《フォークソング考―その歴史的変遷とコード進行を中心としてー その1》
【はじめに】
私の青春時代は、いつもフォークソングが流れていた時代であった。私の中学から大学時代は、フォークソングの全盛時代で、心の支えであった。
そのフォークソングは、戦後歌謡の歴史の中でどのように位置づけられるのであろうか。この疑問に答えるために、このブログを書き綴った。
フォークソングを理解するにあたり、次のような問題意識を抱きつつ、考察してみることにした。
1)まず、コードおよびコード進行とは、どのようなものなのか。
2)フォークソングによく用いられるコード進行は何か。
3)日本のフォークソングは一体いつ頃からいつ頃までの歌を指すのか。また、どのような時代背景のもとに誕生し、発展し、そして衰退していったのか。
4)日本のフォークソングは、アメリカのフォークソングから、どのような影響を受けたのか。
5)日本のフォークソングと、それ以外の歌謡曲、ニューミュージック、演歌、Jポップ、そして洋楽とは、どのような関係にあったのか。
6)フォークソングとメディア(ラジオ、テレビなど)との関係はどのようなものであり、どう変化したのか。
7)フォークソングと、ニューミュージックとは、どう異なるのか。その際に、日本のミュージック・シーンを誰がどのように変えていったのか。つまり、フォークソングの歴史的変遷をどのように捉えられるのか。
こうした問題意識の下に、フォークソングを論じるにあたって、アプローチとして、
1)歴史的変遷
2)コード進行の分析
といった2点に留意しつつ、述べることにする。
それでは、まず、コードおよびコード進行について説明したい。
【コードについて】
コードとは、3つ以上の音が組み合わさった様々な集合のことをいう。ポップスやフォークの世界では、色々なコード進行を覚えることによって、楽器演奏のテクニックやソングライティング、アレンジメントなどを身につけることができる。「コードを制するものは、ポップスやフォークを制す」というわけである。
メジャー・コードとマイナー・コードの構成音については、次のように考えるとわかりやすい。つまり、メジャー・の場合は、ルート、第3音、第5音からなり、ルートに半音4個たして第3音を、第3音に半音3個たして第5音をのせる。コードC(シー)はC(ド)・E(ミ)・G(ソ)になる。マイナー・コードの作り方は、裏ワザとして、メジャー・コードの第3音を半音下げればよい(浅倉、2008年、41頁)。
CやGがメジャー・コードと呼ばれる響きの明るいコードであるのに対して、Am、Emといったマイナー・コードは暗く物悲しい文字どおりマイナーな響きのコードである。一方、短調という少し淋しく哀愁のあるスケールを使うタイプの曲もある。例えば、Key in Am(イ短調)がそれである。ピアノで弾くと、一度も黒鍵を押さえることもなく、全ての音が白鍵でなりたっているので、マイナー・キーの基本としてまず覚える(五十嵐、1997年、54頁)。
また秋谷えりこは、コード進行について次のような説明をしている。
●トニック(T=Tonic)
キーを司るコードで、安定感をもたらし、「静的」な性質をもつ
●ドミナント(D=Dominant)
緊張感のあるコードで、2つの導音(Leading Note)を含むために不安定で、トニックに解決したがる「動的」な性質をもつ。
●サブドミナント(SD=Sub-Dominant)
ある展開のきっかけをもたらし、上の2つの「静と動の中間的」な性質をもつ
例えば、T→SD→D→Tのコード進行、Ⅰ→Ⅳ→Ⅴ→Ⅰ(イチ・ヨン・ゴー・イチ)は、Key=Cの場合、C→F→G7→Cとなり、「静→展開→動→静」といった性質がある。
このコード進行は野球にたとえられると秋谷えりこは言う。Tはホームベースである。打者がヒットを打ち、1塁か2塁に出たとすると、点をとれるゲーム展開の「きっかけ」ができたので(SD)となり、次に3塁まで出たとしたら、ホームベースに戻りたくてしょうがない「緊張感」があり、興奮して動き出す(D)となり、最後にホームベース(T)に戻ってきたなら、「安心」するというのである(秋谷、1999年、44頁)。
音楽のコード進行と野球のたとえは、言い得て妙である。
【秋谷えりこ『ポピュラー音楽に役立つ知識』(シンコー・ミュージック)はこちらから】
秋谷えりこ『改訂版 ポピュラー音楽に役立つ知識』
【コード進行について】
楽曲の骨組みとなるコード進行は、1部形式の場合、4小節目の終わりのコードはトニックかドミナント・コードで、その間のコード進行は自由である。またエンディングは、ドミナント・コードまたはサブドミナント・コードを経て、トニック・コード(カデンツ=ケーデンス=終止形)にする。
カデンツ(ケーデンス=終止形)は楽曲の終わりを表わすコード進行で、次のパターンがその代表的な終止形である
1 Key=C(ハ長調)の場合
1)完全終止(起立・礼型)=ドミナント・コード(G7)→トニック・コード(C)
2)アーメン終止=サブドミナント・コード(F)→トニック・コード(C)
(T→)S→Tは、キリスト教の教会音楽でよく利用される終止なので、別名アーメン終止という。
2 Key=Am(イ短調)の場合
1)完全終止(起立・礼型)=ドミナント・コード(E7)→トニック・コード(Am)
2)アーメン終止=サブドミナント・コード(Dm)→トニック・コード(Am)
(原礼彦『やさしい編曲のしかた』成美堂出版、1997年、43頁~46頁、林知行『標準ポピュラー・コード理論』シンコー・ミュージック、1995年、48頁)
【林知行『標準ポピュラー・コード理論』(シンコー・ミュージック)はこちらから】
林知行『標準 ポピュラーコード理論 改訂新版』
私のかつてのブログ記事はこちらから
「歴史だより」(2009年~)
参考文献はアマゾンから
《参考文献》
富澤一誠『フォークが聴きたいー青春のマイ・ソング210曲』徳間文庫、1999年
富澤一誠『松山千春―さすらいの青春』立風書房、1979年
富澤一誠『さだまさし―終わりなき夢』立風書房、1980年
富澤一誠『あの素晴らしい曲をもう一度――フォークからポップスまで』新潮新書、2010年
原礼彦編曲『ピアノ伴奏付 フォーク名曲集』成美堂出版、1993年
松山祐士『学園愛唱歌選集<ピアノ伴奏編>』ドレミ楽譜出版社、1994年
原礼彦『やさしいピアノ&キーボードコード進行パターン』成美堂出版、1992年
原礼彦『やさしい楽譜の読み方』成美堂出版、1991年
原礼彦『やさしいピアノの弾き方』成美堂出版、1992年
原礼彦『やさしいロック・キーボードのひき方』成美堂出版、1999年
原礼彦『初心者のためのやさしいピアノ伴奏の付け方』成美堂出版、1992年
原礼彦『やさしい編曲のしかた』成美堂出版、1997年
斉藤芳江『見開式クイックマスター ピアノのコード学』ヤマハミュージックメディア、2001年[2002年版]
斉藤芳江『よくわかるロックキーボード・コード入門』シンコー・ミュージック、1988年[1990年版]
平野章子『ひと目でわかるピアノ・コードの押え方』ドレミ楽譜出版社、2002年
ハート音楽院『攻略ガイド フォークギター入門』大泉書店、1996年
林哲司『ポップス作曲法―ベッシック・アプローチ編』リットーミュージック、1993年[1997年版]
林哲司『ポップス作曲法―ケース・スタディ編・林哲司の実践的アプローチ』リットーミュージック、1994年
橋本晃一『おとなのためのピアノ教本併用スリー・コード・ピアノ・レッスン』ドレミ楽譜出版社、2012年
五十嵐洋『ポップスのピアノ伴奏ができるようになる本』リットーミュージック、2012年
石沢功治『すぐ歌えるコード進行ネタ帳~鍵盤で作れる5万曲!』リットーミュージック、2009年[2010年版]
矢萩秀明『音で確認!CD付き コード進行パターンブック ピアノ/キーボード[応用編]』
ヤマハミュージックメディア、2006年
福田裕彦『ピアノ・コードワーク入門』音楽之友社、1995年
藤井英一『コード進行がわかる本』ヤマハミュージックメディア、1992年[1998年版]
藤田進『アコースティック・ギター完全攻略マニュアル』自由現代社、1998年
藤田進『はじめの一歩 作詞・作曲入門ゼミ』自由現代社、1994年
桑野洋子『CDで学ぶ楽譜の読み方』ナツメ社、1995年
水谷友香・キッシー岸田『CDで覚えるやさしい楽譜の読み方』成美堂出版、2005年
秋谷えりこ『ポピュラー音楽に役立つ知識』シンコー・ミュージック、1999年
藤田哲也『ギター弾き語り ポピュラー・ヒット・コレクション』シンコー・ミュージック、2000年
林知行『標準ポピュラー・コード理論』シンコー・ミュージック、1995年
北川祐『コード進行ハンドブック』リットーミュージック、1988年[1992年版]
セブンスリー・プロダクション『メガヒット黄金の法則』リットーミュージック、1998年
江部賢一『やさしいギター・コード進行パターン』成美堂出版、1996年
鮎川久雄『40歳からのピアノ入門――3ヶ月でマスターした『コード奏法』講座』講談社、2005年
an弾手(鮎川久雄)『お父さんのためのピアノ教室―体験的コード奏法超入門』ドレミ楽譜出版社、2004年[2007年版]
角聖子『「ピアノ力」をつける!』音楽之友社、2005年[2007年版]
田家秀樹『ラヴ・ソングス――ユーミンとみゆきの愛のかたち』角川文庫、1988年
田家秀樹『読むJ-P0P 1945-1999私的全史 あの時を忘れない』徳間書店、1999年
前田祥文・平原康司『日本のフォーク&ロック・ヒストリー② ニューミュージックの時代』シンコー・ミュージック、1993年
北山修『戦争を知らない子供たち』ブロンズ社、1971年
きたやまおさむ『ビートルズ』講談社現代新書、1987年[1994年版]
松本隆『風のくわるてつと』(新潮文庫、1972年[1985年版]
中島みゆき『愛が好きです』新潮文庫、1982年[1988年版]
松任谷由実『ルージュの伝言』角川文庫、1984年[1989年版]
財津和夫『ぼくの法螺』集英社、1981年
小椋佳『小椋佳 いたずらに』新潮文庫、1981年
山本コウタロー『ぼくの音楽人間カタログ』新潮文庫、1984年
加山雄三『ぼくの青春讃歌―この夢をこころに』講談社文庫、1986年
美空ひばり『川の流れのように』集英社文庫、2001年
谷村新司『夢創力。人間「谷村新司」から何を学ぶのか』創英社/三省堂書店、2010年
見崎鉄『さだまさしのために』KKベストセラーズ、1998年
藍川由美『これでいいのか、にっぽんのうた』文春新書、1998年[1999年版]
藍川由美『「演歌」のススメ』文春新書、2002年
なかにし礼『翔べ!わが想いよ』新潮文庫、2003年
なかにし礼『NHK知る楽 探求この世界 2009年8-9月 不滅の歌謡曲』日本放送出版協会、2009年
なかにし礼『歌謡曲から「昭和」を読む』NHK出版新書、2011年
グループfuture『ZARD&坂井泉水プロファイリング』コアラブックス、2000年
茂木幹弘『ポップス・ヒットパレード―私のおしゃべり放送史―』旺文社文庫、1985年
新谷のり子『反戦歌――唄うこと、そして生きること』ぴいぷる社、1993年
小貫信昭『YES-NO小田和正ヒストリー』角川文庫、2000年
竹田青嗣『陽水の快楽―井上陽水論』河出書房新社、1990年
歌代幸子『天に響く歌―歌姫・本田美奈子の人生』ワニブックス、2007年
小倉千加子『増補版 松田聖子論』朝日文庫、2012年
永井良和『南沙織がいたころ』朝日新書、2011年
あの日の歌製作委員会(重松清)編『あの日の歌』ソル・メディア、2014年
山住正己『子どもの歌を語る―唱歌と童謡』岩波新書、1994年
伊藤悟『ヒット曲が世界を変える』雲母書房、2006年
原礼彦『ピアノ伴奏付フォーク名曲集』成美堂出版、1993年
『ピアノ伴奏フォークソング100曲集』ケイ・エム・ピー、1999年
松山祐士『メロディー・ジョイフル ニューミュージック・ベスト200』ドレミ楽譜出版社、1993年
松山祐士『学園愛唱歌選集―ピアノ伴奏編』ドレミ楽譜出版社、1994年
松山祐士『魅惑のラヴ・バラード・ベスト100』ドレミ楽譜出版社、1994年
松山祐士『J-POP名曲全集』ドレミ楽譜出版社、1997年
松山祐士『エンジョイ・ピアノ ハ調で楽しむポップス』ドレミ楽譜出版社、1998年
松山祐士『結婚式で歌える・弾ける歌謡曲集』ドレミ楽譜出版社、2006年
松山祐士『メロディ・ジョイフル 今!話題の70年代ヒット・ベスト100』ドレミ楽譜出版社、1994年
堀野羽津子『フォーク&フォーク』成美堂出版、1987年
堀野羽津子『思い出のメロディー 昭和編』成美堂出版、1997年
堀野羽津子『特選演歌―心に残る全150曲』成美堂出版、2001年
富橋将行ほか『ベスト・フォーク300』自由現代社、1998年
ドレミ楽譜出版社編集部『心にのこるフォークソング』ドレミ楽譜出版社、1995年
デプロ編『やさしいピアノ・ソロ おとなの音楽 歌謡曲』デプロ、2009年
藤原豊『やさしく弾けるピアノ ラブバラードからスタンダードナンバーまで』ナツメ社
いとうたつこ編『大人のためのピアノソロ すぐ弾けるニューミュージック Vol.2』東京音楽書院、1996年
Music School Wood『初心者から学べるマイ・ピアノ・レッスン弾き語りコース』ドレミ楽譜出版社、1990年
西東社出版部編『日本のこころの歌』西東社、2004年
デプロ『ハ調で弾くピアノ 心を癒すピアノ全集/ニューミュージック』デプロ、2003年
浅倉千紗『ニューミュージック・ピアノ弾き語り入門[女性編]』ドレミ楽譜出版社、2008年
青山しおり『ピアノ弾き語りニューミュージック/クリスマス ナイト』ドレミ楽譜出版社、1991年
片岡博久『やさしく弾ける小田和正 ピアノ・ソロ・アルバム』ケイ・ピー・エム、1998年
片岡博久『すぐ弾けるピアノ・レッスン』成美堂出版、2000年
片岡博久『やさしく弾ける卒業 ピアノ・ソロ・アルバム』ケイ・ピー・エム、2008年
山口秀法『ピアノソロ 不滅の名曲・財津和夫』東京音楽書院、1995年
西東社編集部『カラオケ・ベストヒット』西東社、2001年
林知行『ピアノ・ビギナーのための映画音楽:上』ドレミ楽譜出版社、2000年
菊地雅洋『CDで覚えるやさしいピアノの弾き方』成美堂出版、2002年
松尾英樹『これで完璧! ピアノの基礎』リットーミュージック、2001年
宮野わかな『CDで学ぶコードで弾けるピアノ』ナツメ社、1998年
織田英子『たのしい作曲のしかた』成美堂出版、1999年
金子卓郎『コード進行による作曲入門ゼミ』自由現代社、1995年
藤井英一『コードがわかる本』ヤマハミュージックメディア、1992年[1998年版]
吉開狹手臣『実力UP はじめてのピアノ弾き語り』中央アート出版社、1997年
青山忠英『よくわかるレコード・コピー入門』シンコー・ミュージック、1987年
丹羽あさ子『ピアノ弾き語りのコツ早わかり』ドレミ楽譜出版社、1994年
ドレミ楽譜編集部編『ピアノ・コード早わかり』ドレミ楽譜出版社、1991年
五十嵐洋『7日間でマスターするフォークギター』ナツメ社、1997年
石川鷹彦『石川鷹彦のもう一度はじめよう! フォークギター再入門』(日本放送出版協会、2009年
中村とうよう『ポピュラー音楽の世紀』岩波新書、1999年
みつとみ俊郎『メロディ日本人論―演歌からクラシックまで』新潮選書、1987年
みつとみ俊郎『音楽ジャンルって何だろう』新潮選書、1999年
別冊宝島編集部編『「Jポップ」批評1』宝島社文庫、1999年
別冊宝島編集部編『「Jポップ」批評2』宝島社文庫、1999年
稲増龍夫&ポップス中毒の会『洋楽 in ジャパン―日本で流行したロック&ポップス ‘68-’86』学陽書房、1994年
稲増龍夫&ポップス中毒の会『歌謡曲完全攻略ガイド‘68-’85』学陽書房、1996年
佐藤良明『J-POP進化論 「ヨサホイ節」から「Automatic」へ』平凡社新書、1999年
倉田喜弘『「はやり歌」の考古学 開国から戦後復興まで』文春新書、2001年
恩蔵茂『ニッポンPOPの黄金時代』ベスト新書、2001年
小原孝『ねこふんじゃったの国から』メディアパル、2002年
烏賀陽弘道『Jポップの心象風景』文芸春秋、2005年
烏賀陽弘道『Jポップとは何か―巨大化する音楽産業』岩波新書、2005年[2012年版]
北中正和『ロック』講談社現代新書、1985年[1990年版]
宮本啓『ミュージカルへの招待』丸善ライブラリー、1995年
阿久悠『書き下ろし歌謡曲』岩波新書、1997年
阿久悠『愛すべき名歌たち―私的歌謡曲史―』岩波新書、1999年
岩谷時子『愛と哀しみのルフラン』講談社文庫、1986年
アンジェラ・アキ『アンジェラ・アキのSONGBOOK in English』NHK出版、2012年
羽田健太郎『NHK趣味百科 英語ポップス歌唱法Ⅱ』日本放送出版会、1995年
「音楽を読む本」編集委員会編『ピアノを読む本 もっと知りたいピアノのはなし』ヤマハミュージックメディア、1994年[2003年版]
ザ・ビートルズ・クラブ『ジョン・レノン全仕事②イマジン~時を超えて』小学館文庫、2010年
ジェームズ・クネン(青木日出夫訳)『いちご白書―ある大学革命家のノート』角川文庫、1971年[1984年版]
庄司薫『赤頭巾ちゃん気をつけて』中公文庫、1973年[1985年版]
桜井哲夫『思想としての60年代』ちくま学芸文庫、1993年
高神覚昇『般若心経講義』角川文庫、1952年[2001年版]
森豊『シルクロードと日本文化』白水社、1982年
有田芳生『私の家は山の向こう テレサ・テン十年目の真実』文春文庫、2007年
ギターの購入はこちらから
【はじめに】
私の青春時代は、いつもフォークソングが流れていた時代であった。私の中学から大学時代は、フォークソングの全盛時代で、心の支えであった。
そのフォークソングは、戦後歌謡の歴史の中でどのように位置づけられるのであろうか。この疑問に答えるために、このブログを書き綴った。
フォークソングを理解するにあたり、次のような問題意識を抱きつつ、考察してみることにした。
1)まず、コードおよびコード進行とは、どのようなものなのか。
2)フォークソングによく用いられるコード進行は何か。
3)日本のフォークソングは一体いつ頃からいつ頃までの歌を指すのか。また、どのような時代背景のもとに誕生し、発展し、そして衰退していったのか。
4)日本のフォークソングは、アメリカのフォークソングから、どのような影響を受けたのか。
5)日本のフォークソングと、それ以外の歌謡曲、ニューミュージック、演歌、Jポップ、そして洋楽とは、どのような関係にあったのか。
6)フォークソングとメディア(ラジオ、テレビなど)との関係はどのようなものであり、どう変化したのか。
7)フォークソングと、ニューミュージックとは、どう異なるのか。その際に、日本のミュージック・シーンを誰がどのように変えていったのか。つまり、フォークソングの歴史的変遷をどのように捉えられるのか。
こうした問題意識の下に、フォークソングを論じるにあたって、アプローチとして、
1)歴史的変遷
2)コード進行の分析
といった2点に留意しつつ、述べることにする。
それでは、まず、コードおよびコード進行について説明したい。
【コードについて】
コードとは、3つ以上の音が組み合わさった様々な集合のことをいう。ポップスやフォークの世界では、色々なコード進行を覚えることによって、楽器演奏のテクニックやソングライティング、アレンジメントなどを身につけることができる。「コードを制するものは、ポップスやフォークを制す」というわけである。
メジャー・コードとマイナー・コードの構成音については、次のように考えるとわかりやすい。つまり、メジャー・の場合は、ルート、第3音、第5音からなり、ルートに半音4個たして第3音を、第3音に半音3個たして第5音をのせる。コードC(シー)はC(ド)・E(ミ)・G(ソ)になる。マイナー・コードの作り方は、裏ワザとして、メジャー・コードの第3音を半音下げればよい(浅倉、2008年、41頁)。
CやGがメジャー・コードと呼ばれる響きの明るいコードであるのに対して、Am、Emといったマイナー・コードは暗く物悲しい文字どおりマイナーな響きのコードである。一方、短調という少し淋しく哀愁のあるスケールを使うタイプの曲もある。例えば、Key in Am(イ短調)がそれである。ピアノで弾くと、一度も黒鍵を押さえることもなく、全ての音が白鍵でなりたっているので、マイナー・キーの基本としてまず覚える(五十嵐、1997年、54頁)。
また秋谷えりこは、コード進行について次のような説明をしている。
●トニック(T=Tonic)
キーを司るコードで、安定感をもたらし、「静的」な性質をもつ
●ドミナント(D=Dominant)
緊張感のあるコードで、2つの導音(Leading Note)を含むために不安定で、トニックに解決したがる「動的」な性質をもつ。
●サブドミナント(SD=Sub-Dominant)
ある展開のきっかけをもたらし、上の2つの「静と動の中間的」な性質をもつ
例えば、T→SD→D→Tのコード進行、Ⅰ→Ⅳ→Ⅴ→Ⅰ(イチ・ヨン・ゴー・イチ)は、Key=Cの場合、C→F→G7→Cとなり、「静→展開→動→静」といった性質がある。
このコード進行は野球にたとえられると秋谷えりこは言う。Tはホームベースである。打者がヒットを打ち、1塁か2塁に出たとすると、点をとれるゲーム展開の「きっかけ」ができたので(SD)となり、次に3塁まで出たとしたら、ホームベースに戻りたくてしょうがない「緊張感」があり、興奮して動き出す(D)となり、最後にホームベース(T)に戻ってきたなら、「安心」するというのである(秋谷、1999年、44頁)。
音楽のコード進行と野球のたとえは、言い得て妙である。
【秋谷えりこ『ポピュラー音楽に役立つ知識』(シンコー・ミュージック)はこちらから】
秋谷えりこ『改訂版 ポピュラー音楽に役立つ知識』
【コード進行について】
楽曲の骨組みとなるコード進行は、1部形式の場合、4小節目の終わりのコードはトニックかドミナント・コードで、その間のコード進行は自由である。またエンディングは、ドミナント・コードまたはサブドミナント・コードを経て、トニック・コード(カデンツ=ケーデンス=終止形)にする。
カデンツ(ケーデンス=終止形)は楽曲の終わりを表わすコード進行で、次のパターンがその代表的な終止形である
1 Key=C(ハ長調)の場合
1)完全終止(起立・礼型)=ドミナント・コード(G7)→トニック・コード(C)
2)アーメン終止=サブドミナント・コード(F)→トニック・コード(C)
(T→)S→Tは、キリスト教の教会音楽でよく利用される終止なので、別名アーメン終止という。
2 Key=Am(イ短調)の場合
1)完全終止(起立・礼型)=ドミナント・コード(E7)→トニック・コード(Am)
2)アーメン終止=サブドミナント・コード(Dm)→トニック・コード(Am)
(原礼彦『やさしい編曲のしかた』成美堂出版、1997年、43頁~46頁、林知行『標準ポピュラー・コード理論』シンコー・ミュージック、1995年、48頁)
【林知行『標準ポピュラー・コード理論』(シンコー・ミュージック)はこちらから】
林知行『標準 ポピュラーコード理論 改訂新版』
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参考文献はアマゾンから
《参考文献》
富澤一誠『フォークが聴きたいー青春のマイ・ソング210曲』徳間文庫、1999年
富澤一誠『松山千春―さすらいの青春』立風書房、1979年
富澤一誠『さだまさし―終わりなき夢』立風書房、1980年
富澤一誠『あの素晴らしい曲をもう一度――フォークからポップスまで』新潮新書、2010年
原礼彦編曲『ピアノ伴奏付 フォーク名曲集』成美堂出版、1993年
松山祐士『学園愛唱歌選集<ピアノ伴奏編>』ドレミ楽譜出版社、1994年
原礼彦『やさしいピアノ&キーボードコード進行パターン』成美堂出版、1992年
原礼彦『やさしい楽譜の読み方』成美堂出版、1991年
原礼彦『やさしいピアノの弾き方』成美堂出版、1992年
原礼彦『やさしいロック・キーボードのひき方』成美堂出版、1999年
原礼彦『初心者のためのやさしいピアノ伴奏の付け方』成美堂出版、1992年
原礼彦『やさしい編曲のしかた』成美堂出版、1997年
斉藤芳江『見開式クイックマスター ピアノのコード学』ヤマハミュージックメディア、2001年[2002年版]
斉藤芳江『よくわかるロックキーボード・コード入門』シンコー・ミュージック、1988年[1990年版]
平野章子『ひと目でわかるピアノ・コードの押え方』ドレミ楽譜出版社、2002年
ハート音楽院『攻略ガイド フォークギター入門』大泉書店、1996年
林哲司『ポップス作曲法―ベッシック・アプローチ編』リットーミュージック、1993年[1997年版]
林哲司『ポップス作曲法―ケース・スタディ編・林哲司の実践的アプローチ』リットーミュージック、1994年
橋本晃一『おとなのためのピアノ教本併用スリー・コード・ピアノ・レッスン』ドレミ楽譜出版社、2012年
五十嵐洋『ポップスのピアノ伴奏ができるようになる本』リットーミュージック、2012年
石沢功治『すぐ歌えるコード進行ネタ帳~鍵盤で作れる5万曲!』リットーミュージック、2009年[2010年版]
矢萩秀明『音で確認!CD付き コード進行パターンブック ピアノ/キーボード[応用編]』
ヤマハミュージックメディア、2006年
福田裕彦『ピアノ・コードワーク入門』音楽之友社、1995年
藤井英一『コード進行がわかる本』ヤマハミュージックメディア、1992年[1998年版]
藤田進『アコースティック・ギター完全攻略マニュアル』自由現代社、1998年
藤田進『はじめの一歩 作詞・作曲入門ゼミ』自由現代社、1994年
桑野洋子『CDで学ぶ楽譜の読み方』ナツメ社、1995年
水谷友香・キッシー岸田『CDで覚えるやさしい楽譜の読み方』成美堂出版、2005年
秋谷えりこ『ポピュラー音楽に役立つ知識』シンコー・ミュージック、1999年
藤田哲也『ギター弾き語り ポピュラー・ヒット・コレクション』シンコー・ミュージック、2000年
林知行『標準ポピュラー・コード理論』シンコー・ミュージック、1995年
北川祐『コード進行ハンドブック』リットーミュージック、1988年[1992年版]
セブンスリー・プロダクション『メガヒット黄金の法則』リットーミュージック、1998年
江部賢一『やさしいギター・コード進行パターン』成美堂出版、1996年
鮎川久雄『40歳からのピアノ入門――3ヶ月でマスターした『コード奏法』講座』講談社、2005年
an弾手(鮎川久雄)『お父さんのためのピアノ教室―体験的コード奏法超入門』ドレミ楽譜出版社、2004年[2007年版]
角聖子『「ピアノ力」をつける!』音楽之友社、2005年[2007年版]
田家秀樹『ラヴ・ソングス――ユーミンとみゆきの愛のかたち』角川文庫、1988年
田家秀樹『読むJ-P0P 1945-1999私的全史 あの時を忘れない』徳間書店、1999年
前田祥文・平原康司『日本のフォーク&ロック・ヒストリー② ニューミュージックの時代』シンコー・ミュージック、1993年
北山修『戦争を知らない子供たち』ブロンズ社、1971年
きたやまおさむ『ビートルズ』講談社現代新書、1987年[1994年版]
松本隆『風のくわるてつと』(新潮文庫、1972年[1985年版]
中島みゆき『愛が好きです』新潮文庫、1982年[1988年版]
松任谷由実『ルージュの伝言』角川文庫、1984年[1989年版]
財津和夫『ぼくの法螺』集英社、1981年
小椋佳『小椋佳 いたずらに』新潮文庫、1981年
山本コウタロー『ぼくの音楽人間カタログ』新潮文庫、1984年
加山雄三『ぼくの青春讃歌―この夢をこころに』講談社文庫、1986年
美空ひばり『川の流れのように』集英社文庫、2001年
谷村新司『夢創力。人間「谷村新司」から何を学ぶのか』創英社/三省堂書店、2010年
見崎鉄『さだまさしのために』KKベストセラーズ、1998年
藍川由美『これでいいのか、にっぽんのうた』文春新書、1998年[1999年版]
藍川由美『「演歌」のススメ』文春新書、2002年
なかにし礼『翔べ!わが想いよ』新潮文庫、2003年
なかにし礼『NHK知る楽 探求この世界 2009年8-9月 不滅の歌謡曲』日本放送出版協会、2009年
なかにし礼『歌謡曲から「昭和」を読む』NHK出版新書、2011年
グループfuture『ZARD&坂井泉水プロファイリング』コアラブックス、2000年
茂木幹弘『ポップス・ヒットパレード―私のおしゃべり放送史―』旺文社文庫、1985年
新谷のり子『反戦歌――唄うこと、そして生きること』ぴいぷる社、1993年
小貫信昭『YES-NO小田和正ヒストリー』角川文庫、2000年
竹田青嗣『陽水の快楽―井上陽水論』河出書房新社、1990年
歌代幸子『天に響く歌―歌姫・本田美奈子の人生』ワニブックス、2007年
小倉千加子『増補版 松田聖子論』朝日文庫、2012年
永井良和『南沙織がいたころ』朝日新書、2011年
あの日の歌製作委員会(重松清)編『あの日の歌』ソル・メディア、2014年
山住正己『子どもの歌を語る―唱歌と童謡』岩波新書、1994年
伊藤悟『ヒット曲が世界を変える』雲母書房、2006年
原礼彦『ピアノ伴奏付フォーク名曲集』成美堂出版、1993年
『ピアノ伴奏フォークソング100曲集』ケイ・エム・ピー、1999年
松山祐士『メロディー・ジョイフル ニューミュージック・ベスト200』ドレミ楽譜出版社、1993年
松山祐士『学園愛唱歌選集―ピアノ伴奏編』ドレミ楽譜出版社、1994年
松山祐士『魅惑のラヴ・バラード・ベスト100』ドレミ楽譜出版社、1994年
松山祐士『J-POP名曲全集』ドレミ楽譜出版社、1997年
松山祐士『エンジョイ・ピアノ ハ調で楽しむポップス』ドレミ楽譜出版社、1998年
松山祐士『結婚式で歌える・弾ける歌謡曲集』ドレミ楽譜出版社、2006年
松山祐士『メロディ・ジョイフル 今!話題の70年代ヒット・ベスト100』ドレミ楽譜出版社、1994年
堀野羽津子『フォーク&フォーク』成美堂出版、1987年
堀野羽津子『思い出のメロディー 昭和編』成美堂出版、1997年
堀野羽津子『特選演歌―心に残る全150曲』成美堂出版、2001年
富橋将行ほか『ベスト・フォーク300』自由現代社、1998年
ドレミ楽譜出版社編集部『心にのこるフォークソング』ドレミ楽譜出版社、1995年
デプロ編『やさしいピアノ・ソロ おとなの音楽 歌謡曲』デプロ、2009年
藤原豊『やさしく弾けるピアノ ラブバラードからスタンダードナンバーまで』ナツメ社
いとうたつこ編『大人のためのピアノソロ すぐ弾けるニューミュージック Vol.2』東京音楽書院、1996年
Music School Wood『初心者から学べるマイ・ピアノ・レッスン弾き語りコース』ドレミ楽譜出版社、1990年
西東社出版部編『日本のこころの歌』西東社、2004年
デプロ『ハ調で弾くピアノ 心を癒すピアノ全集/ニューミュージック』デプロ、2003年
浅倉千紗『ニューミュージック・ピアノ弾き語り入門[女性編]』ドレミ楽譜出版社、2008年
青山しおり『ピアノ弾き語りニューミュージック/クリスマス ナイト』ドレミ楽譜出版社、1991年
片岡博久『やさしく弾ける小田和正 ピアノ・ソロ・アルバム』ケイ・ピー・エム、1998年
片岡博久『すぐ弾けるピアノ・レッスン』成美堂出版、2000年
片岡博久『やさしく弾ける卒業 ピアノ・ソロ・アルバム』ケイ・ピー・エム、2008年
山口秀法『ピアノソロ 不滅の名曲・財津和夫』東京音楽書院、1995年
西東社編集部『カラオケ・ベストヒット』西東社、2001年
林知行『ピアノ・ビギナーのための映画音楽:上』ドレミ楽譜出版社、2000年
菊地雅洋『CDで覚えるやさしいピアノの弾き方』成美堂出版、2002年
松尾英樹『これで完璧! ピアノの基礎』リットーミュージック、2001年
宮野わかな『CDで学ぶコードで弾けるピアノ』ナツメ社、1998年
織田英子『たのしい作曲のしかた』成美堂出版、1999年
金子卓郎『コード進行による作曲入門ゼミ』自由現代社、1995年
藤井英一『コードがわかる本』ヤマハミュージックメディア、1992年[1998年版]
吉開狹手臣『実力UP はじめてのピアノ弾き語り』中央アート出版社、1997年
青山忠英『よくわかるレコード・コピー入門』シンコー・ミュージック、1987年
丹羽あさ子『ピアノ弾き語りのコツ早わかり』ドレミ楽譜出版社、1994年
ドレミ楽譜編集部編『ピアノ・コード早わかり』ドレミ楽譜出版社、1991年
五十嵐洋『7日間でマスターするフォークギター』ナツメ社、1997年
石川鷹彦『石川鷹彦のもう一度はじめよう! フォークギター再入門』(日本放送出版協会、2009年
中村とうよう『ポピュラー音楽の世紀』岩波新書、1999年
みつとみ俊郎『メロディ日本人論―演歌からクラシックまで』新潮選書、1987年
みつとみ俊郎『音楽ジャンルって何だろう』新潮選書、1999年
別冊宝島編集部編『「Jポップ」批評1』宝島社文庫、1999年
別冊宝島編集部編『「Jポップ」批評2』宝島社文庫、1999年
稲増龍夫&ポップス中毒の会『洋楽 in ジャパン―日本で流行したロック&ポップス ‘68-’86』学陽書房、1994年
稲増龍夫&ポップス中毒の会『歌謡曲完全攻略ガイド‘68-’85』学陽書房、1996年
佐藤良明『J-POP進化論 「ヨサホイ節」から「Automatic」へ』平凡社新書、1999年
倉田喜弘『「はやり歌」の考古学 開国から戦後復興まで』文春新書、2001年
恩蔵茂『ニッポンPOPの黄金時代』ベスト新書、2001年
小原孝『ねこふんじゃったの国から』メディアパル、2002年
烏賀陽弘道『Jポップの心象風景』文芸春秋、2005年
烏賀陽弘道『Jポップとは何か―巨大化する音楽産業』岩波新書、2005年[2012年版]
北中正和『ロック』講談社現代新書、1985年[1990年版]
宮本啓『ミュージカルへの招待』丸善ライブラリー、1995年
阿久悠『書き下ろし歌謡曲』岩波新書、1997年
阿久悠『愛すべき名歌たち―私的歌謡曲史―』岩波新書、1999年
岩谷時子『愛と哀しみのルフラン』講談社文庫、1986年
アンジェラ・アキ『アンジェラ・アキのSONGBOOK in English』NHK出版、2012年
羽田健太郎『NHK趣味百科 英語ポップス歌唱法Ⅱ』日本放送出版会、1995年
「音楽を読む本」編集委員会編『ピアノを読む本 もっと知りたいピアノのはなし』ヤマハミュージックメディア、1994年[2003年版]
ザ・ビートルズ・クラブ『ジョン・レノン全仕事②イマジン~時を超えて』小学館文庫、2010年
ジェームズ・クネン(青木日出夫訳)『いちご白書―ある大学革命家のノート』角川文庫、1971年[1984年版]
庄司薫『赤頭巾ちゃん気をつけて』中公文庫、1973年[1985年版]
桜井哲夫『思想としての60年代』ちくま学芸文庫、1993年
高神覚昇『般若心経講義』角川文庫、1952年[2001年版]
森豊『シルクロードと日本文化』白水社、1982年
有田芳生『私の家は山の向こう テレサ・テン十年目の真実』文春文庫、2007年
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