先輩からタイトルのとおりのお叱りを受けつつも強引に推し進めるこの企画。
この小説は「とあるデザイナー」さんの視点から語られ始めます。
実は皆さんの知らないパラレルワールドが舞台であり、それは決してコチラ側と交わることのない世界のお話です。
信じるも信じないも皆さんの自由。
それでは今夜の「添い寝物語」始まり始まり~~
_____________________________________________________
1.洗濯船航海日誌
・三十路少年漂流記?
僕がこの船に乗ってどれくらい経つだろう?
あれは梅雨の始まりの頃だったから、既に4か月は経過しているはずだ。
この間、僕は一つ年を取った。
そもそも僕がこんな馬鹿げた船に乗る羽目になったのは、友人の勧めで『ある男』に会ったからだった。
『酒宴をこよなく愉しむ会』
そう、そんな名前の会に参加したのが始まりだった。
その頃の僕は、小さなボートで広い大海原の只中、航路を見失い途方に暮れながらも、その日その日を全力で櫓を漕いでいた。
そんな時だった。
偶然、本当に偶然なのだが、どこかの海のど真ん中にもかかわらず、僕の携帯電話が鳴ったのだ!
携帯電話の存在すら忘れかけていた僕は、それが非常食と一緒のリュックの中にあるのを思い出すのに手間取ってしまった。
留守電に切り替わり、友人が手短にメッセージを残し、電話を切る直前、
「もしもし!?」
ギリギリ間に合ったのだ。
「あっ、繋がった!?お前、今どこ?」
かつて、とある資格を受験した際の恩師であり、今となっては少し年上の友人の小野氏からだった。
「えっと・・・、たぶんどこかの海だと思うんですけど・・・」
正直、これ以上説明できなかった。
「ひゃははは、相変わらず面白いな、お前!」
陽気な声が、自分が置かれた状況を軽くしてくれる気がした。
「それより、どうしたんですか?」
彼とは受験以来、時折だが、どちらともなく連絡を取り合ってきた。
考えてみれば最後の連絡から既に2週間は経っていた。
いつもなら電話の一本もあって良い頃ではあった。
「いやさぁ~、ちょっと面白い人が居てさ、ひょっとするとお前の役に立つかもしれないと思ったんだけど、会ってみる?」
茶目っ気たっぷりの彼の口ぶりからして、「絶対、役に立つから会えよ!!」と言う彼の心の声が聞こえた気がした。
「はぁ、それは小野先生が言う人なら会ってみたい気もしますけど、ちょっと今はどうかなぁ?」
気持ちは嬉しかったが、自分の置かれた状況からすると約束を守れそうになかったので、思わず言葉を濁してしまった。
「そう?会いたい?じゃあ、大丈夫。きっと向うからお前を迎えに行くから!」
「いや、それはちょっと無理っぽい、かなぁ?」
「ははは、大丈夫、大丈夫!あの人はそういうの得意だから!じゃあ、あっちにも連絡しとくわ!!」
一方的に言い終わると僕の返事も聞かずに電話を切ってしまった。
すぐにかけ直そうと思ったが、こともあろうか「圏外」になっていた。
「そういうの得意」って言われても、本当に小野先生はこっちの状況を理解しているのか甚だ疑わしかった。
結局、数週間ぶりの人間との会話はそれっきりだった。
夕焼け空をV字編隊の鳥の一群が飛んでゆくのが見える頃、すっかり櫓を漕ぐのに疲れ果てた僕は、ゆっくりと体を横たえた。
いつになく波は穏やかで、いつものようにしつこく纏わりついてくる湿気も感じられず、静かに夜の冷気が船底で横たわる火照った僕を包んでくれた。
僕はいつの間にか、深い眠りに落ちていった。
どれくらい経ったのだろう。
さっきまで静かだった海がにわかにざわつき始めた。
不規則に揺れる小舟の周りで、波が徐々に激しさを増しながら弾けてゆく。
疲れ切った体とはいえ、さすがに何事もなかったかのように寝過すには無理があった。
渋々、小舟の縁に腕を這わせ、重い上半身を引き寄せるように起き上がる。
漆黒の闇と満天の星空、だけのはずだったが、微かにオレンジ色の光が海上を揺らめいているような気がした。
それはほどなく確信に変わった!
一艘の船がこちらに近づいてくる!?
目を擦りながら緩い明かりの方を睨む。
思ったより早い速度でこちらへやって来る。
と言うよりも、思ったより小さな船がすぐそばまで来ていただけだったことに気が付いた!
僕のボートよりは全然立派だが、何だかボロッちい感じがした。
このままだと僕のボートは正面衝突するはずなのだが、向こうにはこちらの存在が分かっているという、根拠のない自信があったので不思議と焦りも恐怖も感じなかった。
この小説は「とあるデザイナー」さんの視点から語られ始めます。
実は皆さんの知らないパラレルワールドが舞台であり、それは決してコチラ側と交わることのない世界のお話です。
信じるも信じないも皆さんの自由。
それでは今夜の「添い寝物語」始まり始まり~~
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1.洗濯船航海日誌
・三十路少年漂流記?
僕がこの船に乗ってどれくらい経つだろう?
あれは梅雨の始まりの頃だったから、既に4か月は経過しているはずだ。
この間、僕は一つ年を取った。
そもそも僕がこんな馬鹿げた船に乗る羽目になったのは、友人の勧めで『ある男』に会ったからだった。
『酒宴をこよなく愉しむ会』
そう、そんな名前の会に参加したのが始まりだった。
その頃の僕は、小さなボートで広い大海原の只中、航路を見失い途方に暮れながらも、その日その日を全力で櫓を漕いでいた。
そんな時だった。
偶然、本当に偶然なのだが、どこかの海のど真ん中にもかかわらず、僕の携帯電話が鳴ったのだ!
携帯電話の存在すら忘れかけていた僕は、それが非常食と一緒のリュックの中にあるのを思い出すのに手間取ってしまった。
留守電に切り替わり、友人が手短にメッセージを残し、電話を切る直前、
「もしもし!?」
ギリギリ間に合ったのだ。
「あっ、繋がった!?お前、今どこ?」
かつて、とある資格を受験した際の恩師であり、今となっては少し年上の友人の小野氏からだった。
「えっと・・・、たぶんどこかの海だと思うんですけど・・・」
正直、これ以上説明できなかった。
「ひゃははは、相変わらず面白いな、お前!」
陽気な声が、自分が置かれた状況を軽くしてくれる気がした。
「それより、どうしたんですか?」
彼とは受験以来、時折だが、どちらともなく連絡を取り合ってきた。
考えてみれば最後の連絡から既に2週間は経っていた。
いつもなら電話の一本もあって良い頃ではあった。
「いやさぁ~、ちょっと面白い人が居てさ、ひょっとするとお前の役に立つかもしれないと思ったんだけど、会ってみる?」
茶目っ気たっぷりの彼の口ぶりからして、「絶対、役に立つから会えよ!!」と言う彼の心の声が聞こえた気がした。
「はぁ、それは小野先生が言う人なら会ってみたい気もしますけど、ちょっと今はどうかなぁ?」
気持ちは嬉しかったが、自分の置かれた状況からすると約束を守れそうになかったので、思わず言葉を濁してしまった。
「そう?会いたい?じゃあ、大丈夫。きっと向うからお前を迎えに行くから!」
「いや、それはちょっと無理っぽい、かなぁ?」
「ははは、大丈夫、大丈夫!あの人はそういうの得意だから!じゃあ、あっちにも連絡しとくわ!!」
一方的に言い終わると僕の返事も聞かずに電話を切ってしまった。
すぐにかけ直そうと思ったが、こともあろうか「圏外」になっていた。
「そういうの得意」って言われても、本当に小野先生はこっちの状況を理解しているのか甚だ疑わしかった。
結局、数週間ぶりの人間との会話はそれっきりだった。
夕焼け空をV字編隊の鳥の一群が飛んでゆくのが見える頃、すっかり櫓を漕ぐのに疲れ果てた僕は、ゆっくりと体を横たえた。
いつになく波は穏やかで、いつものようにしつこく纏わりついてくる湿気も感じられず、静かに夜の冷気が船底で横たわる火照った僕を包んでくれた。
僕はいつの間にか、深い眠りに落ちていった。
どれくらい経ったのだろう。
さっきまで静かだった海がにわかにざわつき始めた。
不規則に揺れる小舟の周りで、波が徐々に激しさを増しながら弾けてゆく。
疲れ切った体とはいえ、さすがに何事もなかったかのように寝過すには無理があった。
渋々、小舟の縁に腕を這わせ、重い上半身を引き寄せるように起き上がる。
漆黒の闇と満天の星空、だけのはずだったが、微かにオレンジ色の光が海上を揺らめいているような気がした。
それはほどなく確信に変わった!
一艘の船がこちらに近づいてくる!?
目を擦りながら緩い明かりの方を睨む。
思ったより早い速度でこちらへやって来る。
と言うよりも、思ったより小さな船がすぐそばまで来ていただけだったことに気が付いた!
僕のボートよりは全然立派だが、何だかボロッちい感じがした。
このままだと僕のボートは正面衝突するはずなのだが、向こうにはこちらの存在が分かっているという、根拠のない自信があったので不思議と焦りも恐怖も感じなかった。