まさおレポート

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村上春樹「1Q84」三巻 読書メモ

2010-08-11 | 小説 村上春樹

村上春樹「1Q84」第三巻をひと通り読み終えた。1週間かかったことになる。様々なディテールを積み重ね、思わずうまいなあと感嘆する比喩で楽しませてくれ、推理の楽しみと結果を早く知りたいというこちらの気持ちをじつにうまく惹きつけながら読ませる。

 
やっと青豆と天吾の二人は再開しておまけに妊娠までして1Q84からもとの1984に戻ってきたようだが、実は高速道路から見えるエッソの虎が元の向きとは異なり、左側を向けているということで、なにやら違う世界に戻ってきた。今後もこの左を向いた虎の世界の続編を書くつもりがあるのだろう。
 
青豆は交わらずに天吾の子を妊娠している。あのマリアを連想するが「処女」懐胎ではない。単一生殖というのだろうか。「声を聞くもの」が生まれたらどのような筋が展開されるのか。
 
牛河はタマルに殺されるが、彼の口からリトルピープルがぞろぞろと出てくる。何がここから始まるのだろう。
 
天吾の父は昏睡の後に亡くなるが、その前に青豆や牛河のところにも天吾の父と明確に読み取れる者が訪れる。混濁した父とは別に鮮明な意識が離脱してさまようとでもいいたげな。
 
柳町の老婦人は何故リーダーを殺害するのか、動機は解明されずじまい。娘の死となにか関係がありそうだが。これまた続編につながりそう。
 
天吾の母の行方が牛河の口から語られるが、何故殺されたのか、犯人は一緒に逐電した若い男なのかは謎のままだ。
 
ユングが石の家を元型の追求のために、スイスの湖畔に独力で建てる挿話があった。
 
 
世間でトンデモと言われかねないテーマ、処女懐胎や生霊、宇宙人もどきを本気で小説に埋め込むと世界はどうなるか、この壮大な創作実験を試みているのが村上作品だろう。

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