九州の高校の同窓生で関東在住のグループがありまして、長年飲み会やゴルフコンペで親交を続けております。
昨日、その仲間で作るグループラインで、ちょっと、どきりといたしました。その一人がコロナに感染して20日間ほど入院したのだそうです。同期の中でも極めつきの呑み助で、入院日が1/20といいますから、年明けの新年会で貰って来たのだろうと思います。いずれにせよ無事帰還できて何よりでした。こんどのゴルフでは、じっくり闘病談を聞かせてもらおうと思います。
昨日、もう一つ知らせがlineに入ってきました。金融機関勤めだったワタシ、数十年前に一緒の店舗で働いた上司の訃報でした。実務・専門知識に精通した仕事師、明るい性格で誰からも慕われる存在で、尊敬する先輩の一人でした。よくお酒もゴルフもご一緒しました。
ここ数年何度かお目にかかると、往時と人が変わったように太っていたのが気になっていました。体調を訪ねると「良くはないよ」と笑い、いくつも薬を飲んでいると話していました。
ワタシは、そんなことを思い出し、しばしそのショックで呆然としておりましたが、気を取り直してその当時の仲間に連絡をとり、篆刻を開始しました。これまで毎日一個以上「姓名印」を中心に彫っておりますが、昨日は「引首印」を彫ろうと思いました。書画幅の右肩の部分に押す縦長の印で関防印ともいいます。形式は自由なので、名前以外の好きな言葉を彫ります。白文でも朱文でもかまいません。これと雅号・姓名印合わせて三顆と呼び、縦の長さを同じにするとバランスよくなります。
選んだ字句は「風中燭」です。風の中で今にも消えていきそうなろうそくの火、人の人生や命の儚さを表す3文字です。今の自分の気持ちにふさわしく、亡き人のことを忘れない様にと決めました。
まだ篆刻は初心者ですが、それでも心がけていることがあります。その印を使う人の人となりや印象を大事にして、デザインや彫りに投影するというようなことです。もう一つ、うまく彫ろうと思わない、これを使う相手に上手に彫って気に入られようなどと考えないようにしようということです。
書道で「卒意の書 」と呼ばれるのが世界最高の書と言われる蘭亭序です。卒意とは、書を書くとき、作品としてではなく、下書き用の気持ちで人に見られるのを意識しない心境をいいます。また、適意(あるがまま、心のままにすること。)というのも 肝要です。
そして、もうひとつ心がけているのは「集中」です。仕事でもなんでもだらだらやってると能率は下がり、ミスが増えます。つたない経験ではありますが、一つのことに短時間に集中して臨んだ方が結果がいいように感じ、ワタシの人生訓でもあります。
そして、かの人のと交わした会話、ありし日の姿、笑顔などを思い浮かべつつ彫り上げました。出来は拙くても仕方ありません、なにせまだ初心者、技量が伴わないのは致し方ありません。
側款には「辛丑弥生(令和3年3月の意)」と亡き先輩の名を彫りました。
今日の通夜には、行ってくるつもりです。今回、彼の元勤務先では、出来るだけ参列は控え、各所への連絡も慎むようにとの指示があったそうです。コロナのせいで、通夜や葬儀を行わない、家族葬にするというのが増えていると聞きます。盛大な葬儀を控える、それはよかろうと思います。しかし、さはさりながら、人として優先すべきこと、避けてはならない事もあります。
長年親しくさせてもらった人との最期のお別れです。生前お付き合いがあったできるだけ多くの方に知らせるのも、ただ黙って焼香し、そっと別れを告げるのになんの躊躇いがありましょうか。
好き放題、思うがままに生きてこられたのだ、と思います。結果として人より少し早く逝くことにはなりましたが、この世に未練はなかろうと。それがせめてもの救いです。
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