行雲流水の如くに

権力とメディアとの間合いを考えるーー「新聞記者」を視て

BS12で映画「新聞記者」の放映があった。

2年ほど前に話題になり、確か日本アカデミー賞も取ったはずだと思い視ることに。

内閣情報調査室という権力、その中で働く若き官僚(松坂桃李)、そして若き女性新聞記者(シム・ウンギョン)という絡みで話が進展していく。

 

2年前の制作ということだが、この時の安倍政権はメディアへの締め付けを専らにしていた。

明らかに政権批判ともとれる筋書きに、勇気を出して挑戦した制作陣と俳優たちに賛辞を送りたい。

是枝裕和監督の言、

「これは新聞記者という職業についての映画ではない。人が、この時代に、保身を超えて持つべき矜持についての映画だ」

まさに的を射た批評である。

 

松坂桃李とシム・ウンギョンの若い二人が、内面の葛藤・苦悩を抱えながらも何が正義かを求める、いわゆる「矜持」が、こちら側にも十分に伝わってきた。

階級的に弱いあるいは下位の者が、上位者に対して矜持を以て立ち向かうスタイルは、藤沢周平原作、山田洋二監督作品によくみられる。

「たそがれ清兵衛」や「隠し剣鬼の爪」など。

 

権力を握ったものは、陰に日に国民を一定の方向に誘導しようとする。

その方向に間違いがなければ問題ないのだが、嘘で塗り固めて誘導しようとすることがある。

そんな時にメディアは猛然と権力に立ち向かわなければならない。

WATCH DOG--吠える犬ーー権力の監視人であらねばならない。

一部の評論家や言論人に、エサをねだって権力にすり寄る犬もいるから要注意だ。


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