2006.06.25
ベニスから列車でミュンヘンに向かっていたときの事だったと記憶している。途中のベローナで多くの日本人乗客がスーツケースを持って降り立った。何があるのだろうと疑問に思い、回りの乗客に尋ねると野外オペラの祭典が毎夏ベローニャで行われると聞いた。ぼんやりとだが、いつか聴きにいけたらと思って久しい時間が経った。16年くらいが過ぎ去っただろうか。
今宵は大好きなアイーダが聴ける。舞台の丁度前に席が取れた。でも階段席で、距離にしたら100メートル以上は舞台から離れているので登場人物の表情までは見えない。かつて甲子園球場へマイケルジャクソンを聴きに行ったときはもっと舞台から遠く、マイケルジャクソンの顔が豆粒にしか見えなかった。それよりははるかにましだ。右上空に宵の明星が一点輝きを増す頃、舞台は始まった。
4時間は瞬く間に過ぎ去った。野外でもあり、座席は狭く、後ろのカップルの長い足が背中に当たりっぱなしで没入感は残念ながら希薄であったが、古代劇場の真夏の夜の雰囲気は十分に楽しめた。劇場の舞台をしょっちゅう見ている人がたまに趣向を変えて野外でというのがやはり本道だろう。
だが、やはり野外は特別な雰囲気を持っている。夜の闇のなかで歌い手の声と宇宙の精霊の交流が感じられたのは、野外ならではの興趣であった。