美津島明編集「直言の宴」

政治・経済・思想・文化全般をカヴァーした言論を展開します。

藤井厳喜の四月・白熱教室のご報告(その1)(2019.04.14実施)

2019年04月18日 15時47分01秒 | 世界情勢


当方、2回目の参加です。今回は、午後1時半からラストまで正味4時間参加することができました。

例のごとく、話の内容を列挙します。

●冒頭に、アイヌ新法批判の急先鋒・砂川陣氏から、4月14日(日)の産経新聞のトップ記事「北海道以北〈領土外〉扱い 江戸初期地図、検定で修正」という見出しの記事への言及がありました。

当記事の内容は、次のようなものです。
「来年度から使用される小学校の教科書で、江戸時代初期の日本を赤く塗った地図が文部科学省の検定により、北海道以北を白くする修正が行われた結果、北方領土を固有の領土とする政府見解と矛盾しかねない内容になっていることが13日、分かった。教科書で学んだ子供たちに、北海道以北が日本ではないかのような印象を与えることになり、波紋を呼びそうだ。」

これ自体、大きな問題ではありますが、砂澤氏は、文科省のこの動きに、4月11日に衆議院を通過したアイヌ施策推進法案いわゆるアイヌ新法の影響があるのではなかろうかと述べています。同法において、アイヌ人は「先住民族」と規定されています(この法的規定それ自体、大いに問題があるのですが、それについてはちょっと後で触れます)。

砂川氏によれば、今回の文科省の検定には、同法の影響があるとの由。つまり(私なりに言葉を補えば)「北海道はアイヌ固有の土地」というメタ・メッセージが子どもたちを洗脳することになる、ということでしょう。アイヌ新法の恐ろしさ・たちの悪さをあらためて感じました。まことに問題の多い法案です。

ちなみに砂澤氏は、アイヌ人の血を引く人物です。そういう存在として、①純粋なアイヌ人は最早消滅しており、実際に存在するのは、アイヌの血をひく日本人でしかないこと、つまり実態としての「アイヌ問題」などない、言い換えれば、「先住民族」としてのアイヌ人などいないこと②アイヌ系組織を他の反差別組織や反日団体が「利権ビジネス」として利用していること、⓷アイヌのための様々な予算が、不正に支出されている事例があまりに多いこと、などを主張し、反アイヌ新法の論陣を張っている方です。

以下、藤井氏のお話です。

●米中戦争の本質は覇権戦争である以上、その長期化が予想される。この戦争は、決着がつくまで続行されるのである。それゆえ、日本経済への本格的な影響はこれから。

その点注目すべきは、ECRA(エクラ)とFIRRMA(ファーマ)である。ECRAはExport Control Reform Actの略で「米国輸出管理改革法」と、FIRRMAはForeign Investment Risk Review Modernizationの略で「外国投資リスク審査現代化法」とそれぞれ訳されている。

ECRAは、ハイテク製品とハイテク技術そのものをチャイナのような敵対国に輸出するのを禁止する法案。同法には、武器輸出に関するより厳格な見直しも含まれており、五月中旬から施行されることになっている。

なお上記の「ハイテク技術」は、バイオテクノロジー・AI(機械学習)・測位技術・マイクロプロセッサ―・先進コンピューティング・データ分析・量子情報および量子センシング技術・輸送関連技術・付加製造技術(3Dプリンタなど)・ロボティクス・ブレインコンピュータインターフェース・極超音速・先端材料・先進セキュリティ技術の14分野から成る。

注意すべきは、ECRAによる輸出規制の対象は、アメリカ企業のみならず日本を含む外国企業にも及ぶこと。

また、日本企業がチャイナ関連組織や関連企業と共同技術開発をしたり、チャイナ国籍の人物を取締役として受け入れたりしている場合、特別に厳格な審査の対象となる。

このようにECRAには、アメリカを中心とする友好国の製造業のサプライチェーンからチャイナを排除する狙いがある。

FIRRMAは、2018年8月に米国で成立した法律で、外国企業による対米投資をより厳格に審査するのがその法的趣旨である。同法により、米国が安全保障を理由に外国企業による自国企業のM&Aなどを監視する対米外国投資委員会(CFIUS)の権限が強化されることになる。

同法で導入されたパイロット・プログラム(暫定規則)では、諸外国の企業などが米国の航空機軍事・原子力・半導体・コンピューター・通信機器・バイオテクノロジーなど27業種へ投資する場合、対米外国投資委員会(CFIUS)に事前申告することが義務付けられている。

また規制対象には、米国人の個人データに関わる投資や、米軍や政府施設近隣の土地取得などへの投資も含まれる。

ECRAとFIRRMAは、要するに「国防権限法2019」の法的具体化である。これらが同権限法の2本の柱なのである。

「国防権限法2019」にはほかに、米国の軍政府調達におけるチャイナ企業の通信ハイテク機器の全面的な購入禁止が第3の柱としてある。そこで、ファーウェイやZTEの排除が規定されている。

私たち日本人は、2018年10月4日のペンス副大統領演説は事実上の対中宣戦布告であったことを理解しなければならない。その布告の具体化が、ECRAやFIRRMAなのである。米国の対中観は10.4に性善説から性悪説に180度転換したのだ。

この決定的な事実に対する日本の政財界の反応は極めて鈍い。というよりむしろ、米国の攻勢に困り果てたチャイナに助け舟を出し、漁夫の利を得ようとする愚行が目立つ。

昨年10月下旬の訪中で、安倍政権は3兆4000億円にのぼる円と元の通貨スワップを約束した。これは、ドル不足という、チャイナの通貨体制の根幹を揺るがす事態に対して、日本政府が助け舟を出したことを意味する。トランプ大統領からすれば、敵に塩を送る振る舞いにほかならない。つまり日本政府は利敵行為に走った、ととられても致し方のない愚行を演じたのである。

また、4月15日の日経電子版によれば、トヨタ・日立・京セラ・ダイキン・みずほ銀行・伊藤忠という日本の大手企業がチャイナの新興企業との連携を相次いで発表している。アメリカに「どうぞ制裁してください」とお願いしているようなものである。

世界情勢の読み誤りは、間違った、愚かな経営判断を導くことの「好例」である。 (次回に続く)


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