落語家さん、そもそもシャレと下らぬ馬鹿話でお客を笑わせる稼業なので、あんまり堅苦しく芸だとか、どうだ上手いだろ、とかの気配を見せられると白けてしまいます。実際はそうでなくても、能天気、すっとぼけてのんきな語りを聞かせてくれる噺家さんが好きですね。今のベテラン落語家では、柳家権太楼、瀧川鯉昇、桂雀々なんかが安心して聞けます。名人と言われた米朝一門の桂枝雀さんという早くに亡くなった噺家さんは面白かったな、もう少し方長生きしていたらと残念です、そのお弟子さんの雀々さん、上方落語では重鎮で、大げさで破天荒な語り口は師匠譲りでしょうか。
この雀々さんの十八番、「ガマの油」を思い出しました。本人も汗だくになって着物まで汗染みになるほど熱演するこのお噺は、四六のガマが、鏡に映る自分の姿の醜さに脂汗を流したのを集め煮詰めて膏薬にしたもの、これを身振り手振りよろしく立て板の水の如く口上を述べるのです。(ここが見せどころ)喉がかわいたために飲んだ酒でろれつが回らなくなり、刀で切りつけた自分の腕の傷、血止めに塗った「ガマの油」が効かない、というお話です。
昨日テレビを付けたら、多目的トイレでエッチを繰り返していた芸人さんが、大汗をかきながら謝罪会見を行っていました。謝罪と言うのは名ばかり、一応けじめをつけて、芸能界の仕事を再開するという目論見に見えました。あるいは、世間の風当たりを探るアドバルーンを芸能事務所が上げさせたのかも。
レポーターは下世話な質問に終始していましたし、一方ワイドショーの解説などは、そんなにみんなでたたくことか?・いじめるなよ、という芸人寄りの論調が多いようです。破廉恥な行いで、きれいで若い奥様の愛情や信頼を失い、せっかく手にした名声やイメージが地に墜ち、収入はゼロになったのですから、本人は悔恨と情けなさに打ちひしがれているのでしょう。
しかし、こんな人たちに、社会通念上の常識や高潔さを求める方がいけません。素養もモラルも無い獣、化け物がひしめく芸能界、どなたも似たり寄ったりです。テレビでは大騒ぎしていますが、ワタシらにとっては、どーでもいい事であります。
ワタシは、十数年前に、自分が同じように汗だくになった経験をしたのを忘れられません。極めて個人的な問題で、ある巨大企業の応接室に呼ばれ数人の幹部・人事担当などと対峙することになりました。真冬と言うのに、2時間ばかり、いくら拭いてもとめどなく汗が滴るのでした。こんな経験は初めてでしたね。
振り返ると、極度の緊張、大きな敵を前に一人で戦う、今までに経験が無い、というような要素からくる生理現象だったのだと思います。アドレナリンが、ガーッと出たのかもしれません。その時の内容は、こちらに落ち度や責めを負うべきことは一切なかったのですが。
それ以降3度ばかり(一般的に、ざらにあるようなことではありません)、似たような局面に遭遇しましたが、不思議なことにそんな発汗現象は起こらず、いたって冷静・平静でありました。経験によって度胸がついたというのか、生理的にリスク対策が働いたというのかわかりません。場数を踏めば人間と言うのは強くもなり鈍感にもなれるのでしょうね。
そういえば、こんな場面はどこかで見たな、と思い出しました。そうそう、都知事の二人連続の辞任会見でした。猪瀬さんは、50百万円もらったとかいう疑惑をかけられ、みんなの前で袋にお金を詰め込むというパフォーマンスをさせられました。気の毒なほどの汗が顔からぽたぽたと滴りました。公金の不正流用で死人に追い込まれた舛添さんも、大汗で、頻りに顔を拭いてました。
あと、確か日本大学アメフトの暴行問題で出てきたなんとかという監督の顔も汗まみれでありましたな。千葉県の台風災害の時の森田健作さんもしどろもどろの汗だく会見でした。
恐らく、大勢のプレスと撮影機材などの熱気で会場が蒸し暑くなるせいでもありましょう。しかし、自らのやましさと、守勢に回ってつじつまの合わない弁解を繰り返す負い目・嘘をつく緊張感などのなせる業でもありますな。見ていても哀れを感じました。
なぜか、女性は議員もタレントも汗をかいてるシーンはあまり記憶にありません。女性は、なにか思考パターンや生理的なシステムが根本的に違うのかもしれません。女性は平気で嘘をつける、と誰かが歌ったり言ったりしてますが・・・
そういえば、安倍さんも麻生さんも菅さんも、どんな都合の悪い局面で答弁しても涼しい顔、汗一つかきません。最後は「お答えを差し控える」と言えば、間に合うからですかね。幾度も修羅場を経験すれば「あぁ、またいつものことか」で切り抜けるし、国政を握る権力者は、本来自分が対峙しなければならない巨大な相手(国民)は見えなくなるのです。
若い娘さんなんかが、スポーツでかいたみたいな汗は、ちょいと舐めてもよかろうと、思います(笑)。
おのが醜さでたらーりたらーりとかいた汗を煮詰めた油なんざぁ、そもそも薬効があるはずもなく、うっかりつけようものなら、その毒が全身に回って「馬鹿」になりますな。
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