参院予算委員会で、立憲民主党・小西洋之参院議員(51)が 放送法の「政治的公平」に関し、第2次安倍政権時に官邸側の「圧力」があったとして公表したのだ。
その中身は、14年から翌15年にかけての官邸と総務省のやり取りが記録されており、中でも総務省に乗り込んだ当時の礒崎陽輔総理補佐官(65)が、もはや総理の名代のごとき剣幕で官僚にまくし立てる様子が浮き彫りになっていたのだ。この際に思い出すのが、下記の事件の扱いだ。
教団との関係で私がいまもピンと反応してしまうのは警察庁指定116号事件、いわゆる赤報隊事件である。1987年に朝日新聞阪神支局で記者2人が殺傷された事件はジャーナリズム界を志す者にとって凄まじい衝撃である。
この事件自体、最終的には未解明のまま時効を迎え、軽々に推測を語るべきではないが、しかし当初から教団の影が囁かれていた。
霊感商法の糾弾キャンペーンを1986年からいち早く展開したのが『朝日ジャーナル』だったし、同じころ、故・岸信介氏ら自民党右派が展開したスパイ防止法制定運動を背後で支えているのが教団の政治団体・国際勝共連合だと朝日が報じ、教団は朝日本社周辺で激しい街宣活動を繰り広げていた。
朝日で赤報隊事件の取材に長年携わった樋田毅氏の『記者襲撃 赤報隊事件30年目の真実』(岩波書店)が詳しい。同書は教団を匿名にしているが、教団は内部に「秘密組織」を抱えていたらしく、兵庫県警も「重要な捜査対象」と捉えて詳細な捜査報告書を作成していた。
90年代半ばに公安警察を担当していた際の記憶が忘れられない。警視庁公安部が旧統一教会を組織的に調べ始めた──そんな情報を耳にした私は動向を注視したが、間もなくその動きはピタリと止まった。理由を尋ねると、公安部の幹部はこう漏らした。「政治の意向だ」と。by青木理『カルト権力 公安、軍事、宗教侵蝕の果てに』