詩と写真 *ミオ*

歩きながらちょっとした考えごとをするのが好きです。
日々に空いたポケットのような。そんな記録。

余韻

2016年01月16日 | 
電車がいろんな景色を過ぎていくように。
異なる好みを語っている靴たちが
かたかたかたと向き合い方を様々にして
立ち止まりしばしまどろむ林の間
目を閉じ
音楽を聴いていました
暗がりで伸びてくる蔓がありました
知り合いが次々と白い靄の中を駆けてきて
廃墟のように
言葉や表情に隠してどこかに触れた
そんな顔を見せて
次々通り過ぎていきました
これは一体なにかしら
それはもう、記憶でもなく
神経細胞を伝わる電気信号

小さなアパートの一室で
友人がふくらはぎをひらいて立ち上がり
隣の部屋へ行くと舞台のような
横幅広くしっかりとした木造の階段が現れ
家は立派な古い邸宅になっていました
階段に並行して段々になっている窓から
光が角をまるくするほどに入り
その明るい階段を
何か決意をしていくみたいに登っていく夢が
互い違いの感情を鮮やかに弾(はじ)くゴムを
朝に過剰なほど後ろへひっぱったこと
なんとなく気が付いていました
洗顔や朝食、着替えや化粧でも
冷えることのない静かな沸騰が
底の方でぐつぐつぐつぐつしていました

次の電車では座れず
ぼんやりと外を見ていました
晩秋の銀杏が灰色の空に映えていました
窓が空を敬い超然と整列して
見つめ返しているのを
私も瞳に映し
憧れをこめて見つめ返しました

電車の音や話し声が
ふいに耳に入ってきて
イヤホンを外してからずっと
無音を聴いていたことに気が付きました
気が付いてみると
さらにはっきりと
その響きが聞えました
透明なフードを透明な誰かが
ゆっくりとかぶせていってくれたように
くるまれているように
無音の響きが

さきほどまでショパンのバラードを聴いていて
黒いスーツに戸惑いと躊躇を隠しながら
それを弾いた青年
花にぐるりと囲まれた
ショパンの墓の写真を見せてくれた
その青年を思い出していて
音楽はやんでいたのに
音楽はずっと鳴り響いていたからです
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 写経に行く!の巻 | トップ | ノートの行く先 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

」カテゴリの最新記事