仏教法話【法華経 如来寿量品】 永遠のいのち(3) 紀野一義
大人三人ぐらいでやっと届く松の木が広島の本性寺という私の育ったてらにありました。同じような大きさのイチョウの大木もありました。この大木をぽんぽんと叩いては学校から帰ってきたのですが昔のお母さんはこう言うタイミングがすぐにわかるんですね。ガラガラと開けると玄関の入り口に必ず座っているんですね。1日も変わらない。早くくるわけでもなくどう . . . 本文を読む
仏教法話 法華経如来寿量品 永遠のいのち 紀野一義 書き起こし①
如来寿量品という章に入ることになります。まあこの章だけが大切だというわけではないんですけど昔からの人たちが如来寿量品という章が法華経の最高峰だと考えているわけで、大勢の人がそう考えるにはそれなりの理由があると思いますので私なりにそういう理由について近づいていってみたいと思います。
この . . . 本文を読む
仏教界の最大の嫌われものといえば提婆達多と相場が決まっている。この提婆達多について興味深い話を聞いた。彼は釈迦教団の有力者で非常に能力の高い人だった。教団の発展にも尽くした。釈迦も舎利弗などを使わしてその能力を称えたほどだ。
ところが釈迦が老いてくると教団運営に非難を初め、釈迦は教団運営から離れて自分に任せろと言い出した。なぜそんなことを言い出したのか。教団の戒律が生ぬるいと言い出したのだ。
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朝比奈老師は92歳の講話で母の話を語り、どことなく陰気臭い感じがしたと紀野一義は云う。
柴山全慶師はしみじみと死ぬ時は「寂しいもんだよ」とおっしゃったと紀野一義は重ねる。
両師のように悟っていると思われている人も我々と同じく寂しいものらしい。
悟るとか悟ってないとかは仏法の目的ではない、関係ないと道元を引いて繰り返し、繰り返し氏は言う。そして次々とこうした親しかった方々がお亡くなりになるのを . . . 本文を読む
道元の言いたかったことは煎じ詰めれば
「この度に、佛法はきはめつくせりと心うべし」
ここで度というのは人を渡すという事、結局悟りとはこれだけであり、これのみでしか悟れないと言う。
俺は悟ったとかしゃらくさい、迷いの中にあろうが、少しばかり悟ったのであろうが究極は人を渡すという行為の中にしかないという。
のちにヘルマン・ヘッセはシッダールタで同じところにたどり着いていた。
また、普通思うよ . . . 本文を読む
紀野一義は復員後の恋をさりげなく雑談で語る。戦後の混み合う列車にお婆さんと娘を窓から押し上げて乗せてあげた。アナトール・フランスの本に興味を持った娘にその本をあげる。彼女は佐賀高校始まって以来の秀才だった。好きになって佐賀まで会いにいくと親父にけんもほろろに扱われる。それでも粘ってなんとか親父に近づきになる。
彼女は居候先まで尋ねてきたという。彼女はクリスチャンだったがそこで仏法に得度した。
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如何様にも読める道元の名文をじっくり眺めてみる。そして凡夫ゆえの読む楽しみを味わってみる。要は理屈ではなくイメージが描ければ良いのだ。
古佛のいへる事あり。死のなかにいけることあり、いけるなかに死せることあり。死せるがつねに死せるあり、いけるがつねにいけるあり。これ人のしひてしかあらしむるにあらず、法のかくのごとくなるなり。正法眼蔵第三十八 唯佛與佛より
ある人は戦場経験でいけるなかに死せるこ . . . 本文を読む
十方佛土中者、法華の唯有なり。
ただ法華それだけ存在という世界 諸仏は法華を転じる 転ぜられる 同じことだ 芝居や能 演じる演ぜられる 心迷えば 転ぜられる 悟って転ずる 同じこと 迷うのも悟るのも仏の世界
動詞を名詞に表す 本行菩薩道で括られる 海に波が起こるように 肯定して取るか悲観的に取るか 法華経 みんな肯定する 軍隊 体を鍛えることが第一だろうが 戦場で死ぬ方は否定派が多い
これ . . . 本文を読む
紀野一義の話よりの聞き書きです。
「キリスト教では悟れない、仏教でないと悟れないなんて言ってる人は悟れませんね」仏教伝道家でありながら驚くべきことをこの方は言う。それも度々、確信を持って言う。この人の宗教観を最も特徴づける言葉だ。
氏は正法眼蔵 四 ゆいぶつよ ぶつ ないのうくうじん を読み上げる。
凡夫として仏法を悟るなし、二乗として仏法をきはむるなし。ひとり仏にさとらるるゆゑに . . . 本文を読む
藤原定家 光源氏 薫大将 坐禪箴の共通項は何かという謎解きに紀野一義が挑む。
・白栲の袖のわかれに露おちて 身にしむ色の秋かぜぞ吹く 色のない世界に一点の色あり。
・正法眼蔵 坐禪箴 佛祖の光明に照臨せらるるといふは、この坐禪を功夫參究するなり。おろかなるともがらは、佛光明をあやまりて、日月の光明のごとく、珠火の光耀のごとくあらんずるとおもふ。日月の光耀は、わづかに六道輪廻の業相なり、さら . . . 本文を読む
誰でも心から願えば涅槃、成仏することができ、極楽、天国にいけますよ、そのお礼に他人にもそのことを教えなさい。
法華経28品で説いているのはそのことだけだと紀野一義氏に教わった。
時間も空間も超えた極めてシンプルな教えであり、誰でも涅槃、成仏できると唯信解するだけで良い。
特定の宗派に属しての難しい修行も勉学も方法論もいらない。キリスト教でも神道でも好みで構わない。一切の差別はない。
そんな . . . 本文を読む
死ぬべきはず の者が生きのび、生きてあるはずの者たちが死ぬ。せっかく生きのびて故国に還って来たのに、愛する者たちはみな死んでいたというこのむなしさは忘れられぬ。同時に、このむなしさの向うからひらけて来たあの大らかな世界も忘れられぬ。わたしの心の中にはいつもこの二つのものがある。空しさの方は「虚空」、大らかさの方は「空」。わたしの心の奥には、虚空と空とが重なり合っているようである。 紀野一義講演
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年齢を重ねると人生の虚しさや人生の徒労を覚えない人はいないだろう。覚えてこそまともなのだと思う。お気楽なわたしも周りで身近な方がバタバタと亡くなり人生の虚しさや人生の徒労を覚える日もある。
トップの座について俺がいなければこの会社は回らない、この国は回らない、この仕事は回らないなどと思いがちだが実際はその人が去って数ヶ月、長く持っても3年で忘れられるのが現実だ。例えばあの人は、この人はどうだった . . . 本文を読む
「小説 吉野秀雄先生」の面白さを紀野一義の講演録から聞いた。又聞きだがメモしておく。
吉野秀雄は弟子の山口瞳に盛んに恋をしなさい、交合をしなさいと教えた。マグワイをしなさいとは凄まじい先生だ。
吉野秀雄は慶応大学在学中に結核に冒され、歌道に精進した。子供四人を残して死んだ夫人の後に、吉野家に家事の世話に来た詩人八木重吉の妻とみ子である。
とみ子は自活しながら天涯孤独の身であったが、秀雄の兄の . . . 本文を読む
2022-05-25初稿2023-10-13追記
紀野一義はさとりを論理的に筋道を立てては語らない。一見矛盾したことも平気で言う。ここでは氏がさとりについて折に触れて書き、話したことを並べることにした。そうした形でしか述べることができないテーマだと思う。
我々は論理的にものを考えるが悟りを開くのにはいろいろ考えてもだめ
道元が悟りについて教え、紀野一義は現代の我々に噛 . . . 本文を読む