植物園「 槐松亭 」

バラと蘭とその他もろもろの植物に囲まれ、野鳥と甲斐犬すみれと暮らす

子供が可愛かったら旅をさせなさい

2020年05月25日 | 植物
「植物はいじめて育てるもんだぁ」、隣家の90歳になるおばあさんのお言葉であります。家内も、薔薇でも草花もどんどん剪定しなきゃと言います。
過酷な環境で育て、植物にいつも危機感を持たせることが、植物を健康に大きく育て、花を咲かせる秘訣です。

 例えば薔薇、まだバラの栽培を始めて間もないころ、7年ほど前になりますが。「アイスバーグ(殿堂入り)」と「ベビーロマンチカ」他一鉢(名前が思い出せない)の一年苗を日当たりがいい廊下に置いて育てたことがありました。5月になると、うっとりするような美しい花を咲かせてくれました。なにしろ、まったく雨が当たらないので病気はありません。花も葉っぱもシミ一つない綺麗な姿です。害虫は一切寄せ付けず、液肥をたっぷり与え、暖かい室内で何不自由無く育ったのでした。いいとこのお嬢さん、深窓の令嬢でしょうか。

 その秋に、さすがに大きくなって鉢も窮屈になったので、庭に地植えしたのです。アイスバーグは日陰に強いといわれるつる性のバラ、ベビーロマンチカは、あまり大きくならず、花は中輪ながら屈指の花もちの良さがあります。
 ところが、その翌年以降、毎年花が少なく小さいのです。ベビーロマンチカは、沢山ついた蕾が開花しないままに干からびることが続きました。アイスバーグもひ弱でツルが細く、いまだに一向に世界殿堂入りの片鱗が見えません。もう一つの苗は枯れてしまいました。

 今まで60鉢以上のバラを育てていますが、1年室内に置いた3鉢だけが元気がないのは原因があると思います。それは「過保護」です。たっぷりの栄養と水分を与えられ、冬の寒さを逃れぬくぬくと育ったために、根が楽を覚えひ弱な体質になったのでしょう。
 薔薇は、接ぎ木の1年苗でも、根張りが少なく、体力がないので、いきなり屋外で地植えすると、病気や水切れ・アクシデントなどで枯れることもあります。ですから、出来るだけ最初の1シーズンは鉢で管理するようにしています。この時期に少しいじめておくのが大事なのです。例えば水遣りは鉢底からあふれるくらいにして、しばらくは、乾燥させるまでやらないとかです。なかには屋上に1年置くこともありますね。暑さと寒さ、乾燥と強風という過酷な条件下で枯れないようにしておくのです。当然葉も花も、乾燥と強風に痛んで年中ボロボロになります。茎などは固く締まってきます。

 それを、地植えすると見違えたように急激に生長します。つるバラ「ブラックティー」はそんな扱いをして地植え2年ですが、沢山の大輪の花を付けました。どんどんシュートを伸ばして堂々とした修景薔薇になりました。
 屋上では、小さな花を数輪咲かせただけで耐えていたのです。

 人間も同じです。子供の成長のために厳しくあたるのがいいと教わりました。過保護が、子供をモンスターになったり引きこもりになったりする原因だと思います。何不自由なく育った有名人やお金持ちの子供が、身を持ち崩す・道を誤るというのは世間の常でありますな。
 政治家の資質の低下、政治の退廃が顕著です。特に政府与党は、2世3世ばかりが目立ちますが世襲議員がゴロゴロいることと、深い関係があるように思いますね。

 若い頃勤務する会社に、親が会社経営者とか地元の名士の子息が就職していました。自分の会社の跡継ぎなのですが、わざわざ金融機関に就職させて世間の厳しさを学ばせようという意図に思えました。ほとんどの方々は、非常に優秀で真面目でした。やはり、ちゃんとした実業家たる親御さんの見識・後継者育成に対する真摯さの表れでしょう。

 ワタシは、残念ながら3人の息子に譲るべき稼業もありません。子供たちは、さっさと学校を卒業し、自分で就職先をみつけ遠方に行って独立しています。家にいる方が、かえって居心地が悪い環境であったのかもしれませんが。

 そんなことを考えながら、草花ガラを摘み、咲き終わりのバラの5枚葉の上で切り落とすという地道な作業をいたしましょう。次の花を咲かせるために。

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