まさおレポート

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NTTデータ草創期メモランダム2 場所の記憶(第17森ビル、第41森ビル、桜木町)

2015-11-17 | 通信事業 NTT・NTTデータ・新電電

第17森ビル

1970年当時のデータ通信本部は港区の愛宕下通りにある虎ノ門第17森ビルと神谷町にある41森ビルにあり、虎ノ門第17森ビルには第一から第三データ部が、41森ビルには社内システム部が入っていた。第一は公共システム、第二は銀行系、第三はDORES DEMOSと略称された共同利用型システムを扱っていた。

データ通信本部は13階から16階までを借りていてわたしは13階フロアにあるオフィスに他の新人3人と共に配属された。その後神谷町にある41森ビル(1993年3月に神谷町MTビルとして新築されている)に移るまで4年ほどいたのだろうか。

横浜銀行システムの開発事務所が横浜桜木町にあったので正味の滞在はもっと少ないのだが17森ビルオフィスはさまざまな思い出の多いビルだった。

近くに特許庁があった関係か大きな特許事務所が入っていて、いつもその階でエレベータの扉が開くと鈴江特許事務所の看板やフロントに座る女性が目に入った。金回りのよさそうな事務所で特許事務は儲かるのだと思った。第17森ビル現在は既に新しい虎ノ門ヒルズに建て替わっている。


通勤は新橋から左手にお持ち返りの寿司店、かわきもの専門店、漬物店を見ながら烏丸通を歩く。愛宕下通りを左に曲がると第10森ビル、藪蕎麦などを右に見ながら数分で虎ノ門第17森ビルに着く。

このビルを通り過ぎてさらに行くと愛宕神社がある。愛宕神社は三代将軍・家光の時代に「寛永三馬術」の一人である曲垣平九郎が男坂を馬で登ったという伝説がある石段があり男坂と呼ばれていた。桜の季節などは昼休みに階段を登り、東京で最も高い山(といっても26メートル)である頂から町を眺めたものだ。テレビ放送発祥の地だとも記憶している。

虎ノ門第17森ビルの斜め向かいには「志な乃」があり、確か一杯800円だったと記憶している。玄くて硬い、そして太く打った田舎風の蕎麦で量も2人前くらいあった。この店で蕎麦の旨さを教えてもらった。店のどこかにこの店の主人は年に一回蕎麦粉を求めて日本中を旅すると書いてあった。けんちん汁と合わせて食べることも多かったが、太くてつるつるしたうどんとのあいもりもいけた。

この店で出すお茶に特徴があった。最初は煎茶がでてくる。食べ終わって抹茶いりの濃い茶が出される。このコンビネーションがじつによかった。しょっちゅうはいけないので給料日に楽しみにして出かけるのだがこの店は12時に行ってもいつも店の前に10人程度が並んでいた。蕎麦好きの男たちにはたまらない店だったのだろう。月に一回(20日が給料日だった)行くときは11時45分頃から行き、並ぶのを避けた。


30年以上たったある日、2005年に懐かしさもあり、周りの二人を誘ってこの店にタクシーを飛ばしてそばを食いに行った。店で働いていたと記憶に残っている一人の女性が30年たってもやはり客に蕎麦を出していた。しかし味はすでに30年前の記憶の味とは変わっていた。

味覚は記憶の中でひとりでに成長するものらしい。そして現実には先代の味を守り抜けないので味は落ちていくのでその味覚の落差は倍になる。その後この「志な乃」のこの店は閉店したと人伝手に聞いた。

愛宕下通りの一本西側の通りには民社党の本部がありビルに看板がかかっていた。そのあたりに小ぶりだが備長炭で焼くうまい焼き鳥屋があった。まもなく半世紀になるというのに店のたたずまいや壁に張られたお品書き、つくねにかける七味の黒コショウまでがその店の主人の娘の面影とあわさって立ち上がってくる。

この焼き鳥屋にはデ本幹部の秘書が男性社員に連れられて顔を見せることがあった、その後10年も経った大阪の地で勤務しているときにくだんの男性社員はこの秘書に訴えられて退職したとの風聞も聞こえてきたりした。秘書がこの男性社員に捨てられて上司の幹部に訴え、激怒した幹部が首にしたとのよくある顛末だった。

デ本はコーヒー好きの多い職場であり、私なども日に5,6杯は軽く飲んでいたのではないか。いつでも誰かがコーヒーを飲めるようにコーヒーメーカーでコーヒーをたてており、その豆の買出しのために卸と小売りを営んでいる交差点角の店まで買い出しにいった。(コーヒー豆代は給料日に社員が出し合った)そのコーヒー店の前にたつと炒りたての豆の香ばしい匂いがした。我が家にはずいぶん長い間この店で買ったコーヒー豆保存缶が健在だった。ブリキの缶に黄色と茶色で何かの模様が描かれたありふれたものだが、ある日大人になっていた娘がそれを見つけ、彼女も小さいときから見慣れていたのだろう、懐かしい思い出の品として自分の住まいに持っていったしまった。


17森ビルの地下は電電公社デ本の社員食堂になっていて、新入りは午前中の10時頃にはチーム全員の昼食の注文をとり、食券を買いに行く。赤や緑、黄色のプラスティック片にはA定食やB定食などと彫りこまれており、それを昼食までに全員に渡しておく。

高くても300円台であった。もっとも給料もこの頃は残業代込みで8万円あるかないかの時代だから、今なら7,800円相当になる。それでも周りの食べ物屋で昼食をとると倍近くはしたから、やはり安かったのだろう。もっぱら焼き魚定食を食べていた。

社員食堂は設備とテナント料を会社が提供しているので安く提供できる。(後年、どこかのNTT社員食堂で業者と厚生担当の幹部が癒着してその幹部が業者から賄賂をもらうという事件が報道されたことがある)
ほとんどの職員が遅くまで残業していて夜食代が会社から提供されていた。(捕食と称していた)

この地下食堂では全電通(現在の情報労連)の組合活動が時折開かれていた。NTTデータ分会と呼ばれる組織単位で、通常の分会に比べると格段に規模の大きい組織であった。この分会出身で本社支部の専従役員になっていたS氏がオルグ活動のために必ず出席していた。後年気がつけば彼は全電通の委員長になっていた。

東邦生命の破綻事件等で嫌気がさしたのか、あっさりと全電通委員長を辞任して今は音沙汰を聞かない。元委員長達は山岸氏といい及川氏といい国会議員になり、影響力を及ぼしていたのだがS氏は珍しいケースだ。完全引退せざるを得ない事情があったのか、あるいは執着をもたない見事な引退なのか。いまだに真相は私には不明だ。このことについては項をあらためて述べてみたい。

地下の駐車場からは電電公社日比谷本社へのハイヤー便があり、用事があるときは若い社員でも黒塗りの車に乗って往復することができた。また、資料保管室があり、日常的に使わない資料が大量に保管されていて、めったに入ることはないが年末などは入って不要書類の廃棄などをおこなった。

日本たばこ支店、愛宕下通りの陸橋、慈恵医大の玄関、港区図書館の貸出用クラシック音楽テープ、日比谷図書館、新橋の鉄なべの匂いが懐かしいもつ鍋屋、ニュー新橋ビルの一階にあったオーディオスピーカ専門店等々が懐かしい風景として甦る。


41森ビル

その後、電話帳出版のシステム開発プロジェクトに従事した時は社内システム部の所属となり神谷町にある第41森ビルで仕事をした。桜田通に面して17森ビルから歩いても30分程度の距離にあり、最寄りは地下鉄神谷町駅だった。

このビルには社内システム部が入っていて私の隣の一角は料金明細システムの開発チームが入っていた。電電公社の電話料金請求と明細、回収を統合する基幹システムで大勢のスタッフが働いていた。この開発リーダーだったNさんは数年後大阪の地で自らの死を選んだ。当時のデ本は草創期で活気にあふれていたが、反面残業時間は極端に多く、電電公社の職場の中では中間管理職層の自殺者や過労死が多いことでも知られていた。システム開発の社員管理などのマネジメントがまだまだ幼稚な時代の影の部分だ。

私の所属した電話帳出版のシステム開発プロジェクトは当時普及を始めた電子印刷システムを電話帳出版に利用するシステム開発がミッションで、総勢20名にも満たない小ぶりなチームだった。第17森ビル時代とは打って変わって開発計画がなかなか定まらずにシステム開発の前段階である調査期間が長かった。日本人の姓名に使用する漢字分布や配列の研究などに2年ほど携わった。

羽箒

 

羽箒は消しゴムで消したカスを原稿から払うのに使う。当時全員がこの羽箒を使っていた。本物の鳥の羽を使っているが何の鳥かはわからない。形からするとかなり大型の鳥でしっかりとした羽だった、今から推測するにカラスかもしれない。

半透明の設計用紙にシャープペンシルで仕様書やチャートを書きこんでいく。仕様書はA4版、チャートはB3版用紙で書いたかかな。半透明の用紙は青焼きと呼ばれるジアゾ感光で焼きやすくするため。新入りの時代はこの青焼きが仕事の半分をしめた気がする。そのうち一人前の仕事を任されるに従って他人のコピー焼き作業は無くなった。

疲れるとひとときこの箒で頬を撫でたりした。まだタバコの味を覚える前の話だ。この羽箒をネットで見つけて思った、この当時を象徴するものといえばこの羽箒かもしれない。職場のあったビルの思い出とともにこの羽箒も付け加えておきたい。この後、文具の主役はワープロやPCでの作業に移っていく。

 

おでんと鉄味

草創期のNTTデータ3 職場の風景 5011文字

 

草創期のNTTデータ5 電話帳・案内簿・番号案内システム 4957文字


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