似たような火の玉体験
「海の上を火が渡って来るのを見て、彼の心臓は止まってしまった。・・・身を守るための呪文を一生懸命思いだそうとしたが、彼の頭は底に穴のあいた鍋のように空っぽだった。・・・一人の男が灯りを手にして船から下り、ここへやって来るのを見てパックは安心した。少なくとも、それは超自然のものではなかった。」
自身の高校時代を思い出した。四国の詫間という田舎町にある全寮制の高校で、海岸沿いにあり、近くの須田という町まであるいて軽く30分以上はかかる。町から高校の寮まで街灯は一切無く、月のでない夜は本当に真っ暗になり、1メートル先のものがみえない。例えではなく本当に頭をぶつけてもわからない。ここで肝を冷やす体験をした。闇夜を一人で寮に帰る途中、なにやら光るものがふわふわと浮いては沈み浮いては沈み、こちらに向かって来るではないか。「これが噂に言う人魂か」と内心思ったと同時に、怖いもの見たさでその火の玉を凝視して歩き続けた。恐怖で固まったまま5分ほど歩き続けた頃、その近づいてきた火の玉は、なんと男が提灯をぶら下げている灯りであった。ろうそくの火は明るくなったり暗くなったりする。しかも上がり下がりのある小道を海岸から上がってきたので、それは火の玉に
そっくりに、みえたのだが、引用した文章の体験のなんとそっくりなことか。
100年前の王宮(プリ)
「数え切れないほどの中庭には家財、織機、生贄用の道具などのいっぱい詰まった建物や、夫人達、親戚、役人、召使い、奴隷とその家族の住居が建て込んでおり、主庭に通ずる入り口の物見の塔の所で・・・領主自身の館と大きな謁見の間とは第二の庭にあり・・・」
現代のバリでは、大きな寺院に行くと、このようなたたずまいを容易に想像することができる。生贄用の道具などはヒンドゥらしい風景だ。
樹木
「いたるところ樹木があった。ココ椰子、びんろうじゅ、灰色の枝に強い色の花が咲くジュプンの樹、葉が暗く繁る背の高いチュンバカ(木蓮)の樹、・・・」
これらの樹木は当時も今も全く変わっていない。滞在中のビラにも同じような樹木が見える。ちなみにこのジュプンというのはジャパンがなまったものだという事を聞いたことがあるが、本当だろうか。
王宮の動物達
「第4の庭は闘用の雄鳥の小屋で独占されていた。・・・火喰い鳥、バリの西部で捕まえた赤くて胸が緑色の鸚鵡、ロンボクから来た白鸚鵡。・・・粗い毛並みの馬、水牛、黒豚、・・・三匹の亀が饗宴に使えるように飼われており、・・・米の倉、・・・穀物を打つ床、・・・厨房、・・・食料倉庫、・・・生贄の供物を準備する小屋、・・・影絵芝居の人形を納めた建物があった。」
鳥に異常な関心を持つことがわかる。ビラの近所の家々でも鳥かごが何気なく置いてある。そういえば出入りのマッサージ・アユはビラの庭に迷い込んできて、いつの間にかいなくなった幼鳥の話をしたら、「是非ほしかったのに」としきりに悔しがっていた。
阿片
「彼はもう一度阿片を詰めるために煙管を少年に渡した。・・・吸っている限り、ものはみな善く、こころは平和だった。他の時には、原因のない憂鬱に打ち負かされるときが多かった。・・・この世に余りにしばしば転生して来たために、疲れ切ってしまった魂をもって生まれ出たごとくに。」
当時の王達は盛んに阿片を吸っていたらしい。王なので節度をもって吸っていたらしいが、権力と富を持って怠惰で倦んだ生活を送っていた風だ。要は退屈だったのだろう。
爪を伸ばす習慣
「貴族と芸術家だけが爪を長く伸ばす特権がある。」
現代のバリはスパ全盛で過当競争になっている。そこではネイルファッションも盛んで、これらは100年前の過去とつながっている・・・。
レゴンダンスの踊れる年齢
「もう長くは踊れないね。ランボン」・・・思春期に達すると踊りがお終いになるとは、これまで一度も考えたことがなかったのだ。」
思春期までだとは知らなかった。そういえば、キンタマーニ村でみたダンスも幼い女子か、17,8の男性だった。
大相撲を彷彿
「この時期には、女は水田に足をいれてはならないのである。」
なんだか女人禁制の大相撲土俵を思い出してしまった。
魔女
「彼女の目には涙がたまっていた。これは魔女だという確かなしるしである。」
へええ!
「バリ島物語」 その2 バガバッド・ギータの詩句