詩と写真 *ミオ*

歩きながらちょっとした考えごとをするのが好きです。
日々に空いたポケットのような。そんな記録。

身を委ねよう

2016年03月24日 | 
身を委ねよう
いま、初めてのように

街から光は消えていき
人工の灯りばかり
厳かに呼吸を始めるこの時に

シートにもたれ
蛸が墨を吹くように
順番に発火していく四気筒の力に
押し出されるように身を委ねて
列車の連なる光と競争し
タバコの匂いにまみれ
ジャンパーのポケットに両手を突っ込んで
自分の感情の名が失意だとも知らずに
夜の匂いを嗅いでいる獣のように尖った男が
煙と入れ違いに入っていくネオン鮮やかな
高架下ゲームセンターを追い越して
トウモロコシの粒のように
蛍光灯が整列するマンションを遠く旋回して
力を抜いて
流れ行くままに

わたしも自分の感情の名が
失意だったり期待だったり
恐れだったり安穏だったり
することをほんとうには知らない

世界にかけてしまうフィルターを
剥がそうと躍起になるのはやめました
無理矢理外から剥がされずにすむように
自分から剥がそうと躍起になるのはやめました
そうやって守るのはやめました
そのままにしておくこと
この世に生を受けてから
育んできたぬるいゼリーのような
フィルターそのままで
触れてしまうこと
それこそがなまであることに気が付いたから
きっとものすごく驚くだろう
きっとものすごく怖いだろう
きっとものすごくグロテスク
そしてものすごく美しい
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