コロナをきっかけに抑うつ状態の若者が増えているそうです。シングルマザーや派遣さんは職を失って生活苦、自ら死を選ぶ人もじわじわ増えていると聞きます。もともと日本は人口当たりの自殺率が高くG7では一番高いのです。先進国ではワースト10に入っています。韓国やロシアが自殺者が多いことで知られていますが、それらよりは低いだけで自殺大国と言ってもいいくらいなのです。
特に問題なのが、女性の自殺が前年より2割程度増えているという実態です。日本の社会で女性の置かれている立場が改善しないまま、経済的な事情が急速に悪化し追い立てられているように見えます。
自殺の多くは「将来を絶望する」というものです。老化して介護疲れ、病気になり治る見込みがない、家庭内や人間関係の悪化などがその原因です。更にお金の問題がそれに追い打ちをかけます。借金苦・手元に現金が無い、収入が途絶える、そんな生活不安が心を苛み、健康を害します。健康な人ならば、なんとか苦境を打開できますが、心や体を傷めて抵抗力を失ってくると、ささいなことでも耐えきれなくなってくるのです
うつ病と自殺は切っても切れない関係にあります。大きなショックを受けた時(パニック症候群)や経済的な問題や人間関係などの悩みからうつを発症すると、身体はセーフティーモードとなります。重大な危険やトラブルから身を守るために生理的に「半死」状態、極端な機能低下となります。体が動かず人との話も出来なくなり、ただただ布団の中に潜ってしまいます。食べ物の味が分からなくなって食欲が失せ、夜中は不眠となります。
初期には「さぼり病」とか言われて誹謗中傷され、外見ではそれとわかりにくいのでどんどん重症化します。そうなると社会から途絶し食べるものもなくお金もなく、その先は「死にたくなる」という悪循環に陥るのです。ちゃんと病院に行き、きちんとした医療を受ければ1年で軽快、2年で薬から手が切れますが、これを怠ったり、もとの原因を取り除かないとそのまま重篤化し「廃人」同様で死ぬまで治らないという怖い病気なんです。
ちょっと前にイギリス王室から離脱したハリー王子とメーガン妃 のことが話題になりました。テレビのインタビューで王室内のいじめでうつ状態だったと吐露しました。真相は分かりませんが、日本の皇族、美智子さんもだいぶ宮内庁内の嫌がらせがあったのは周知のことですし、雅子様が長年適応障害で苦しんだのも、王子待望などのプレッシャーや軋轢があったのは明らかでした。外務省で、世界を飛び回り、多国語を操るキャリアウーマンが一切の外遊を禁じられ、公務以外は軟禁状態だったですから。
最近では深田恭子さんが適応障害の治療でしばらく休養すると発表されました。
さてそこで大坂なおみちゃんの、インタビュー拒否・休養問題が急に注目されました。全仏の直前に正式な記者会見に出ない、と通告したのが発端で、主催者は多額のペナルティーと、4大大会の出場停止を仄めかしました。なおみ選手はだいぶ前から風変わりなその発言や振舞いに賛否もありましたから、トップアスリートにありがちなワガママは許さん、という判断をしたのですね。
テニスの関係者や選手たちからは、大金を貰う以上はインタビューなども含めてテニスで、注目され影響力もあるのだから、記者会見で説明すべきだという意見や論調が多かったのです。日本でも、ちょっと天狗になってる、とか負けたらインタビューに出ないのか?などと論じる向きも多かったように見えました。
するとなおみ選手は、「数年前からうつ病に苦しんでいる。自分の心の健康を守るためにプレス会見拒否した」と明らかにしました。これで一気に流れが変わりました。これを出したらもうけんかになりません。グランドスラム(大会主催者)が、世界rank2位の人気選手の心の病を逆なでし、最悪の場合選手生活も絶たれかねない事態を起こした張本人(被告)となってしまうからです。金を払うのはこっち、賞金を稼がしてやるのだから文句を言わず、主催者の言う通りにやれ、という思い上がりだと批判されます。
実際になおみ選手がどんな体調だったのかは存じません。彼女のプレーや話しぶりからは、ナイーブでシャイな少女、気配りが目立ちあまり話上手でもなく、心の起伏がプレーに影響するようなタイプに思えます。本人が出たくないと言うにはよほどの理由があるはずです。事前に拒否通告があった時点で、選手の体調や本音・内在する問題点をヒアリングして探り、運営上の配慮や改善を検討するという深慮遠謀があれば、だいぶ展開が変わっていたのだろうと思います。いきなり「じゃあ罰金払え、そんな態度なら大会からは追放されるかも」、という恫喝めいた態度をとったら選手の気持ちは硬化するに決まっています。
グランドスラム側も大慌てで「意義ある改善」を表明したようです。為政者や権力者は、個々人の気持ちや発言をなめてかかり軽視すると、時にとんでもないしっぺ返しを食らいます。「検察庁法改正案に抗議します 」とツイートした小泉今日子さんを挙げるまでもなく、一人の人間、とりわけ女性の言葉は、実はほとんどの人たちの素直な意見や気持ちを代弁しているのだ、と謙虚に受け止めるのがよかろう、そんな印象を持った一件でありました。