~ マンション・20階の火災 ~
昨日朝8時半ごろ千代田区の25階建て「西神田コスモス館」で火事、20階にある住居付近から出火した。20階の一室約70平方mが焼け、この部屋に住む20代の男性が顔や腕などにやけどを負い、他に2人が軽いけがをした。24階で暮らす62歳の女性は「すごい勢いで黒い煙が上がってきた。家のなかを行ったり来たりして、本当に恐ろしかった」と。テレビで見た私もおそろしかった。火は上へ上へと向かう。眺望のよい上階こそ危険だ。
20数年も前のことを思いだす。ロンドン8日間フリータイムのツアーに単身参加した5月のあの夜中のことを。部屋に響きわたる凄まじい警報で私は目をさました。火災か?部屋のドアーを開いても人は見えない。私は逃げ遅れたのだ、急いで非情階段を下りた。たしか10階だった。見下ろす地上には大勢の人々がホテルを見上げていた。ようやく地上に着く。
私だけが遅れて。人々はホテルの中へと引き返していた。あの警報は誤作動だったのだ。
私はいま、高層の森の外れに暮し高層の森を時には不安になりながら巡っている。
高層ビルの森 松井多絵子
9・11のちの高層ビルなべて風の吹くとき我に傾く
二十階展望室より見る午後の青くない空、疲れている空
もういらぬペンシルビルがまた一つ建てられている視界の端に
高層のビルは地下へも伸びていてB4階に酒を売る店
高層の街を縫うごと歩くとき夕月はビルに削られている
高層の街のはずれに灯のなきオフィス街あり、白骨樹林
倒れずに疾風のなかに立ちつくす高層ビルは不安をまとう
昨日の高層ビルの火災は大惨事にならなくてほっとしました。
3月3日 松井多絵子