今回も俳句部のみなさんの句を読ませていただきます。言葉一つ一つから想像するのはとてもおもしろいし、俳句を作る上の勉強になります
(人選)
寒海苔掻き有明海の脈を診る ⑦ぱぱさん
寒海苔を採る作業を 「海の脈を診る」としたところお見事です。手の動きにもつながりますが お医者さんが患者の脈をとるように 大事に掻いている様子を想像することができると思います。「脈を診る」こういう表現ができるようになりたい。私の目指したい言葉です。
寒海苔や炙れば虹が浮かびおり まこ
海苔を食べる前に 我が家ではストーブで海苔を炙りました。それまで真っ黒だった海苔が それこそ弧を描きながら 色が変わっていくんですよね。そしてほのかに香ばしいにおいも・・・家族のために 丁寧にのりを炙っている様子を思い浮かべました。
(並選)
寒海苔を摘む手は赤しや日本海
寒海苔の磯の香充つる口の中 千鳥城
海苔を摘む句と食べる句の2種。寒さ厳しい日本海、海水の冷たさに耐えながら のりを摘んでいるといつしか手は赤くなっている。
厳しい季節の中 出来上がった海苔は食するとなんともよい磯の香りが口いっぱいに広がることよ。
二礼二拍一礼で寒海苔食ぶ Dr.でぶ
苦労して摘み取り手間ひまかけて出来上がったこの寒海苔 神前に感謝を表すときのような最上級の感謝をささげいただくことにしよう 感謝の礼拝のあとは笑顔でおなか一杯いただいたのでしょうね
寒海苔や無職になって昼ごはん かたちゃん
訳あって仕事を辞めた。今は無職の自分がいる。そんな自分の昼ご飯。質素ではあるが自然の恵みの寒海苔でご飯を頂く。ありがたいことだ、としみじみ頂く。
寒海苔や色とりあわせ黒深く みほめろ
喪服や留めそでの黒地の部分を染めるときには黒一色では染めないのだそうです。緑などほかの色で染めてから黒の色をかけていくのだそうです。そうするときれいな深みにある黒になるのだそうです。
本当の黒はほかの色を重ねてこそ本物の黒になる。寒海苔の黒もまた 海からもらった色を取り合わせきっとあの深い黒になったのだろう。
寒海苔ってほらすずさんのあの場面 案山子
すずさん…あの映画ですよね でもどの場面かがわかるほどじっくり見ていない‥残念
寒海苔やチリリ炙れば猫も鳴く 季切少楽
この句のほんわかとした雰囲気が好きです。寒海苔を炙っていると香ばしい磯の香…猫も海苔が欲しいのか 鳴いている
うちの猫は お魚の料理をしていると鳴きだして 炊飯器の横に飛び乗って なんかおくれと催促します。猫にも人にもおいしいにおいの寒海苔です。
寒海苔は揺蕩い小波は煌めく 研知句詩
「揺蕩い」が最初読めませんでした。揺蕩うほど海苔が育っている。小波が煌めく良い天気でもある。海の恵みの成長を喜んでいる。
今日スーパーに行ったら 宮城県産の 生海苔が売っていました。私のイメージで言うとこの生海苔が「寒海苔」です。海苔の状態をどうとらえるかによって 句の内容ががらりと変わる 面白い季語だなあと思いました。
俳句部のみなさん、ありがとうございました。次は まずは「磯巾着」ですね。これは同じく海のものですが 食べられないですよね・・・