柿本人麻呂の歌に、
「春は萌え夏は緑に 紅の斑に見える秋の山かも」
があるように、古から「春の萌え」は日本人の心を癒してきた。
染井吉野が殆ど散って葉桜となり、
冬の間裸木だった落葉樹が萌え始め、
木々の下草や野原の雑草も伸びはじめてきた。
草木は花を咲かせ、その花には様々な生物たちが集まって来るが、
人の目に優しい萌えは、昆虫達にとっては命を繋ぐ萌えなのである。
巻頭の写真は、ある柿畑の下草を撮ったものだが、
黄色でハート型の花弁が特徴のヘビイチゴの花、
青いオオイヌノフグリの花や白く小さなノミノフスマ、
紫色のカキドオシ、姫踊子草、カラスノエンドウの蔓などが、
まるで植物の多様性を証明するかのようにひしめき合っている。
撮った時は気づかなかったが、
ヘビイチゴの花弁には飛蝗の新生幼虫が止まっていた。
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春の草木の花蜜や柔らかな葉や花は虫たちの食料でもある。
オオイヌノフグリの花に乗って採餌しているのは、
体長が1cmにも満たない「モモブトカミキリモドキ」で、
後ろ足が極端に太いことからこの名前がある。
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蒲公英には花虻仲間では最も小さい「キタヒメヒラタアブ」が採餌中だった。
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山桜の周りには、陽炎のように弱々しく、
後ろ足の異常に長い、黒い昆虫が風に煽られながら飛んでいた。
1時間以上調べたが名前を知るまでには至らなかった。
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オオイヌノフグリで吸蜜をしている小さなシジミチョウの仲間「ヤマトシジミ」。
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日向で寛ぐ(?)ベニシジミ。
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昨日の近隣ポタリングでは、晴れたために様々な昆虫を目撃しているが、
これからは更に様々な虫たちに遭遇することだろう。
現役時代、昆虫などには全く興味がなく、
モンシロチョウの小さな青虫さえ嫌いだったが、
四季折々に野に遊んでいると、
人も虫も「今を生きている」ことに変わりはなく、
時折見せ付けられる動植物の「凄すぎる世界」が面白いと思うようになった。