まさおレポート

バリの人々 ニョーマンのこと

ニョーマンが手にバナナの房を持ってやってきた。いつもアポもなしにふらりとやってくるニョーマンにつれあいが苦情を言う。ニョーマンに対してではなく私に対して苦情を言う。特にこの日はつれあいが風邪をひいて体調が悪いので余計に嫌であったらしい。アポもなしに突然やってきて家の中に入ってこられたのでは第一安全面で問題だという。もっともな話でそのうち注意してやらなければいけない。

このニョーマンとはスミニャックの頃からの付き合いだからもう2年近くなる。彼の正式な名前はバリのカースト最上級を表すブラフマンに属するものなのだが、生活は苦しい。現代のバリではカーストは無くなったので、過去のカーストを表す名前は全く生活力の足しにはならない。だがこの名前だけで8割が平民階級であるバリ人の間では尊敬の念を起させる場合もある。ある時にスミニヤックのビラのガードマン・クトゥがこの名前を聞いて、尊敬されるべき名前だといった。このあたりの意識の底に残るカーストはバリ人ならではのものだろう。

彼は生活の苦しさを時々はぼやくが、たいていは冗談にしてしまう。それだけ自己コントロールができているのだろう。こちらも深刻ぶらずに聞いて冗談で流しているが本音では同情を禁じ得ない。子供を大学にまでやらしたいという気持ちが伝わってくるが、彼の収入が追い付かない。

奥さんの恐妻振りが彼の得意ネタで、週に一度の家族のもとへの帰省も、「金がないのなら帰ってくるな」と言われると、冗談めかして言う。こちらも冗談めかして笑い飛ばすしかないのだが、内心は彼のめげない楽観ぶりにいつも感心している。


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