詩と写真 *ミオ*

歩きながらちょっとした考えごとをするのが好きです。
日々に空いたポケットのような。そんな記録。

夜のバス

2015年08月10日 | 
見知らぬ街でバスに乗った
梢のずっと向こうに
かなしい女の人のような
煌々と輝く月が出ていた
座席はいっぱいになり
バスは出発した
空は青から黒へすべりこんだ

これから終点まで乗っていく
何もないところへ行く
教えられたことを
胸の中で反すうする

ひた走っていく大通りは脊柱で
窓側のわたしは
背骨のように横に伸びる通りを
ひとつひとつ見送る
白い街灯が遠近法で
ずっと奥まで続いている

祖父母が生きていた頃
縁日のあった夜
みんなでそぞろ歩きしたのは
もうはるか昔のこと
数字で思うよりもずっと

停留所にとまるたび
人が暗がりの中へ消えていく
残っている乗客をひとゆすりして
バスは出発する

座っている人たちの頭を眺めて
窓外にまた視線を戻せば
暗い街道を
むやみに白く光った箱が走り抜けていく
懐かしい懐かしい
この未知な感じが懐かしい

眠っているような
死んでいるような
寡黙な人々を乗せた白い箱が
過去を通り抜けていく
わたしも生の間をすり抜けていく
幻みたいなものかもしれない
蛍を見にいく
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« わたしを代表してお礼を言います | トップ | そらがひろいせい »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

」カテゴリの最新記事