詩と写真 *ミオ*

歩きながらちょっとした考えごとをするのが好きです。
日々に空いたポケットのような。そんな記録。

暗躍

2019年04月28日 | 
カーブミラーが光り
車の音がナイフのように街をすべる頃

システムキッチンのつるりとした台に
システム化されていないおぼろ豆腐のような浮きの数々
本日の冷蔵庫から取り出して泡立てるのをやめ
ため息をひとつつく

インスタントコーヒーの顆粒が温めたミルクの中に
一匹の豹を描く
スプーンのひとまわしで斑紋が大きく伸びをする
黄土色に溶け去る
おまじない
マグカップに人差し指を通し
テーブルにはかもめのように本が並んでいる

水面をくぐる影のように
字面にもぐり
文字にまみれる

言葉たちのでこぼこに激しく触れて
地下に隠れた記憶たちが熱心な天体観測を始める
光る星々をその運動ごと我が物にしようと躍起になる
タイトルで共有されているぬくもりも
痛みながら保管があったようだ
いっせいに呟きがもれ出す

耳なし芳一のように
書かれなかった部位にまで
血が通い、脈打ち、高鳴っている

「ごらん、あれが海底に沈んだ都市だよ。」
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