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書評:雪村花菜著、『紅霞後宮物語 第十幕』(富士見L文庫)

2019年06月14日 | 書評ー小説:作者ヤ・ラ・ワ行


今月はかなり忙しいにもかかわらず、出たばかりの『紅霞後宮物語』最新刊をさっそく読んでしまいました。まあ、ラノベなので完読するのにたいして時間はとられませんが。

さて、第二部の2冊目となったこの第十幕はこれまで皇族と管理の橋渡し役をしていた尚書が引退するため、茹王という皇族を宮廷に迎えることになり、彼の立場を確かなものにするために彼の娘を後宮入りさせることになります。本当は姉の嫡女が形式的に後宮入りする筈でしたが、彼女は元々体が弱く、後宮入りする前に風邪をこじらせてなくなってしまい、彼女の代わりに庶子の妹・娥が後宮入りすることになります。この茹仙娥が率直に後宮の役割は皇統を残すことであるとして皇帝のお渡りを要求したため、後宮での台風の目となり、皇后・関小玉を悩ますことになります。

皇帝・文林はこの「一応」皇族であるとはいえ庶出ある茹仙娥のところに通うと、れっきとした皇族で妃としての位も皇后に告ぐ貴妃紅燕のもとにはなぜ通わないと不満が出る羽目になるので行かないと断言したにもかかわらず、小玉たちが静養のために後宮を出る前日に茹仙娥が懐妊したことが明るみに出ます。

その他裏でい隣国でもろいろな陰謀が渦巻いており、いよいよ緊張が高まってきました。次巻が楽しみです。

これまで小玉の武官としての活躍や彼女に心酔する取り巻きに話の焦点があったのに対して、第2部はより大きな視点から見た小玉の描写が多くなってくるため、彼女の拙さが際立ってくるきらいがありますが、彼女の40過ぎの悩みとねじくれた文林に対する情、そして皇后としての責務を果たそうとする義務感との狭間で揺れる彼女は実に人間らしいと言えます。

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