≪囲碁の手筋~依田紀基氏の場合≫
(2025年2月16日投稿)
今回も引き続き、囲碁の手筋について、次の著作を参考にして考えてみたい。
〇依田紀基『囲碁 サバキの最強手筋 初段・二段・三段』成美堂出版、2004年
副題には、「“捨て石”で勝つ! 実戦サバキのテクニック93題」とある。
【依田紀基氏のプロフィール】
・昭和41年(1966)、北海道岩見沢市生まれ。
・安藤武夫七段に入門。
・昭和55年入段。平成5年九段。
・昭和59年18歳で名人戦リーグ入り。リーグ入り最年少記録。
・平成7年 第33期「十段」獲得。
・平成8年 第1回三星火災杯優勝。
・平成10年 第45期NHK杯戦優勝。第47期まで三連覇。
・平成12年 第25期名人戦で趙治勲を破り「名人」を獲得。
【依田紀基『サバキの最強手筋』(成美堂出版)はこちらから】
〇問題の種類 解答の手筋など
第1章
1 ノータイム アテが形の急所
2 瞬時 整形の基本手筋
3 完全封鎖 ツケコシの筋
4 例の筋 捨て石の筋
5 無理筋 押さえる筋
6 好手順 二子にして捨てる筋 常用手筋 ハサミツケも有力
7 決め筋 捨て石の筋
8 腕しだい 利き筋をにらむ
9 サバキの手筋 二子にして捨てる筋
10 魔法のランプ 切り一本の筋
11 形の明暗 突き抜く筋
12 名探偵 カケる筋 アタリアタリは俗筋
13 急所切り 常用の手筋
14 方針 三子にして捨てる筋
15 欠陥 ハネ出す筋
16 利き筋 利き筋をにらむ サガリが本手
17 本手はずれ 利き筋をにらむ
18 封鎖の巧拙 ツケコシの筋
19 手筋一発 ツケる筋
20 ひと目 鼻ヅケの筋
21 先手をとる ツケコシの筋
22 切り対策 アテる筋
23 鋭い次の三手 ツケ切りの筋
24 白の野望 ワリコミの筋
25 基本手筋 シボリの筋 最強の筋
26 急所攻め サガリの筋 ツギは利かされ コスミは筋ちがい
27 ケイマ対策 ツケコシの筋
28 弱点 押さえる筋
29 食うか食われるか アテカケの筋 ダメヅマリ地獄
30 ノゾキ対策 軽くサバく筋 ダメヅマリ "オイオトシ
ツケコシが鋭い"
31 高速 石の調子で出る筋 車の後押しの俗筋 重いサバキ
32 整形の基本 ブツカリの筋
33 状況しだい アテ返す筋
34 力自慢 ツケる筋
35 アテの方向 石の調子で出る筋
36 目一杯 ツケの筋
37 黒三子がカナメ石 カケの筋
38 形感覚 アテる筋
39 戦場の風景 ツケコシの筋
40 攻めとサバキ ツケノビの筋 コスミツケは筋ちがい
第2章
1 断言できる人 三子の真ん中が急所 捨て石の筋 攻防の急所攻め
2 アテ対策 アテ返す筋
3 手筋一閃 ハネコミの筋
4 手筋の発見 ツケコシの筋
5 軽快 飛びの筋 ノビは重い
6 生死の明暗 ツケコシの筋
7 力自慢の戦法 ツケの筋 押さえは俗筋 利き筋をにらむ
8 あの筋だな 鋭い攻め筋
9 急所切り 捨て石の筋
10 定石後の攻防Ⅰ 突っ張りの筋 ハネ切りの筋
11 定石後の攻防Ⅱ 下ツケの筋 石塔シボリの筋 エグリがきびしい
12 定石はずれ カケの筋
13 工夫 ツケコシの筋
14 軽妙 捨て石の筋
15 戦いの形感覚 アテ返す形
16 継承 コウふくみのサバキ
17 致命的な弱点 整形の筋 白地を荒らす ハネは筋ちがい
18 完全封鎖 ツケコシの筋 カケは追及不足
19 切り対策 ツケの筋
20 好手順あり ノゾキから切る筋
21 腕しだい 飛びツケの筋
22 泣き言 アテの筋
23 かなりの腕前 ツケの筋
24 封鎖の最強策 飛ぶ筋
25 常用の手筋 切り込む筋 サバキ形 押しは俗筋
26 ノータイム アテ返しの筋
27 基本の形 はずす形
28 決め筋 形の急所攻め 捨て石の筋 ハネはいま一歩
29 捨て石 急所攻めの筋
30 最強の追及 戦いの手筋
31 急所攻めの後 ハネ出しの筋
32 勝負の分かれ目 ワリコミの筋
33 最強の応戦 ハネコミの筋
34 鋭い攻めの筋 ツケコシの筋
35 最強の決め筋 急所攻めの筋 捨て石の筋 サガリは次善
第3章
1 最強手の後 ツケ一発の筋
2 モタレ攻め モタレ攻めの筋
3 粉砕 腹ヅケの筋
4 先手をとりたい 切り込む筋
5 隅に弱点あり ハネ切りの筋
6 無理筋 切りアテの筋
7 シチョウで取る 切り押しの筋
8 二段バネ対策 ハネ返し筋
9 エグリの筋 ハネの筋 切りは無理筋
10 手筋救急隊 切り込みの筋
11 大切な石 シボリの筋
12 戦上手 黒石を捨てる
13 俗っぽい切断 見合いの筋 カナメ石を取る アテは俗筋
14 鋭いエグリ筋 急所攻めの筋
15 天下六段 ツケコシの筋 切る筋
16 最強のシノギ 鋭い置きの筋
17 プロ級の筋 ツケ切りの筋 白はアテツギが最善 引きはいま一歩
18 追及策 急所攻めの筋 切りは俗っぽい
さて、今回の執筆項目は次のようになる。
●サバキ名人になろう
・初段どまりの人と五段になれる人の分かれ道は、「石を取る、捨てる」を正しく判断できるかどうか。
・さらにふさわしい最善の手筋が打てるか打てないかにある。
・取れる石を確実に取ることができるようになれば、有段者。
捨てるべき石を的確に捨て、最善のサバキが打てるようになれば、高段者。
・碁では石を取るか捨てるか、石を逃げるか捨てるかの判断が、往々にして、ポイントとなる。
・サバキの代表的な手筋は捨て石である。
その目的は、最善の形を得ること。
(石を捨てるべきときに助け出すと、シノぐことはできても他の方面に悪い影響が出たり、相手に大きな確定地や鉄壁を作られたりする)
☆本書は、実戦にしばしば出現するサバキの手筋をピックアップして、問題集にしている。
●サバキに強い人は本物の強者
・サバキに強い人は本物の強者
⇒その基本は捨て石にある。
その目的は、①外勢を固める
②先手をとる
③利き筋を作る
その他、さまざまである。
(依田紀基『サバキの最強手筋』成美堂出版、2004年、4頁~5頁)
第2型・黒番
星のツケノビ基本定石である。
・定石後、白1の切りが決め筋の一つ。ここで、黒aとb、二通りの受け方がある。
【1図】
・まず、黒1には白2が二子にして捨てる基本手筋。
・二子にして捨てることによって、白4と6が先手になる。
・黒9までほぼ必然手順。
・白10の飛びか白手抜きか、全局の状況によって変わる。
・黒1、3では白に目一杯サバかれてしまう。
【2図】
・そこで、ふつうは黒1の方から受ける。
・取れる三角印の白を取らない黒1、3が白のサバキを封じる最善手なのである。
(依田紀基『サバキの最強手筋』成美堂出版、2004年、6頁)
第3型・黒番
〇サバキには、さまざまなテクニックがあるが、その基本は捨て石で、最善の形を作ることである。
・サバキの手筋は、本書の問題に挑戦していけば、ほとんどマスターできるという。
後は実戦に臨んで、その手筋を応用するように心掛けることが大切である。
・白1と迫られたとき、手筋を知らない人は黒aと受けてしまいそうである。
【1図】
・黒1は白2、4となる。
【2図】
・ここは黒1の切り込みがサバキの手筋である。
・白2なら黒3が先手であるし、白2で4なら黒aが先手となる。
(依田紀基『サバキの最強手筋』成美堂出版、2004年、7頁)
第1章 第30問(黒先)ノゾキ対策
【ポイント】
・白1とノゾいてきた。いやらしいノゾキである。
黒の応手はAかBか。
後の変化を考えて、次の一手を決定すること。
【正解図】(ツギは利かされ)
・白のノゾキに黒aのツギは利かされで、重い形になる。
・そこで、黒1と押して軽くサバく。
・白2のとき、黒3の早逃げが一例。
【変化図1】(妥当)
・白2なら黒3とツギ。
・周囲の配石によって打ち方が変わるが、ふつうは、白4。
・黒5、7を利かして、9(あるいは黒a)あたりに守る。
【変化図2】(押さえは無理)ダメヅマリ
・変化図1白6の変化である。
・本図白1の押さえは無理で、黒2から4、6が先手となる。
・白はダメヅマリに備えて、白7が省けない。
【変化図3】(オイオトシ)
・白1のコスミなどは、黒2の切りが白のダメヅマリをとがめる手筋となる。
・白3、5に黒6のホウリコミから、オイオトシの筋が見え見えである。
【失敗図】(切断)
・黒1のツギはいかにも重く、利かされ。
・白2のツケコシがきびしい切断の手筋となり、黒の苦戦はあきらか。
【参考図】(ツケる筋)
・ほかに黒1とツケるのも、サバキの手筋。
・白2、4に黒5のアテが先手で打てる。
※手順中、白2で3なら黒2、白2でaなら黒3。
(依田紀基『サバキの最強手筋』成美堂出版、2004年、83頁~86頁)
第2章
〇サバキの基本テクニックは捨て石。
・その目的は相手の石を封鎖したり、石の整形やシノギなどさまざま。
・捨て石の手筋は状況に応じて、使用法が変化する。
・また、サバキの手筋の使い分けができるようになれば、相当な腕前。
(本章の問題に挑戦していけば、大方のテクニックはマスターできる)
(依田紀基『サバキの最強手筋』成美堂出版、2004年、112頁)
第2章 第14問(黒先)
14 軽妙 切り込みの筋
【ポイント】
・黒はAの押さえ、Bのツギ、Cのアテコミの三通りが考えられる。
軽妙なサバキが正着である。
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【正解図】(軽妙なサバキ)
・黒1の押さえが正解。
・白2と切るほかないから、黒3、5と軽快にワタる。
・黒7を決めて、9かaの早逃げ。
・のちに黒bのねらいが残る。
【失敗図】(重い)
・黒1のツギは重い。
・白2に黒3なら、白4の筋がある。
・また、黒3でa、白b、黒cは白3。
※ほかに、黒1でdは、白eのツケ一発で、取られて失敗。
(依田紀基『サバキの最強手筋』成美堂出版、2004年、153頁~154頁)
第2章第25問 常用の手筋 1分で二段、3分で1級
【ポイント】
・こうした形はサバキの常用手筋が決まっている。
次の一手は、黒A、B、Cのどれだろうか。
〇解答 切り込む筋
【正解図】(様子見の手筋)
・こうした形は、まず黒1と切り込んで、様子を見る筋。
※ふつうは白aと下からアテ。白bと受けると黒の注文にはまるから。
【正解図・続】(黒の注文)
・白2が黒の注文。
・黒3と二子にして捨てるのが、サバキの常用手筋。
・白4に黒5を決め、さらに黒7のツギを先手で打ち、黒好調の戦い。
【変化図】(白2が最善)
・黒1の切り込みに対して、ほとんどの場合は白2が最善の受けとなり、黒3のノビに白4まで、必然手順。
※白aからの出切りを残すため。
【変化図・続】(ほぼ必然の手順)
・つづいて、黒1のタケフツギが省けない。
・白2かaは周囲の配石しだい。
・白2なら黒3を決めて、5、7まで、ほぼ必然手順。
【失敗図1】(典型的な俗筋)
・皆さんの実戦を見ていると、しばしば黒1の押しを決めている。
・黒1は白2と受けられ、黒aの切り筋をなくしてしまう味消しで、典型的な俗筋。
【失敗図2】(無策)
・白1からの出切りがある。そこで、黒1とツグというのでは素朴すぎ、あまりに無策。
・白2のナラビが石の形となり、黒不満の進行。
(依田紀基『サバキの最強手筋』成美堂出版、2004年、181頁~184頁)
第3章 腕だめしの手筋
・序盤から中盤までの戦いは、手筋力が大きなポイントになる。
また、基本手筋が身についてくれば、石がこみ入った実戦に臨んで応用できるようになる。
・中盤戦はサバキの手筋だけでなく、総合的な手筋力や死活の力量が問われる。
本章の腕試し手筋は、石を取る、石をサバく、相手の陣地をエグるなど、さまざまな領域から出題したという。
(依田紀基『サバキの最強手筋』成美堂出版、2004年、210頁)
第3章第2問モタレ攻め
【ポイント】
・黒2の急所叩きに、白3の愚形で逃げるほかないところ。
次の一手はモタレ攻めである。
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【正解図】(常用のツケ)
・黒1でaは白2と出られて、裂かれ形。
・また、黒1でbは、白1とノビられ、いずれも失敗。
・ここは、黒1がモタレ攻めの筋で、白2なら黒3。
【変化図】(黒満足)
・また、白2のハネから4のマゲなら、黒5と石の調子で出る。
・白6に黒7と叩き、黒に何ら不満がない戦い。
・次に白aなら、黒b。
(依田紀基『サバキの最強手筋』成美堂出版、2004年、213頁~214頁)
第3章第10問手筋救急隊 切り込みの筋
【ポイント】
・次の一手が勝負の決め手。
手筋救急隊の出動によって、中の黒数子を救出し、白石を取ることができる。

【正解図】(ダメヅマリ)
・ここは白aとbの切断が見合いになっているように見えるが、黒1の切り込みが白をダメヅマリに導く手筋。
・次に白bなら黒cと白五子を取る。
【変化図】(切断できない)
・また、白2なら黒3と打つ。
・白はダメヅマリのため、白aと切断することができない。
※黒1は囲碁天狗の鼻がさらに高くなる手筋一発である。
(依田紀基『サバキの最強手筋』成美堂出版、2004年、231頁~232頁)
第3章 第17問(黒先)プロ級の筋 3分で四段、5分で二段
【ポイント】
・様々な利き筋をにらみながら、黒1とツケたのはプロ級のサバキ筋。
・白2のハネに対し、黒AかBかCか。
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〇ツケ切りの筋
【正解図】(サバキの筋)
・黒aやbの利き筋を見ながら、黒▲のツケから黒1の切りが鋭いサバキの手筋。
・白2、4のとき、黒aやbの利き筋を利用してサバく。
【正解図・続】(黒大成功)
・つづいて、黒1とアテて3と石の調子で出るのが好手筋。
・そして黒5と押さえ。
※黒5でa、白b、黒5の簡明な打ち方でも大成功。
【変化図1】(白地が大きい)
・黒1のカカエは次善の打ち方。
・白2の押しに黒3と抜くほかないが、白4と守られて、右下隅の白地が大きくなるから。
【変化図2】(最善の分かれ)
・正解図・続黒5まで黒が目一杯にサバいた形。
・そこで、黒1の切りには白2、4のアテツギが最善。
・黒5とカカエて、次に黒aがねらい筋。
【失敗図1】(次善のサバキ)
・黒1の引きはサバキの一策であるが、白2と守られて、いま一歩。
・黒3の一手であるが、白4、6の筋で先手を取られる。
※ほかに白2で4の変化もある。
【失敗図2】(俗筋)
・黒1のアテは様々な利き筋をなくす俗筋。
・白2、4の後、黒5と切っても証文の出し遅れで、こんどは白6、8から10とカカエられて失敗。
(依田紀基『サバキの最強手筋』成美堂出版、2004年、249頁~252頁)
次の著作で、整形の際の「ツケ切りの筋」について、補足しておきたい。
〇山田規三生『アタリ・ノゾキを正しく打つ! 利かしの基本戦略』マイナビ出版、2016年
第1章 利かしとは何か?
・「利かし」とは、相手がほぼ必ず受けざるを得ない手をいう。
・利かしを打つことで得られる効果は、次の4つが挙げられる。
①相手の石を重くする
②見合いを作る
③先手を取る
④自分の形を整える
(山田規三生『利かしの基本戦略』マイナビ出版、2016年、8頁)
第7章 形を整える
・利かしのなかでも、かなりの割合を占めるのが、形を整えるときのもの。
・サバキの場面や相手を封鎖するときに多く現れるが、ほとんどの場合は捨て石を活用する。
(これまで、あまり捨て石の発想を持っていなかった人は、この機会に身に付けてほしい)
(山田規三生『利かしの基本戦略』マイナビ出版、2016年、192頁)
第7章 問題13(黒番)
・右上の黒2子の守りが急がれる。単に守るのではなく、右辺の白を凝り形にしたいところ。
【第7章 問題13】
≪棋譜≫第7章 問題13、226頁
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【1図】(黒不満)
・黒1と単に守るのは堅い手。
・しかし白2とトバれ、白模様が広がるので黒に少し不満が残る。
【2図】(白に響かない)
・黒1は、白に響かない。
・白2のスベリで先手を取られ、白4と大場へ回られる。
※右辺の白は厚く、黒aは狙えない。
【3図】(正解・ツケ切り)
・黒1、3のツケ切りが、相手を凝り形にするときによく使われる手段。
・続いて…
【4図】(白の変化)
・白1のアテから打つのが普通。
・黒2のとき、白3が大切な一手で、黒4から6まで進行したあと…
【5図】(黒十分)
・白1の切りから黒6までは一本道。
・白7まで、右辺の白は凝り形なうえに、黒a、白b、黒cの利きが残る。
・黒8に回り、黒十分。
【6図】(白最悪)
・4図の白3で1とツグのは最悪。
・黒2のとき白3が必要で、黒4と2子にしてシメツケられては、白大失敗。
(山田規三生『利かしの基本戦略』マイナビ出版、2016年、226頁~229頁)
(2025年2月16日投稿)
【はじめに】
今回も引き続き、囲碁の手筋について、次の著作を参考にして考えてみたい。
〇依田紀基『囲碁 サバキの最強手筋 初段・二段・三段』成美堂出版、2004年
副題には、「“捨て石”で勝つ! 実戦サバキのテクニック93題」とある。
【依田紀基氏のプロフィール】
・昭和41年(1966)、北海道岩見沢市生まれ。
・安藤武夫七段に入門。
・昭和55年入段。平成5年九段。
・昭和59年18歳で名人戦リーグ入り。リーグ入り最年少記録。
・平成7年 第33期「十段」獲得。
・平成8年 第1回三星火災杯優勝。
・平成10年 第45期NHK杯戦優勝。第47期まで三連覇。
・平成12年 第25期名人戦で趙治勲を破り「名人」を獲得。
【依田紀基『サバキの最強手筋』(成美堂出版)はこちらから】
依田紀基『囲碁 サバキの最強手筋 初段・二段・三段』成美堂出版、2004年
【目次】
サバキ名人になろう
第1章 サバキの基本手筋40問
第2章 サバキの最強手筋35問
第3章 腕だめしの手筋18問
〇問題の種類 解答の手筋など
第1章
1 ノータイム アテが形の急所
2 瞬時 整形の基本手筋
3 完全封鎖 ツケコシの筋
4 例の筋 捨て石の筋
5 無理筋 押さえる筋
6 好手順 二子にして捨てる筋 常用手筋 ハサミツケも有力
7 決め筋 捨て石の筋
8 腕しだい 利き筋をにらむ
9 サバキの手筋 二子にして捨てる筋
10 魔法のランプ 切り一本の筋
11 形の明暗 突き抜く筋
12 名探偵 カケる筋 アタリアタリは俗筋
13 急所切り 常用の手筋
14 方針 三子にして捨てる筋
15 欠陥 ハネ出す筋
16 利き筋 利き筋をにらむ サガリが本手
17 本手はずれ 利き筋をにらむ
18 封鎖の巧拙 ツケコシの筋
19 手筋一発 ツケる筋
20 ひと目 鼻ヅケの筋
21 先手をとる ツケコシの筋
22 切り対策 アテる筋
23 鋭い次の三手 ツケ切りの筋
24 白の野望 ワリコミの筋
25 基本手筋 シボリの筋 最強の筋
26 急所攻め サガリの筋 ツギは利かされ コスミは筋ちがい
27 ケイマ対策 ツケコシの筋
28 弱点 押さえる筋
29 食うか食われるか アテカケの筋 ダメヅマリ地獄
30 ノゾキ対策 軽くサバく筋 ダメヅマリ "オイオトシ
ツケコシが鋭い"
31 高速 石の調子で出る筋 車の後押しの俗筋 重いサバキ
32 整形の基本 ブツカリの筋
33 状況しだい アテ返す筋
34 力自慢 ツケる筋
35 アテの方向 石の調子で出る筋
36 目一杯 ツケの筋
37 黒三子がカナメ石 カケの筋
38 形感覚 アテる筋
39 戦場の風景 ツケコシの筋
40 攻めとサバキ ツケノビの筋 コスミツケは筋ちがい
第2章
1 断言できる人 三子の真ん中が急所 捨て石の筋 攻防の急所攻め
2 アテ対策 アテ返す筋
3 手筋一閃 ハネコミの筋
4 手筋の発見 ツケコシの筋
5 軽快 飛びの筋 ノビは重い
6 生死の明暗 ツケコシの筋
7 力自慢の戦法 ツケの筋 押さえは俗筋 利き筋をにらむ
8 あの筋だな 鋭い攻め筋
9 急所切り 捨て石の筋
10 定石後の攻防Ⅰ 突っ張りの筋 ハネ切りの筋
11 定石後の攻防Ⅱ 下ツケの筋 石塔シボリの筋 エグリがきびしい
12 定石はずれ カケの筋
13 工夫 ツケコシの筋
14 軽妙 捨て石の筋
15 戦いの形感覚 アテ返す形
16 継承 コウふくみのサバキ
17 致命的な弱点 整形の筋 白地を荒らす ハネは筋ちがい
18 完全封鎖 ツケコシの筋 カケは追及不足
19 切り対策 ツケの筋
20 好手順あり ノゾキから切る筋
21 腕しだい 飛びツケの筋
22 泣き言 アテの筋
23 かなりの腕前 ツケの筋
24 封鎖の最強策 飛ぶ筋
25 常用の手筋 切り込む筋 サバキ形 押しは俗筋
26 ノータイム アテ返しの筋
27 基本の形 はずす形
28 決め筋 形の急所攻め 捨て石の筋 ハネはいま一歩
29 捨て石 急所攻めの筋
30 最強の追及 戦いの手筋
31 急所攻めの後 ハネ出しの筋
32 勝負の分かれ目 ワリコミの筋
33 最強の応戦 ハネコミの筋
34 鋭い攻めの筋 ツケコシの筋
35 最強の決め筋 急所攻めの筋 捨て石の筋 サガリは次善
第3章
1 最強手の後 ツケ一発の筋
2 モタレ攻め モタレ攻めの筋
3 粉砕 腹ヅケの筋
4 先手をとりたい 切り込む筋
5 隅に弱点あり ハネ切りの筋
6 無理筋 切りアテの筋
7 シチョウで取る 切り押しの筋
8 二段バネ対策 ハネ返し筋
9 エグリの筋 ハネの筋 切りは無理筋
10 手筋救急隊 切り込みの筋
11 大切な石 シボリの筋
12 戦上手 黒石を捨てる
13 俗っぽい切断 見合いの筋 カナメ石を取る アテは俗筋
14 鋭いエグリ筋 急所攻めの筋
15 天下六段 ツケコシの筋 切る筋
16 最強のシノギ 鋭い置きの筋
17 プロ級の筋 ツケ切りの筋 白はアテツギが最善 引きはいま一歩
18 追及策 急所攻めの筋 切りは俗っぽい
さて、今回の執筆項目は次のようになる。
・氏のプロフィール
・はじめに ●サバキ名人になろう
・第1章第30問 ノゾキ対策
・第2章 サバキの最強手筋
・第2章第14問 軽妙
・第2章第25問 常用の手筋
・第3章 腕だめしの手筋
・第3章第2問 モタレ攻め
・第3章第10問 手筋救急隊
・第3章第17問 プロ級の筋
・【補足】整形のツケ切りの筋~山田規三生『利かしの基本戦略』より
はじめに
●サバキ名人になろう
・初段どまりの人と五段になれる人の分かれ道は、「石を取る、捨てる」を正しく判断できるかどうか。
・さらにふさわしい最善の手筋が打てるか打てないかにある。
・取れる石を確実に取ることができるようになれば、有段者。
捨てるべき石を的確に捨て、最善のサバキが打てるようになれば、高段者。
・碁では石を取るか捨てるか、石を逃げるか捨てるかの判断が、往々にして、ポイントとなる。
・サバキの代表的な手筋は捨て石である。
その目的は、最善の形を得ること。
(石を捨てるべきときに助け出すと、シノぐことはできても他の方面に悪い影響が出たり、相手に大きな確定地や鉄壁を作られたりする)
☆本書は、実戦にしばしば出現するサバキの手筋をピックアップして、問題集にしている。
●サバキに強い人は本物の強者
・サバキに強い人は本物の強者
⇒その基本は捨て石にある。
その目的は、①外勢を固める
②先手をとる
③利き筋を作る
その他、さまざまである。
(依田紀基『サバキの最強手筋』成美堂出版、2004年、4頁~5頁)
第2型・黒番
星のツケノビ基本定石である。
・定石後、白1の切りが決め筋の一つ。ここで、黒aとb、二通りの受け方がある。
【1図】
・まず、黒1には白2が二子にして捨てる基本手筋。
・二子にして捨てることによって、白4と6が先手になる。
・黒9までほぼ必然手順。
・白10の飛びか白手抜きか、全局の状況によって変わる。
・黒1、3では白に目一杯サバかれてしまう。
【2図】
・そこで、ふつうは黒1の方から受ける。
・取れる三角印の白を取らない黒1、3が白のサバキを封じる最善手なのである。
(依田紀基『サバキの最強手筋』成美堂出版、2004年、6頁)
第3型・黒番
〇サバキには、さまざまなテクニックがあるが、その基本は捨て石で、最善の形を作ることである。
・サバキの手筋は、本書の問題に挑戦していけば、ほとんどマスターできるという。
後は実戦に臨んで、その手筋を応用するように心掛けることが大切である。
・白1と迫られたとき、手筋を知らない人は黒aと受けてしまいそうである。
【1図】
・黒1は白2、4となる。
【2図】
・ここは黒1の切り込みがサバキの手筋である。
・白2なら黒3が先手であるし、白2で4なら黒aが先手となる。
(依田紀基『サバキの最強手筋』成美堂出版、2004年、7頁)
第1章第30問ノゾキ対策
第1章 第30問(黒先)ノゾキ対策
【ポイント】
・白1とノゾいてきた。いやらしいノゾキである。
黒の応手はAかBか。
後の変化を考えて、次の一手を決定すること。
【正解図】(ツギは利かされ)
・白のノゾキに黒aのツギは利かされで、重い形になる。
・そこで、黒1と押して軽くサバく。
・白2のとき、黒3の早逃げが一例。
【変化図1】(妥当)
・白2なら黒3とツギ。
・周囲の配石によって打ち方が変わるが、ふつうは、白4。
・黒5、7を利かして、9(あるいは黒a)あたりに守る。
【変化図2】(押さえは無理)ダメヅマリ
・変化図1白6の変化である。
・本図白1の押さえは無理で、黒2から4、6が先手となる。
・白はダメヅマリに備えて、白7が省けない。
【変化図3】(オイオトシ)
・白1のコスミなどは、黒2の切りが白のダメヅマリをとがめる手筋となる。
・白3、5に黒6のホウリコミから、オイオトシの筋が見え見えである。
【失敗図】(切断)
・黒1のツギはいかにも重く、利かされ。
・白2のツケコシがきびしい切断の手筋となり、黒の苦戦はあきらか。
【参考図】(ツケる筋)
・ほかに黒1とツケるのも、サバキの手筋。
・白2、4に黒5のアテが先手で打てる。
※手順中、白2で3なら黒2、白2でaなら黒3。
(依田紀基『サバキの最強手筋』成美堂出版、2004年、83頁~86頁)
第2章
第2章
〇サバキの基本テクニックは捨て石。
・その目的は相手の石を封鎖したり、石の整形やシノギなどさまざま。
・捨て石の手筋は状況に応じて、使用法が変化する。
・また、サバキの手筋の使い分けができるようになれば、相当な腕前。
(本章の問題に挑戦していけば、大方のテクニックはマスターできる)
(依田紀基『サバキの最強手筋』成美堂出版、2004年、112頁)
第2章第14問 軽妙
第2章 第14問(黒先)
14 軽妙 切り込みの筋
【ポイント】
・黒はAの押さえ、Bのツギ、Cのアテコミの三通りが考えられる。
軽妙なサバキが正着である。
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【正解図】(軽妙なサバキ)
・黒1の押さえが正解。
・白2と切るほかないから、黒3、5と軽快にワタる。
・黒7を決めて、9かaの早逃げ。
・のちに黒bのねらいが残る。
【失敗図】(重い)
・黒1のツギは重い。
・白2に黒3なら、白4の筋がある。
・また、黒3でa、白b、黒cは白3。
※ほかに、黒1でdは、白eのツケ一発で、取られて失敗。
(依田紀基『サバキの最強手筋』成美堂出版、2004年、153頁~154頁)
第2章第25問 常用の手筋
第2章第25問 常用の手筋 1分で二段、3分で1級
【ポイント】
・こうした形はサバキの常用手筋が決まっている。
次の一手は、黒A、B、Cのどれだろうか。
〇解答 切り込む筋
【正解図】(様子見の手筋)
・こうした形は、まず黒1と切り込んで、様子を見る筋。
※ふつうは白aと下からアテ。白bと受けると黒の注文にはまるから。
【正解図・続】(黒の注文)
・白2が黒の注文。
・黒3と二子にして捨てるのが、サバキの常用手筋。
・白4に黒5を決め、さらに黒7のツギを先手で打ち、黒好調の戦い。
【変化図】(白2が最善)
・黒1の切り込みに対して、ほとんどの場合は白2が最善の受けとなり、黒3のノビに白4まで、必然手順。
※白aからの出切りを残すため。
【変化図・続】(ほぼ必然の手順)
・つづいて、黒1のタケフツギが省けない。
・白2かaは周囲の配石しだい。
・白2なら黒3を決めて、5、7まで、ほぼ必然手順。
【失敗図1】(典型的な俗筋)
・皆さんの実戦を見ていると、しばしば黒1の押しを決めている。
・黒1は白2と受けられ、黒aの切り筋をなくしてしまう味消しで、典型的な俗筋。
【失敗図2】(無策)
・白1からの出切りがある。そこで、黒1とツグというのでは素朴すぎ、あまりに無策。
・白2のナラビが石の形となり、黒不満の進行。
(依田紀基『サバキの最強手筋』成美堂出版、2004年、181頁~184頁)
第3章 腕だめしの手筋
第3章 腕だめしの手筋
・序盤から中盤までの戦いは、手筋力が大きなポイントになる。
また、基本手筋が身についてくれば、石がこみ入った実戦に臨んで応用できるようになる。
・中盤戦はサバキの手筋だけでなく、総合的な手筋力や死活の力量が問われる。
本章の腕試し手筋は、石を取る、石をサバく、相手の陣地をエグるなど、さまざまな領域から出題したという。
(依田紀基『サバキの最強手筋』成美堂出版、2004年、210頁)
第3章第2問モタレ攻め
第3章第2問モタレ攻め
【ポイント】
・黒2の急所叩きに、白3の愚形で逃げるほかないところ。
次の一手はモタレ攻めである。
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【正解図】(常用のツケ)
・黒1でaは白2と出られて、裂かれ形。
・また、黒1でbは、白1とノビられ、いずれも失敗。
・ここは、黒1がモタレ攻めの筋で、白2なら黒3。
【変化図】(黒満足)
・また、白2のハネから4のマゲなら、黒5と石の調子で出る。
・白6に黒7と叩き、黒に何ら不満がない戦い。
・次に白aなら、黒b。
(依田紀基『サバキの最強手筋』成美堂出版、2004年、213頁~214頁)
第3章第10問手筋救急隊
第3章第10問手筋救急隊 切り込みの筋
【ポイント】
・次の一手が勝負の決め手。
手筋救急隊の出動によって、中の黒数子を救出し、白石を取ることができる。
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【正解図】(ダメヅマリ)
・ここは白aとbの切断が見合いになっているように見えるが、黒1の切り込みが白をダメヅマリに導く手筋。
・次に白bなら黒cと白五子を取る。
【変化図】(切断できない)
・また、白2なら黒3と打つ。
・白はダメヅマリのため、白aと切断することができない。
※黒1は囲碁天狗の鼻がさらに高くなる手筋一発である。
(依田紀基『サバキの最強手筋』成美堂出版、2004年、231頁~232頁)
第3章第17問プロ級の筋
第3章 第17問(黒先)プロ級の筋 3分で四段、5分で二段
【ポイント】
・様々な利き筋をにらみながら、黒1とツケたのはプロ級のサバキ筋。
・白2のハネに対し、黒AかBかCか。
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〇ツケ切りの筋
【正解図】(サバキの筋)
・黒aやbの利き筋を見ながら、黒▲のツケから黒1の切りが鋭いサバキの手筋。
・白2、4のとき、黒aやbの利き筋を利用してサバく。
【正解図・続】(黒大成功)
・つづいて、黒1とアテて3と石の調子で出るのが好手筋。
・そして黒5と押さえ。
※黒5でa、白b、黒5の簡明な打ち方でも大成功。
【変化図1】(白地が大きい)
・黒1のカカエは次善の打ち方。
・白2の押しに黒3と抜くほかないが、白4と守られて、右下隅の白地が大きくなるから。
【変化図2】(最善の分かれ)
・正解図・続黒5まで黒が目一杯にサバいた形。
・そこで、黒1の切りには白2、4のアテツギが最善。
・黒5とカカエて、次に黒aがねらい筋。
【失敗図1】(次善のサバキ)
・黒1の引きはサバキの一策であるが、白2と守られて、いま一歩。
・黒3の一手であるが、白4、6の筋で先手を取られる。
※ほかに白2で4の変化もある。
【失敗図2】(俗筋)
・黒1のアテは様々な利き筋をなくす俗筋。
・白2、4の後、黒5と切っても証文の出し遅れで、こんどは白6、8から10とカカエられて失敗。
(依田紀基『サバキの最強手筋』成美堂出版、2004年、249頁~252頁)
【補足】整形のツケ切りの筋~山田規三生『利かしの基本戦略』より
次の著作で、整形の際の「ツケ切りの筋」について、補足しておきたい。
〇山田規三生『アタリ・ノゾキを正しく打つ! 利かしの基本戦略』マイナビ出版、2016年
第1章 利かしとは何か?
・「利かし」とは、相手がほぼ必ず受けざるを得ない手をいう。
・利かしを打つことで得られる効果は、次の4つが挙げられる。
①相手の石を重くする
②見合いを作る
③先手を取る
④自分の形を整える
(山田規三生『利かしの基本戦略』マイナビ出版、2016年、8頁)
第7章 形を整える
・利かしのなかでも、かなりの割合を占めるのが、形を整えるときのもの。
・サバキの場面や相手を封鎖するときに多く現れるが、ほとんどの場合は捨て石を活用する。
(これまで、あまり捨て石の発想を持っていなかった人は、この機会に身に付けてほしい)
(山田規三生『利かしの基本戦略』マイナビ出版、2016年、192頁)
第7章 問題13(黒番)
・右上の黒2子の守りが急がれる。単に守るのではなく、右辺の白を凝り形にしたいところ。
【第7章 問題13】
≪棋譜≫第7章 問題13、226頁
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【1図】(黒不満)
・黒1と単に守るのは堅い手。
・しかし白2とトバれ、白模様が広がるので黒に少し不満が残る。
【2図】(白に響かない)
・黒1は、白に響かない。
・白2のスベリで先手を取られ、白4と大場へ回られる。
※右辺の白は厚く、黒aは狙えない。
【3図】(正解・ツケ切り)
・黒1、3のツケ切りが、相手を凝り形にするときによく使われる手段。
・続いて…
【4図】(白の変化)
・白1のアテから打つのが普通。
・黒2のとき、白3が大切な一手で、黒4から6まで進行したあと…
【5図】(黒十分)
・白1の切りから黒6までは一本道。
・白7まで、右辺の白は凝り形なうえに、黒a、白b、黒cの利きが残る。
・黒8に回り、黒十分。
【6図】(白最悪)
・4図の白3で1とツグのは最悪。
・黒2のとき白3が必要で、黒4と2子にしてシメツケられては、白大失敗。
(山田規三生『利かしの基本戦略』マイナビ出版、2016年、226頁~229頁)
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