戦後東大総長になった南原繁は、開戦の日(80年前の今日)に次のような短歌を詠む。
人間の常識を超え 学識を超えておこれり 日本 世界と戦ふ
加藤陽子東大教授は、この短歌の意味するところを次のように解説する。
人間の常識を超えて、学問から導かれる判断をも超えて戦争は起こされた、日本は世界を敵としてしまった、との嘆きです。
当時のアメリカと日本の国力の差は、
国民総生産では12倍、鋼材は17倍、自動車保有台数は160倍、石油は721倍あった。
これだけの差があれば普通は「戦争などやめておこう」となる。
しかし、当時の指導者たちは、こうした絶対的な差を克服するのが「大和魂」だとしたのだ。
国民をまとめるには「危機を扇動」する方が良いと判断したのだ。
似たようなことをかっての安倍政権は、「ミサイルが北朝鮮から飛んでくる」と称して衆院の解散を行った。
岸田首相はハト派の宏池会系だが、タカ派系の安倍・高市に引きずられ「愚かな振舞をするのではないか」と懸念している。
「敵基地攻撃能力の保有」とか「防衛費大幅増額」を言い始めた。
ハト派がサギ派に化けることほど危険なことはない。
安部・菅政権で何ら明確な説明もなしに「日本学術会議」の新会員に6名を除外した。
この問題の決着はまだついていない。
「学問の自由・独立」を侵す行為は断じて阻止すべきであろう。
冒頭に記した加藤陽子教授も排除された6名のうちの一人だが、優れた学者である。
近代日本の軍事や外交の歴史を主に研究し、2010年の著書「それでも、日本人は戦争を選んだ」で、優れた評論やエッセーに贈られる小林秀雄賞を受賞した。
「根拠なき楽観論」をもとに、80年前の同じ過ちを繰り返してはならない。
怪しい兆候が出てきたら早い段階で消し止めることが必要だ。
その意味で「危機を扇動する勢力」を抑え込むべきなのだ。