まさおレポート

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「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」下巻 メモ

2023-04-09 | 小説 村上春樹

私は水路標識灯の底についたおもりのように暗く愚かなのだ。 P42

ドラマーが振り下ろそうとしたスティックを宙でとめて一拍置くような暫定的ともいえそうなかんじの一瞬の沈黙があった。 P44

それはまるで泥酔した魂がよろめきながらとっかえつっかえ空に戻っていくような眺めだった。 P52

うまいなあ この比喩!2023/4/9追記


体全体が怪我の見本帳みたいになってしまうことだろう。薬局の店頭にはってある水虫の症例写真みたいに、きれいなカラー図版にしてみんなに配るのだ。 P73

これは何度読んでも笑ってしまう。2023/4/9 追記

アルコールが神経を麻痺させるせいで、その痛みが私自身とは直接関係のない一種の独立した生命存在であるかのように感じられてくるのだ。 P73

うんうんわかるなあ 2023/4/9 追記

よい樵というのは体にひとつだけ傷を持っているもんさ。それ以上でもそれ以下でもない。 P59

千代の富士が脱臼癖を克服して大横綱になった話を。ちょっと違うかな?2023/4/9 追記


つまり我々の頭の中には人跡未踏の巨大な象の墓場のごときものが埋まっておるわけですな。大宇宙をべつにすればこれは人類最後のテラ・コグニタ(未知の大地)と呼ぶべきでしょう。 P80

フロイトやユングが様々な推論を発表したが、あれはあくまでそれについて語ることができるだけの述語を発明したにすぎんです。 P81

形而上学というものは所詮記号的世間話にすぎんです。 P82

所詮言葉では表現できない世界が心でありだから「所詮記号的世間話」と述べさせている。禅の悟りなどは所詮言葉では表現できない。2023/4/9追記


まさにおっしゃるとおり。あんたは理解が速い。・・・思考システムAは常に保持されておる。それがもう一つのフェイズではAダッシュ、A”、・・・と果断なくなく変化しておるわけです。 P83

私のやったことはあんたの意識のシステムを現象レベルで固定したにすぎんです。それも定まった時間制の中でです。 P89

イメージの集積を切ったり貼ったり、あるものをとりのぞいたり、いろいろと組み合わせたりするわけです。そして筋をとおしたひとつのストーリーに組み替える。 P90

観仏が現実になるという話を思い出した。そのことを小説で表現するとこのようになる。


優れた音楽家は意識を音に置き換えることができるし、画家は色や形に置き換える。そして小説家はストーリーに置き換えます。 P90

優れた宗教家は意識を救済の言葉に置き換える。2023/4/9 追記


百科事典棒というのはどこかの科学者が考えついた理論の遊びです。百科事典を楊枝一本に刻み込めるという説の事ですな。 P125

髪はまちがった場所に植えられた植物のようにぱさぱさとして P145


世界には数えきれないほど様々の形の宗教や神話があるが、人々が死について思いつくことはみんな大抵同じなのだ。オルフェウスは舟に乗って闇の川を渡った。 P147

彼らの憎悪は地獄の穴から吹きあがってくる激しい風のように我々を押しつぶし、ばらばらにしようと試みていた。 P159

私はクロマニヨン人が洞窟のふたをあけるみたいにスティールのドアをずらし、彼女を中に入れた。 P201


まず影という自我の母体をひきはがし、それが死んでしまうのをまつんだ。 P219

絶望があり幻滅があり哀しみがあればこそ、そこに喜びが生まれるんだ。絶望のない至福なんてものはどこにもない。 P220


頭骨はきれいに処理され、一年間地中に埋められてその力を鎮められてから図書館の書庫にはこばれ、夢読みの手によって大気の中に放出されるんだ。 P222

ようするに君は電気のアースのような役割をはたしているわけだ。 P222

古い音楽が好きなんです。ボブ・ディラン、ビートルズ、ドアーズ、バーズ、ジミ・ヘンドリクス そんなの P245

ウェイターがやってきて宮廷の専属接骨医が皇太子の脱臼をなおすときのような格好でうやうやしくワインの栓を抜き、グラスにそそいでくれた。 P266

僕の主体性というものはそもそもの最初から無視されているんだ。あしかの水球チームに一人だけ人間がまじったようなものさ P272

それは唄だった。完全な唄ではないが、唄の最初の一節だった。・・・「ダニー・ボーイ」 P286

海から打ち上げられるものは不思議と浄化されているんだ。 P298

月曜日 空はまるで鋭利な刃物で奥の方をえぐりとったように深くくっきりと晴れ渡っている。 P301


誰も私を助けてはくれなかった。誰にも私を救うことはできないのだ。ちょうど私が誰をも救うことができなかったのと同じように。P.332

ささやかな救いこそが我々にできることかも。ヘッセのシッダルタですでに学んだ。2023/4/9 追記


太陽の光が長い道のりを辿ってこのささやかな惑星に到着し、その力の一端を使って私の瞼をあたためてくれることを思うと私は不思議な感動にうたれた。・・・私はアリョーシャ・カラマーゾフの気持ちがほんの少しだけわかるような気がした。おそらく限定された人生には限定された祝福が与えられるのだ。 P339

ここだね村上春樹がカラマーゾフの兄弟を推す理由は。2023/4/9 追記

この街を作ったのは君自身だよ。・・・君の生きるべき世界はちゃんと外にあるんだ。 P345

ここは僕自身の世界なんだ。壁は僕自身を囲む壁で、川は僕自身の中を流れる川で、煙は僕自身を焼く煙なんだ P345

以上のフレーズは仏教的世界観をリアリズムを捨てて表現している。2023/4/9 追記


2018/12/5 追記 谷崎潤一郎賞を取った際の丸谷才一のコメント

「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」。ここでも丸谷氏は、村上のノン・リアリズムについて、言及している。

「我々の小説が、リアリズムから脱出しなければならないことは、多くの作家が感じてゐることだが、リアリズム離れは得てしてデタラメになりがちだった。しかし村上氏はリアリズムを捨てながら論理的に書く。独特の清新な風情はそこから生じるのである」

 

「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」上巻 メモ

 村上春樹「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」とショーペンハウワーの「意志と表象」

「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」と「カラマーゾフの兄弟」のリンク

 


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