scene 39 アービングの車の中 「ジョーとアン王女の切ない別れ」
Scene 40 大使館・アン王女の寝室 「威厳のあるアン王女」
Scene 41 ジョーのアパート・室内 「支局長のジョーへの追及」
Scene 42 ジョーのアパート・室内 「アン王女の写真」
Scene 43 大使館・応接室 「アン王女の記者会見」
「真実の口の言い伝え」
上記の「ローマの休日」シーン別リーディング の構成の中から、幾つかのシーンを取り上げてみたい。
まずは、Scene 34 サンタマリア イン コスメディン教会・真実の口「真実の口の言い伝え」
について、みてみよう。
JOE : It’s the Mouth of Truth.
The legend is that if you’re given to lying, you put
your hand in there, it’ll be bitten off.
ANN : Ooh, what a horrid idea.
JOE :Let’s see you do it.
ANN : Let’s see you do it.
JOE : Sure.
ANN : No! No, no, no…
JOE : Hello!
ANN : You beast!
It was perfectly all right!
You’re not hurt!
JOE : I’m sorry, it was just a joke!
All right?
ANN : You’ve never hurt your hand.
JOE : I’m sorry, I’m sorry. Okay?
ジョー :“真実の口”だ
言い伝えではウソつきが手を入れると
食いちぎられる
アン :恐ろしいわね
ジョー :試してみろよ
アン :あなたの番よ
ジョー :もちろんさ
(アン :いや! だめ)
ジョー :コンニチハ
アン :ひどいわ
心配したのに
大丈夫なのね
ジョー :ごめんよ
ただの冗談さ
アン :手はケガしてないのね
ジョー :(ごめんよ ごめん)大丈夫?
(藤田英時『名作映画を英語で読む ローマの休日(字幕対訳付)』宝島文庫、2009年、154頁~155頁)
映画『ローマの休日』といえば、このサンタマリア イン コスメディン教会の「真実の口」のシーンは有名である。
このシーンで編者は、次のようなコメントを付している。
このニュアンスを味わう!
●if you’re given to lyingは「ウソをつくくせがあるなら」。
Let’s see you do it.(さあ、やってごらん)とジョーとアンが互いに言っているが、互いにウソをついているので、このシーンは緊張感がでているという。
このトリビアで通になろう!
●ジョーが手をかくして食いちぎられたかのように演じたのはペックのアドリブだったそうだ。
ヘプバーンは本当にびっくりして叫んだが、それがすごくリアルでワンテイクでOKになった。
この顔の石盤はローマ時代の井戸のふたで、海神トリトーネを模したもの。
「真実の口」(The Mouth of Truth)はイタリア語では Le Bocca della Veritaという。
(藤田英時『名作映画を英語で読む ローマの休日(字幕対訳付)』宝島文庫、2009年、156頁~157頁)
このシーンで出てくる【語句】について記しておこう。
※以下の【語句】は筆者が調べたものであることを、お断りしておく。
(出典はすべて『ジーニアス英和大辞典』の電子辞書版)
【語句】
・legend (名)伝説
<例文>
According to a legend, a Cretan king named Minos kept a beast called
the Minotaur penned up in a labyrinth at his palace.
伝説によれば、ミノスという名のクレタの王は、ミノタウロスという名の怪物を、宮殿の
迷宮に閉じこめていたという
・be bitten off <bite off かみ切る(off, away)
・horrid (形)恐ろしい、背筋がぞっとするような(horrible)
◆horr-(戦慄)+-id(状態を表す形容詞語尾)
・beast (名)動物、獣
<用例>
Beauty and the Beast 『美女と野獣』(童話の題名)
You beast! けだもの、こん畜生
・hurt (他)を傷つける、~にけがをさせる
<例文>
As long as you’re not hurt, that’s the main thing.
君が怪我をしていないのなら、それは何よりだ
祈りの壁「かなわぬ願い事」
Scene 35 モルガーニ通り・祈りの壁 「かなわぬ願い事」
IRV :I’ll park at the corner.
ANN :What do they mean ― all these inscriptions?
JOE :Well, each one represents a wish fulfilled.
All started during the war, when there was an air
raid, right out here.
A man with his four children was caught in the
street.
They ran over against the wall, right there, for
shelter, prayed for safety.
Bombs fell very close but no one was hurt. Later
on, the man came back and he put up the first of
these tablets.
Since then it’s become sort of a shrine.
People come, and whenever their wishes are
granted, they put up another one of these little
plaques.
ANN :Lovely story.
アビン :角に停めてくる
アン :この文字が書かれた板は?
ジョー :願いがかなったしるしだ
戦時中にさかのぼるが
子供連れの男が空襲にあった
この壁まで逃げ込み無事を祈った
近くを爆撃されたが
家族は無事
後日彼はここに最初の板をかけた
それ以来祈りの場所になった
願いがかなうと
新たな板をかける
アン :いい話だわ
(藤田英時『名作映画を英語で読む ローマの休日(字幕対訳付)』宝島文庫、2009年、158頁~159頁)
【語句】
・inscription (名)銘、碑文
・fulfill (他)(予言・希望などが)実現する(realize)
・put up ~を上げる、掲げる、立てる、~を掲示する
・grant (他)人に(願いなど)をかなえてやる、人に(権利など)を与える
<例文>
God grant you success in this most recent effort.
ごく最近の努力であなたの成功がかなえられますように
アパート・室内「ジョーとアン王女の心中」
Scene 38 ジョーのアパート・室内 「ジョーとアン王女の心中」
ANN : A wonderful day!
RAD : This is the American Hour from Rome,
broadcasting a special news bulletin in English
and Italian.
Tonight, there is no further word from the bedside
of Princess Ann in Rome, where she was taken ill
yesterday on the last leg of her European
goodwill tour.
This has given rise to rumors that her condition
may be serious, which is causing alarm and
anxiety among the people in her country.
La Principessa Anna…
ANN : The news can wait till tomorrow.
JOE : Yes.
ANN : May I have a little more wine?
I’m sorry I couldn’t cook us some dinner.
JOE : Did you learn how in school?
ANN : Mmmm, I’m a good cook.
I could earn my living at it.
I can sew too, and clean a house, and iron.
I learned to do all those things.
I just.. haven’t had the chance to do it for
anyone.
JOE :Well, looks like I’ll have to move… and get myself
a place with a kitchen.
ANN : Yes.
I…have to go now.
アン :でも楽しかった
ラジオ :番組からニュースを
お知らせいたします
昨夜病気に倒れた
アン王女のその後の容体は
まだ知らされておりません
病状悪化のうわさもあり
母国にも懸念の色が
広がっています
(アン王女は…)
アン :明日でいいわ
ジョー :そうだな
アン :もっとお酒を
料理ができなくて残念
ジョー :学校で習った?
アン :料理の腕はプロも顔負けなのよ
(料理で食べていけるわ)
お裁縫もアイロンがけも
何でも一通り習ったわ
ただ披露する機会がなくて
ジョー :どうやら台所付きの家に
引っ越したほうがよさそうだ
アン :そうね
もう行かなくては
(藤田英時『名作映画を英語で読む ローマの休日(字幕対訳付)』宝島文庫、2009年、174頁~177頁)
【語句】
・broadcast (他)(テレビ・ラジオで)を放送する
・bulletin (名)(新聞・ラジオ・テレビの)短いニュース、速報
<例文>
We interrupt our regular broadcast to bring you a bulletin.
番組を中断してニュースをお知らせいたします
・leg (名)脚、1区切り、行程
<例文>
the first leg of a trip 旅行の最初の行程
・goodwill (名)親善、友好
<例文>
pay a goodwill visit to Norway ノルウェーに親善訪問をする
・alarm (名)驚き、心配、不安
<例文>
The news caused alarm in the USA and UK.
その知らせは米国と英国に不安をもたらした
・anxiety (名)心配、不安
<例文>
feel strong anxiety for her safety
彼女の安否を大変気づかう
車の中「ジョーとアン王女の切ない別れ」
Scene 39 アービングの車の中 「ジョーとアン王女の切ない別れ」
ANN : Stop at the next corner, please..
JOE : Okay.
Here?
ANN : Yes. I have to leave you now.
I’m going to that corner there, and turn.
You must stay in the car and drive away.
Promise not to watch me go beyond the corner.
Just drive away and leave me, as I leave you.
JOE : All right.
ANN : I don’t know how to say goodbye.
I can’t think of any words.
JOE : Don’t try.
アン :次の角で停めて
ジョー :分かった
ここ?
アン :ええ お別れしないと
私はあそこの角を曲がるけど
車から下りないでね
あの角から先は見ないと約束して
ただ車を走らせて私を置いたままで私もお別れします
ジョー :分かった
アン :何とお別れを言えば
言葉が思いつかなくて
ジョー :無理しなくても
(藤田英時『名作映画を英語で読む ローマの休日(字幕対訳付)』宝島文庫、2009年、178頁~179頁)
【語句】
・leave (他)(場所・人のいる所を)去る、離れる
<例文>
・I’m leaving you tomorrow. 君とは明日お別れだ
・It pains me to leave you. 君と別れるのは辛い
・I must love you and leave you. (略式)もうおいとましなくては
・promise (他)約束する (名)約束
<例文>
・I promise (you) that I won’t be late for dinner.
=I promise (you) not to be late for dinner.
夕食に遅れないと約束します
・I promise not to trouble you again.
もうあなたにご面倒をおかけしないと約束します
・I will tell you the secret, but you must promise not to tell anyone.
秘密は教えるけど、誰にも言わないって約束してくれ
大使館の応接室「アン王女の記者会見」
Scene 43 大使館・応接室 「アン王女の記者会見」
IRV : It ain’t much, but it’s home.
NOB : Ladies and Gentlemen, please approach.
MAJ : Sua Altezza Reale ― Her Royal Highness.
AMB : Your Royal Highness ― the ladies and gentlemen
of the press.
M.C. : Ladies and gentlemen, Her Royal Highness will
now answer your questions.
PRS : I believe at the outset, Your Highness, that I
should express the pleasure of all of us at your
recovery from the recent illness.
ANN : Thank you.
FRN : Does Your Highness believe that federation
would be a possible solution to Europe’s
economic problems?
ANN : I am in favor of any measure which would lead to
closer cooperation in Europe.
ITA : And what, in the opinion of Your Highness, is the
outlook for friendship among nations?
ANN : I have every faith in it ― as I have faith in
relations between people.
JOE : May I say, speaking from my own press service,
we believe that Your Highness’ faith will not be
unjustified.
ANN : I am so gland to hear you say it.
SWE : Which of the cities visited did Your Highness
enjoy the most?
GEN : “Each in its own way…”
ANN : Each in its own way was … unforgettable.
I would be difficult to ..Rome!
By all means, Rome!
I will cherish my visit here in memory as long as I
live.
GER : Despite your indisposition, Your Highness?
ANN : Despite that.
アビン :これが家か たいしたことない
式部官:皆様こちらへどうぞ
執事長:王女様のお出ましです
大使 :王女様 こちらが
記者の方々です
式部官:これから皆様のご質問に
お答えします
米記者:最初に一同を代表して
先のご病気からのご回復
お喜び申し上げます
アン :感謝いたします
仏記者:欧州の連邦化が
経済問題の解決策だと
ご自身もお考えですか
アン :欧州の緊密化促進の
政策であれば賛成です
伊記者:国家間の友好関係について
今後の見通しはどうですか?
アン :友好を心から信じます
人と人との友情と同じく
ジョー :わが社を代表して申し上げます
王女様のご信頼は裏切られないでしょう
アン :それをうかがい大変嬉しく思います
ス記者:訪問地でどこが一番
お気に召しましたか?
アン :それぞれ忘れがたい思い出があります
とても1つには…ローマです
何と申してもローマです
この地の思い出は一生大切にします
独記者:ご病気になられたのに?
アン :そうです
(藤田英時『名作映画を英語で読む ローマの休日(字幕対訳付)』宝島文庫、2009年、198頁~201頁)
【語句】
・outset (名)初め、発端 ◆ beginning, start より堅い語
at the outset 最初は
・federation (名)連邦(にすること)
・favor (名)好意、支持
in favor of O=in O’s favor… …に賛成の[で]、…に味方して
<例文>
I’m very much in favor of cutting taxes.
私は減税に大賛成です
・outlook (名)見晴らし、[物・事の]見通し(for)、見解(on, about)
<例文>
the outlook for recovery 回復の見通し
・faith (名)信頼
<例文>
I have great faith in her, she won’t let me down.
私は彼女を大いに信頼している、彼女は私を失望させることはないだろう
・by all means ①[承認・許可のていねいな強調]もちろん
②[同意を強調して]まさにそのとおり
③[決意・信念を強調して]絶対に
・cherish (他)(人が)<望み・考え・感情など>を(大切に)心に抱く
<例文>
cherish the memory of my sweet grandmother やさしい祖母のことを懐かしむ
・despite (前)…にもかかわらず(◆ in spite of より堅い語;新聞などで好まれる)
<例文>
She went to Spain despite the fact that the doctor had told her to rest.
お医者さんが休養するように言ったにもかかわらず、彼女はスペインに行った。
アン王女が口ずさんだ詩について
アン王女が口ずさんだ詩について述べておこう。それは次のシーンで出てくる。
〇Scene 6 フォロ・ロマーノ「ジョーとアン王女の初めての出会い」
〇Scene 9 ジョーのアパート・室内 「ジョーとアン王女とパジャマ」
〇Scene 6 フォロ・ロマーノ「ジョーとアン王女の初めての出会い」
ANN : “If I were dead and buried and I heard your voice
-beneath the sod my heart of dust would still
rejoice.” Do you know that poem?
JOE : Huh! What do you know!
You’re well-read, well-dressed… snoozing away in
a public street.
Would you care to make a statement?
ANN : What the world needs is a return to sweetness
and decency in the souls of its young men and …
mmmmmhhhhhhhhmmmmm…
JOE :Yeah, I …uh…couldn’t agree with you more, but
um… Get yourself some coffee, you’ll be all right.
Look, you take the cab.
アン : “死して埋められるとも君が声を聞かば
土の下に眠るわが心は喜びに満ちるであろう”
この詩をご存じ?
ジョー :こりゃ驚いた!
学もあって身なりもいいのに
道で寝ているとはね
何かご意見があれば
アン : 世界に必要なのは
若者たちの心に優しさと
品格を取り戻すことです
ジョー :ごもっともだけど
コーヒーを飲めば良くなる
君が乗りなさい
〇Scene 9 ジョーのアパート・室内 「ジョーとアン王女とパジャマ」
ANN : Do you know my favorite poem?
JOE :Ah, you’ve already recited that for me.
ANN : Arethusa arose, from her couch of snows, in the
Akraceronian Mountains. Keats.
JOE :Shelley.
ANN : Keats!
JOE :You just keep your mind off the poetry and on the
pajamas, everything will be all right, see?
ANN : It’s Keats.
JOE :I’ll be - it’s Shelley - I’ll be back in about ten
minutes.
ANN : Keats. You have my permission - to withdraw.
JOE :Thank you very much.
アン : 私の好きな詩を?
ジョー :もうさっき聞いた
アン :“雪の長椅子よりアレトゥサは立ち上がる
アクロサロニアの山々に抱かれて”キーツよ
ジョー :シェリーだ
アン :キーツよ
ジョー :詩はいいからパジャマを着ろ
楽になる
アン :キーツよ
ジョー :シェリーだよ
10分ほどで戻る
アン :もう下がってよろしい
ジョー :そりゃ どうも
(藤田英時『名作映画を英語で読む ローマの休日(字幕対訳付)』宝島文庫、2009年、36頁~37頁、52頁~53頁)
『ローマの休日』の中の一場面として、このシーンは見逃せない。
睡眠薬で道端で眠っているアン王女がなにやら詩を口ずさむ。
「If I were dead ~rejoice」
「もし私が死んで埋葬されて、あなたの声を聞いたならば、土の下で私の心はなお喜ぶ事でしょう。」くらいの訳になるようだ。
そしてアン王女は、ジョー(ペック)に、
“Do you know that poem?”と尋ねる。
そしてジョーのアパートでアン王女が、
“Arethusa arose ~Akraceronian Mountains.”
と口ずさみ、そして “Keats”という。
ジョーはそれに対し、 “Shelly”という。
アン王女はそれでも“Keats”という。
この映画では、ジョーは正しく解するレベルの人間だということを示しているそうだ。
(ジョーの言っている “Shelly”の方が正解だという)
編者も、次のようなコメントを付している。
●この詩「Arethusa」の作者をアンはKeatsと勘違いしており、ジョーが言うShelleyが正しい。2人とも19世紀イギリス・ロマン派を代表する詩人で、「キーツ・シェリー博物館」がスペイン階段の右手にあるとする。
(藤田英時『名作映画を英語で読む ローマの休日(字幕対訳付)』宝島文庫、2009年、53頁)
※この詩は、脚本家のオリジナルという説もあるそうだ。
ともあれ、どうも詩の吟誦も紳士淑女の条件の一つであるようだ。
新聞記者ジョーが、ただのポーカー好きのやくざな新聞記者ではなく、詩の吟誦もやろうとすればいつでもできる教養ある紳士だと知って、この映画を見ると、ひときわ味わいが増すだろう。ジョーはアン王女の相手役たる資格があるという。
第2部 「ローマの休日」のリスニング 発音の変化7つの公式
英語の発音は七変化する
☆日本人はなぜネイティブが話す自然な英語が聞き取れないのか?
☆つづりを見れば知っている英語でも聞き取れないのはなぜか?
この疑問に対して、実際の会話では英語の音が変化するからと編者は答えている。
話し言葉は、語を省略したり、短くしたり、2つの語をつなぎあわせたりして、言いやすいように、発音が変化する。
その発音の変化が特に激しいのが英語。
実際の英語の発音は、個々の単語が発音されるときとは違って変化する。
(それは英語のリズムが関係している)
そこで、英語の発音の変化を次の7つの公式にして、紹介している。
【発音の変化7つの公式】
第1公式 音が弱くなる「弱化」
第2公式 音が短くなる「短縮」
第3公式 音がつながる「連結」(リエゾン)
第4公式 音が消える「消失」
第5公式 音が抜け落ちる「脱落」
第6公式 音がとなりの音に似る「同化」
第7公式 音が別の音に変わる「融合同化」
そして、この知識があるだけでも、「ローマの休日」がかなり聞き取れるようになるという。
第1公式 音が弱くなる「弱化」
・英語では、すべての音がはっきりと発音されるわけではなく、弱くなる音がある。
(弱くなって消えることもある)
⇒音が弱くなることを弱化(じゃくか)という。
●音が弱くなる例―1
<例文>
I spoke to him. →I spoke to ’im.
トゥ ヒム トゥイム
※himはふつうは「ヒム」のように発音されるが、音が弱くなって先頭の[h]が落ちる
※to ’imとつながり「トゥイム」のようになる
●音が弱くなる例―2
<例文>
What’s her name? →What’s’er name?
ワッツ ハー ワッツアー
※herはふつうは「ハー」のように発音されるが、音が弱くなって先頭の[h]が落ちる
※What’s’erとつながり、「ワッツアー」のようになる
●音が弱くなる例―3
<例文>
Tell them I said hi. →Tell ’em I said hi.
テル ゼム テルエム
※them はふつうは「ゼム」のように発音されるが、音が弱くなって先頭の[th]が落ちる
※カジュアルな発音では、Tell ’emとつながって「テルエム」のようになる
●よく起きる「弱化」の例
tell him →tell ’im
ask her →ask ’er
let them →let ’em
what he →what ’e
something →somethin’ →some’m
can →c’n
for →f’r
from →fr’m
some →s’me
第2公式 音が短くなる「短縮」
・英語では、音が短くなることがある。
語の音が弱く発音されて一部が消えてしまったり、特定の語と語がつながって発音の一部が省略されたりするからである。
⇒音が短くなることを短縮(たんしゅく)という
・I’ve やThat’dのように短縮された形を短縮形という
●音が短くなる例―1
<例文>
I will get it. →I’ll get it.
アイ ウイル アイル
※willの先頭が省略されて、’llと音が短くなる
※音が省略された部分は、’(アポストロフィー)で示される
●音が短くなる例―2
<例文>
I have got to go. →I’ve got to go.
アイハヴ アイヴ
※haveの先頭が省略されて、’veと音が短くなる
※音が省略された部分は、’(アポストロフィー)で示される
●音が短くなる例―3
<例文>
I would be glad to.→I’d be glad to.
アイ ウッド アイド
※wouldの先頭が省略されて、’dと音が短くなる
※音が省略された部分は、’(アポストロフィー)で示される
●よく起きる「短縮」の例
<主語+have動詞>
I have →I’ve
you have →you’ve
they have →they’ve
<主語+had>
I had →I’d
you had →you’d
they had →they’d
<主語+be動詞>
I am →I’m
you are →you’re
they are →they’re
<be動詞+not>
are not →aren’t
is not →isn’t
was not →wasn’t
<主語+will>
I will →I’ll
you will →you’ll
they will →they’ll
<主語+would>
I would →I’d
you would →you’d
they would →they’d
<助動詞+not>
cannot →can’t
will not →won’t
could not →couldn’t
<疑問詞+be動詞/will>
what are →what’re
what is →what’s
what will →what’ll
第3公式 音がつながる「連結」(リエゾン)
・英語では、語句の音と音がつながって発音されることがひんぱんにある。
特に子音と母音の組み合わせでは、音がつながるのが自然で言いやすいからである。
⇒音がつながることを連結(れんけつ)またはリエゾンという。
●音がつながる例―1
<例文>
I’ll be back in an hour. →I’ll be back in an hour
イン アン アワー イナナワー
※[n] [a]で「ナ」、[n] [a]で「ナ」
●音がつながる例―2
<例文>
Mind if I join you? →Mind if I join you? (dと ifと Iが連結)
マインド イフ アイ マインディファイ
※[d] [i]で「ディ」、[f] [ai]で「ファイ」
●音がつながる例―3
<例文>
I’ll give it a try.→I’ll give it a try. (ve とitと aが連結)
ギヴ イット ア ギヴィラ
※[v] [i]で「ヴィ」、[t] [a]で「タ」から「ラ」
●よく起きる「連結」の例
[r]+母音
are all →reとaが連結
figure it →reとiが連結
[n]+母音
in order →nとoが連結
sign up→nとuが連結
[d]+母音
should I →dとIが連結
find out →dとoが連結
[t]+母音
set it →tとiが連結
at all →tとaが連結
第4公式 音が消える「消失」
・英語では、単語のなかの音が消えることが多々ある。
英語のリズムの関係や [n] のあとに [t] が続くなど、音の組み合わせで発音しやすいように消えてしまう。
⇒単語のなかの音が消えてしまうことを消失(しょうしつ)という。
●音が消える例―1
<例文>
How about you? →How ’bout you?
アバウト バウト
※aboutは「バ」にアクセントがあるので、その前の「ア」は弱く発音される
※「ア」がさらに弱くなって消えてしまうが、これがかなり一般的な発音
●音が消える例―2
<例文>
We’ve got plenty of time. →We’ve got plen’y of time.
プレンティ プレニィ
※plentyには[n] [t]と続く音があり、[n] の影響で[t]が消えてしまう
※アメリカ英語では、[n]+ [t]の組み合わせで、[t]が消えることが多い
●音が消える例―3
<例文>
That’s exactly the point. →That’s exac’ly the point.
イグザクトリィ イグザク()リィ
※exactly には[t] [l]と続く音があり、[l] の影響で[t]が消えてしまう
※[t]が消えても[t]を発音するために口を構える一瞬の間(ま)がある
●よく起きる「消失」の例
twenty →twen’y
exactly →exac’ly
certain →cer’n
doctor →do’tor
outside →ou’side
expect →’xpect
suppose →s’ppose
believe →b’lieve
suggest →s’ggest
different →diff’rent
appreciate →’ppreciate
friend →frien’
第5公式 音が抜け落ちる「脱落」
・英語では、自然に話されるときに、単語と単語のつながりにおいて音が抜け落ちてなくなってしまうことが多々ある。
同じ音や似た音を2度言うのは言いにくいので1つになったり、英語の強弱のリズムのせいで自然と音が抜け落ちるからである。
・しかし、ただ抜け落ちるだけではなく、その場所に一瞬の間(ま)が取られる。
⇒語と語がつながるなかで音が抜け落ちることを脱落(だつらく)という。
●音が抜け落ちる例―1
<例文>
I’ll have hot tea. →I’ll have ho’ tea.
ハットティー ハッ()ティー
※hotの[t]とteaの[t]と同じ音が続いている
※同じ音が続くと、前の1つが抜け落ちる
●音が抜け落ちる例―2
<例文>
Have a good day. →Have a goo’ day.
グッド ディ グッ()ディ
※good の[d]とday の[d]と同じ音が続いている
※同じ音が続くと、前の1つが抜け落ちる
●音が抜け落ちる例―3
<例文>
I could have done that. クッド ハヴ
→I could’ve done that. クダヴ
→I coulda done that. クダ
※could haveは haveの[h]が抜け落ちて、could’ve(クダヴ)のようにつながる
※さらに’veの[v]が抜け落ちて、coulda(クダ)のようにつながる
●よく起きる「脱落」の例
<同じ音どうし>
[m] [m]で前の音が脱落
some more →so ’more
[l] [l]で前の[l]が脱落
I’ll leave →I’ leave
[t] [t]で前の[t]が脱落
hot tea →ho’ tea
[k] [k]で前の[k]が脱落
take care →ta’ care
<似た音どうし>
[g] [d]で前の[g]が脱落
big deal →bi’ deal
big diamond →bi’ diamond
[d] [t]で前の[d]が脱落
hard time →har’ time
[d] [p]で前の[d]が脱落
good place →goo’ place
food processor →foo’ processor
第6公式 音がとなりの音に似る「同化」
・英語には、音がとなりの音に似ることがたくさんある。
ある音が、となりの音の影響を受けて、その音に似たり、同じ音になったりするケースがかなりある。
⇒2つの音がとなりあっているとき、一方が他方の影響を受けて、となりの音に似たり、同じ音になることを同化(どうか)という。
●音がとなりの音に似る例―1
<例文>
I have to go now. →I hafta go now.
ハヴ トゥ ハフタ
※haveの[v]がtoの[t]の影響を受けて、[f] に変わる
※そして単語同士がつながって、hafta(ハフタ)かhafto(ハフトゥ)のようになる
●音がとなりの音に似る例―2
<例文>
What’s that supposed to mean? →What’s that suppose’ta mean?
サポウズド トゥ サポウスタ
※supposed の[d]がtoの[t]の影響を受けて、[t] に変わる
※そして単語同士がつながって、suppose’ta(サポウスタ)のようになる
●音がとなりの音に似る例―3
<例文>
Put them in there. →Put them in ’ere.
イン ゼア インネア
※inの[n]がthereの[th]の影響を与えて、[n] のように変える
※すると[n] の音が2つ続くようになり、in ’ere(インネア)のようになる
●よく起きる「同化」の例
<前の音が、後ろの音に影響を与えて同化>
[n]が [th]に影響を与え同じ[n] の音になる
in that →in ’at
down there →down ’ere
doin’ that →doin ’at
<後ろの音が、前の音に影響を与えて同化>
[k]が [v]に影響を与えて[f] に変える
of course →off course
[t]が [v]に影響を与えて[f] に変える
have to →hafta/hafto
[t]が [d]に影響を与えて[t] に変える
used to →use’ta/use’to
pleased to →please’ta/please’to
[p]が [n]に影響を与えて[m] に変える
in person →im person
in public →im public
第7公式 音が別の音に変わる「融合同化」
・英語では、自然に話されるときに、となりあった2つの音が互いに影響を与え合って、第3の音を作り出すことが多々ある。
となりあった2つの音を続けて発音すると、口の構えから自然に別の音になるからである。
⇒2つの隣り合った音が互いに影響しあって、別個の音(第3の音)に変化することを、融合同化(ゆうごうどうか)という。
●音が別の音に変わる例―1
<例文>
Nice to meet you. →Nice to meetju.
ミート ユー ミーチュ
※[t] [j]の2つの音が互いに影響しあう
※すると[t∫チュ]という新しい音(第3の音)に変化する
●音が別の音に変わる例―2
<例文>
Could you do me a favor? →Couldju do me a favor?
クッド ユー クッジュ
※[d] [j]の2つの音が互いに影響しあう
※すると[dz ジュ]という新しい音(第3の音)に変化する
●音が別の音に変わる例―3
<例文>
I’ll miss you. →I’ll misju.
ミス ユー ミシュー
※[s] [j]の2つの音が互いに影響しあう
※すると[∫シュ]という新しい音(第3の音)に変化する
●よく起きる「融合同化」の例
makes you →makesju
hope you →hopju
make you →makju
as you →azju
give me →gimme
let me →lemme
going to →gonna
want to →wanna
「ローマの休日」ではこう話されている
※第1公式 音が弱くなる「弱化」
<例文>
JOE:I’ve got them right here, somewhere.
→I’ve got ’em right here, somewhere.
※第2公式 音が短くなる「短縮」
<例文>
JOE:What is your hurry? There is lots of time.
→What’s your hurry? There’s lots of time.
※第3公式 音がつながる「連結」(リエゾン)
<例文>
ANN:May be another hour.
→May be another’our.
※第4公式 音が消える「消失」
<例文>
JOE:No, how about this?
→No, how ’bout this?
※第5公式 音が抜け落ちる「脱落」
<例文>
IRV:You must be out of your mind!
→You must be outta your mind!
※第6公式 音がとなりの音に似る「同化」
<例文>
IRV:I got to get up early.
→I gotta get up early.
※第7公式 音が別の音に変わる「融合同化」
<例文>
HEN:Oh, I think I know the dress you mean.
→Oh, I think I know the dresju mean.
【主なキャラクターの略称】
ANN:アン(某国の王女)
JOE:ジョー(新聞記者)
IRV:アービン(Irving:写真家)
HEN:支局長(Hennessy:ジョーの上司)
(藤田英時『名作映画を英語で読む ローマの休日(字幕対訳付)』宝島文庫、2009年、10頁、208頁~223頁)