MIRO ITO発メディア=アート+メッセージ "The Medium is the message"

写真・映像作家、著述家、本物の日本遺産イニシアティブ+メディアアートリーグ代表。日本の1400年の精神文化を世界発信

2012.3.2 (金) 19:00~ 伊藤みろ「写真ごごろ」を語る講演会開催(八重洲ブックセンター8F)

2012-02-07 00:18:23 | Weblog
『極意で学ぶ写真ごころ』刊行記念 伊藤みろ 講演会

「写真ごごろ」を語るトークイベント

 いまほど写真術が多くの人々に愛され、開かれた表現メディアとして、珠玉の宝石のような煌めきを放ちはじめた時代はないかもしれません。
 その鍵となるのが心です。
 実際、写真表現において、心ほど重要なものはなく、心のメディアとして写真術を語り尽くした同書は、「アサヒカメラ」誌で大反響を呼んだ連載をまとめたものです。
 写真の哲学と奥義を語りながら、国際水準の技法を伝授し、「つながり」「分かち合う」ためのメディアとして、写真術の未来を夢豊かに語ります。

■ テーマ:
「写真ごごろとは何か」というテーマについて、写真表現における創造的な視点や歴史、そして写真を撮る心構えにまで踏み込み、写真文化の精神論とその奥義を語ります。同時に、独米日の写真文化の第一線で活動してきた著者が究めた、写真技法の「極意」を解き明かします。
※「色温度」「あおり」はじめ、「フィルターの活用」「日中シンクロ」など、著者だからこそ語れる「国際水準」の実践テクニックを伝授します。
※トーク終了後、ご希望のお客様にサイン会を行います。

■ 開催日時:
 3月2日(金) 19:00~20:00 (18:30開場) ※20:00よりサイン会

■ 開催場所:
 八重洲ブックセンター本店 8階ギャラリー
(〒104-0028 東京都中央区八重洲2-5-1)

■ 定員(整理券枚数):80名 ※定員になり次第、締め切らせていただきます。

■ 参加費:無料

■ 申込方法:
 お電話による申込み 八重洲ブックセンター 1階 電話番号: 03-3281-8201
 もしくは、店内備え付けの申込書に必要事項を明記の上、1階レファレンスコーナーにて申し込み

■ 主催:八重洲ブックセンター

■ 共催:フィルムアート社

■ 『極意で学ぶ写真ごころ』(フィルムアート社)関連サイト
フィルムアート社:http://www.filmart.co.jp/cat138/post_157.php

 伊藤みろ情報サイト:http://miroito.exblog.jp/

 伊藤みろ公式サイト: http://www.miroito.com


 皆様のご来場を心よりお待ちしております。

 伊藤みろ メディアアートリーグ

 2012年2月吉日

人々こころごころの花:「心の器」としての能 (伊藤みろ Miro Ito)

2012-01-09 10:48:01 | 伝統芸能
人々こころごころの花

 新年あけましておめでとうございます。

 悲しみに溢れた2011年が過ぎ去り、新しい年が始まりました。

 日本の悲しみが世界の悲しみともなった昨年、皆が苦しみを分かち合い、克服していこうという気持ちが広がりました。重い苦しみも、尽きぬ悲しみも皆で乗り越えていこう、という暖かな連帯の輪が広がりました。
 反面、すべてははかなく脆く、常ならぬもの、失われていくものであることに気づかされた一年でした。
 自然に対して謙虚になり、生かされていることに感謝を感じた年だったのではないでしょうか。
 こうした悲しみの果てには、大いなる恵がやってくることを信じたい年明けです。

 さて、「アサヒカメラ」新年号(2012年1月号)に、「能」を撮った作品を10ページで発表いたしました。NYリンカーンセンターでの個展『Men at Dance:from Noh to Butoh』のために、シテ方金春流 金春穂高氏、観世流 武田志房(ゆきふさ)氏、武田友志(ともゆき)氏、武田文志(ふみゆき)氏にご協力いただき、スタジオで撮りおろした作品です。

 翁は、天下泰平の祈祷の舞いとして、新年に舞われます。
 金春流・金春穂高氏が世の安寧への願いを込めて、空を舞台に演じる翁は、咒師猿楽の流れを組む興福寺春日大社の薪能での「咒師(しゅし)走りの儀」の翁です。また世界共通の伝説である「羽衣」を舞っていただきました。
 一方、松の永遠性と夫婦和合を詠う「高砂」を観世流・武田志房氏に演じていだき、武田友志氏には天照大神(「絵馬」)を舞っていただきました。
 NYで「9.11」を体験した私は、世界の平和を願い、能に流れるこうした神々の「おめでたさ」をテーマにしています。
 
 また能における悟りを目指すこころの道も、大切なテーマです。
 武田文志氏には、敵と味方が生死を越えて、仏縁で友となる「敦盛」を演じていただきました。

 能には、人間世界の尽きぬ悲しみや重い苦しみが溢れています。
人間の心の様のすべてを語り尽くすのが能ならば、またそれを浄化し、救済するのも能です。
 
 こうした「心の器」のような能では、極限にまで抑制された役者の動きから、人の内面世界を象徴させます。
 抑制が効いているからこそ、その所作の一つ一つから滲み出る感情の深さと重さに感動を覚えます。

 能とは世阿弥のいうように「人々(にんにん)こころごごろの花」として、人の心の中で咲く花なのです。
 同時に想像力を仏や神々の世界へも飛翔させる、世界最高峰の象徴劇といえます。

 能について多くを教えてくださり、撮影にご協力くださった武田志房氏、友志氏、文志氏、金春穂高氏に改めて深く感謝いたしつつ、能の象徴される日本文化の伝統の重みへの感謝を込めさせていただきました。
 
 幸多き新年への願いをこめ、2012年が皆様にとってどうか素晴らしい一年となりますよう、ご祈念申し上げます。

 本年も引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

 2012年1月吉日

 伊藤みろ メディアアートリーグ

 写真:「翁」シテ方 金春流 金春穂高 
 撮影:伊藤みろ
 撮影協力:イイノ・メディアプロ
 Photo & Text by Miro Ito/Media Art League. All rights reserved.

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★好評発売中 [ 写真教本&エッセイ ]
書名: 極意で学ぶ写真ごころ
著者: 伊藤みろ
出版社: フィルムアート社  
http://www.filmart.co.jp
定価: 2,400 円+税 ISBN 978-4-8459-1180-6
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★好評発売中 [ フォトエッセイ ]
書名: 心のすみか奈良 いのちの根源なるものとの出合い
古寺・古社・古儀に学ぶ「いかに生きるべきか」のメッセージ
著者: 伊藤みろ(写真・文)
企画・編集: メディアアートリーグ
出版社: 武田ランダムハウスジャパン 
定価: 2,000円(本体1,905円)ISBN: 978-4-270-00564-4
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[伊藤みろ公式サイト]
http://www.miroito.com

記事、写真の無断転載を禁じます。
Copyright (c) 2012 Miro Ito + Media Art League.

「アサヒカメラ」新年号(2012年1月号)にて「能」を撮った作品を10頁で発表 by 伊藤みろ (Miro Ito)

2011-12-23 11:41:34 | Weblog
 12月20日発売の「アサヒカメラ」新年号(2012年1月号)に、「能」を撮った作品を10ページで発表しています。
 シテ方金春流 金春穂高氏、観世流 武田志房(ゆきふさ)氏、武田友志(ともゆき)氏、武田文志(ふみゆき)氏をスタジオで撮りおろした作品です。

 曲は「翁」「羽衣」「絵馬」「敦盛」「高砂」です。
 
 翁は、天下泰平の祈祷の舞いとして、新年に舞われます。
 金春流・金春穂高氏が世の安寧への願いを込めて、空を舞台に演じる翁は、咒師猿楽の流れを組む興福寺春日大社の薪能での「咒師(しゅし)走りの儀」の翁です。また世界共通の伝説である「羽衣」を舞っていただきました。

 一方、松の永遠性と夫婦和合を詠う「高砂」を観世流・武田志房氏に、武田友志氏には天照大神(「絵馬」)を舞っていただきました。

 NYで「9.11」を体験した私は、世界の平和を願い、能に流れるこうした神々の「おめでたさ」や、悟りを目指すこころの道を作品のテーマにしています。
 武田文志氏には、敵と味方が仏縁で友となる「敦盛」を演じていただきました。

 抑制のきいた動きから役者の深い感情が溢れでる能は、観る人の心の中で響き、人の心のあり様を発見する心理劇です。
 同時に想像力を仏や神々の世界へと飛翔させる世界最高峰の伝統芸能といえます。 
 
 さて「アサヒカメラ」といえば、同誌での連載『極意で学ぶ写真ごころ』がこのたび書籍になりました(フィルムアート社)。

 ドイツで写真家になった私にとって、日本文化はモダンアートの源流でもあります。
 東西文化の融合の極みから生まれる写真ごころを説きながら、「極意」の技法を開示しています。
 せひご高覧くださいませ。

 かしこ

 伊藤みろ メディアアートリーグ

 2011/12/23
 Photo & Text by Miro Ito/Media Art League. All rights reserved.
 Photo: Tomoyuki Takeda "Ema" by Miro Ito

 撮影協力:イイノメディアプロ
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「極意で学ぶ写真ごころ」伊藤みろ 著 / B5 判/
 予価 2,400 円+税/並製 オール4C / 152 頁/
 発刊:2011年11月30日 / ISBN 978-4-8459-1180-6
 発行元: 株式会社フィルムアート社  TEL: 03-5725-2001
 http://www.filmart.co.jp

  [フィルムアート社の情報サイト]
 http://www.filmart.co.jp/cat138/post_157.php#more

 [amazonで発売中]
 http://www.amazon.co.jp/極意で学ぶ写真ごころ-伊藤-みろ/dp/4845911809/ref=sr_1_1?ie=UTF8&qid=1322401804&sr=8-1

 [伊藤みろ 『極意で学ぶ写真ごころ』情報サイト]
 http://miroito.exblog.jp/

 公式サイト: http://www.miroito.com

写真ごころの極意論: 『極意で学ぶ写真ごころ』について (「アサヒカメラ」連載の書籍化)

2011-12-14 13:34:22 | Weblog
 このたび書籍として発刊しました『極意で学ぶ写真ごころ』(フィルムアート社)は、日本文化の「極意論」と絡めて、「写真ごころ」とは何かを考えるエッセイを冒頭に、「基本」でありながら、「極意」である実技を伝授する教本です。

 写真ごころとは、写真における表現をめざす態度であり、現実の先に永遠なるものを視ようとする思いのことですが、冒頭では「不射の射」を考えてみました。

「不射の射」といえば、「射らずして射る」という、まさに神業の世界です。
 大正時代の弓道の大家・阿波研造師範は、線香で照らしただけの暗闇の中で二本の弓矢を放ち、一本目は的の真ん中に命中。二本目は一本目の筈に当たり、一本目を引き裂いていた、という逸話があります。

 阿波師範は「それ(仏)が射た」と語りました(ドイツの哲学者のオイゲン・ヘリゲルの著作『弓と禅(日本の弓術)』より)が、「仏が射る」とはすなわち、仏と呼ぼうが神と呼ぼうが、宇宙本体の大本の力による業、という意味になるでしょうか。武道では、古来より中国の神仙術のごとき、こうした離れ技を伝えています。

 もとより、達人の世界は、常人の想像を絶する世界ですが、芸術の創造行為も、どこかこうした人智を越えた力の助けを得ています。万物に遍満し、すべてを貫通する宇宙の摂理が、人が本来もつ潜在的な力と創造的に結びついているのではないでしょうか。
 そこでは「撮る」「撮られる」の関係が溶け合っていきます。この一体感こそ、写真ごころの醍醐味です。

 いわゆる芸術のインスピレーションの源がどこかと考えると、それは自然の生命力だったり、さらに現実の時空の先に広がる次元(無意識)からの働きかけによるものです。
 詩人が万物から「声なき声」を聴くように、画家は見える世界を通して、その先にある「見えない世界」を視ようとします。
 私にとっては、絵も写真とは、自分の意識をそうしたより大きな世界に結びつける「こころの窓」の役割を果たしています。

「不射の射」とは、写真においては、「撮らずして撮ること」「視ずして視ること」と本書の冒頭で書きましたが、それを追体験することが難しいようでしたら、一心に何かに打ち込んでいる自分を想像してみてください。

「無我夢中」という喩えのとおり、音楽を演奏するとき、絵を描くとき、詩を綴るとき、踊りを舞うとき、スポーツで記録に挑んでいるとき…でも、何でもいいのです。その時に、我を忘れることで、音楽そのもの、絵そのもの、詩そのもののエネルギーに自分を投げ入れ、どこか「永遠なるもの」に繋がっていく感覚が得られれば、それが「写真ごころ」であり、「絵ごころ」「詩ごころ」の入り口となるのです。

 本書では、日本文化の極意論を語りながら「技」に託された精神性を、また「写真ごころ」について考えながら、芸術の中に宿された永遠性を、語ってみました。
 私の写真ごころのすべてを注ぎこみましたので、どうぞご愛読くださいませ。


伊藤みろ
2012年12月吉日

写真:足立美術館 池庭(『極意で学ぶ写真ごころ』 P.83掲載より)
Photo & Text by Miro Ito/Media Art League. All rights reserved.

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「極意で学ぶ写真ごころ」伊藤みろ 著 / B5 判/
予価 2,400 円+税/並製 オール4C / 152 頁/
発刊:2011年11月30日 / ISBN 978-4-8459-1180-6
発行元: 株式会社フィルムアート社  TEL: 03-5725-2001
http://www.filmart.co.jp

[フィルムアート社の情報サイト]
http://www.filmart.co.jp/cat138/post_157.php#more

[amazonで好評発売中]
http://www.amazon.co.jp/極意で学ぶ写真ごころ-伊藤-みろ/dp/4845911809/ref=sr_1_1?

[伊藤みろ 『極意で学ぶ写真ごころ』情報サイト]
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伊藤みろ 公式サイト: http://www.miroito.com

足立美術館公式サイト: http://www.adachi-museum.or.jp/ja/index.html

『極意で学ぶ写真ごころ』発刊のご案内  伊藤みろ by Miro Ito

2011-12-01 12:08:02 | Weblog
『極意で学ぶ写真ごころ』発刊のご案内  (著:伊藤みろ)

 アサヒカメラ誌で連載していた「極意で学ぶ写真ごころ」が11月30日、フィルムアート社から書籍として発刊になりました。

 ドイツ、アメリカをはじめ、世界の写真文化の第一線で学んで来た経験を一冊の本に託しました。

 この本では、「極意」を二つの範に求めています。
 一つは、能や剣、弓道などの技芸をはじめ、山水画や日本庭園などをテーマに、そこに秘められた極意を学びながら、写真表現に置き換える、日本の精神文化に学ぶ極意です。
 学ぶのは、形を超えた理(ことわり)です。

 日本の伝統文化の簡素さに宿る幽玄なる美の「形」を「表」とするなら、「裏」にはそれを支える「理」が常に張り合わさっています。その意味で、日本文化はまさに「極意」の文化といえるほどです。

 もうひとつは20世紀初頭の前衛運動であるモダンアートにおける表現上の挑戦。
 フォービズム、キュビズム、ダダ、表現主義を経て、新即物主義やシュールレアリスム、抽象芸術に至るまで、芸術表現が根本から塗り替えられるなか、ロシアンアヴァンギャルトやバウハウスで試された果敢な写真の実験をヒントに、写真技法を「写真道」として、捉え直してみました。
 
 こうした技法の「理」と「道」を実践しながら、その先に行き着くのは「写真ごころ」です。
 そして写真ごころとは、剣や弓道の極意のごとく、熟達とともに形を超え、万物の心と溶け合って一体となり「無我の境地」へと限りなく近づいていきます。

 「日本伝統文化」と「モダンアート」、一見相容れないように見える二つの範は、モダンアートの源流に日本の伝統文化を位置づけるとしたら、「陰陽」のようにかみ合ってくるのです。

 同書は、私自身の経験をもとに、東西文化の融合、その極意と精華とを考えながら、写真ごころとは何かを解き明かしていく技法書であり芸術エッセイです。

 連載中から、初心者から上級者、プロのカメラマンまで、幅広い層の方々にご愛読いただきましたが、書籍化にあたっては、内容や写真を更新し、魅力をさらにアップさせるよう努めました。

 普遍的に使える技法と知識の上に、写真表現の盲点をつく、知られざる極意を随所に披瀝しています。

 版元フィルムアート社の暖かな支援のもと、私の写真魂と写真ごころのすべてを、そしてアーティスト、美学研究家としてドイツやアメリカで学んだこと、考えたこと、感動したこと、作品やエッセイに込め、本として最高の形にまとめられたと自負しております。

 一人でも多くの方にお読みいただければ、本望です。

 どうぞよろしくお願いいたします。

 かしこ

 伊藤みろ メディアアートリーグ

 2011/12/1
 Photo & Text by Miro Ito/Media Art League. All rights reserved.

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「極意で学ぶ写真ごころ」伊藤みろ 著 / B5 判/
 予価 2,400 円+税/並製 オール4C / 152 頁/
 発刊:2011年11月30日 / ISBN 978-4-8459-1180-6
 発行元: 株式会社フィルムアート社  TEL: 03-5725-2001
 http://www.filmart.co.jp

  [フィルムアート社の情報サイト]
 http://www.filmart.co.jp/cat138/post_157.php#more

 [amazonで発売中]
 http://www.amazon.co.jp/極意で学ぶ写真ごころ-伊藤-みろ/dp/4845911809/ref=sr_1_1?ie=UTF8&qid=1322401804&sr=8-1

 [伊藤みろ 『極意で学ぶ写真ごころ』専用情報サイト]
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「伎楽 仮面の道」間もなく完成 ~ 東大寺ミュージアムオープン

2011-11-23 23:05:14 | Weblog
9.11から10年、そして震災から8ヶ月経ちましたが、世界の大激動のただ中にあって、私自身、自らの非力さと向き合いながら、被災地の慟哭から見えてくる未来の希望を信じながら、その気持ちをいかに作品に託していくか、という挑戦の日々が続いています。

10年経った「9.11」のメモリアルデーには、「9.11と3.11をつなぐ」気持ちを、作品に結実させたいという誓いを新たにしました。私はといえば、NYに思いを馳せながら、日本の1300年前にタイムトリップをしていました。

ちょうど9月から東大寺の伎楽面のショート作品を制作し始めました。
伎楽については、かつて故・野村万之丞さんが復元された「楽劇 真伎楽」とワシントンのスミソニアン・フォークライフ・フェスティバルで出合って以来、「伎楽」に託された時空を超えた意義を読み取り、映像として作品化することは夢の一つでした。

伎楽は、アジア最古の仮面劇といわれ、日本には1400年前に伝来し、聖徳太子によって奨励されました。奈良時代に全盛を極めましたが、平安末期に衰退し、江戸時代には滅びてしまいました。その起源や伝来については謎が多く、伎楽が果たしてどういった芸能だったのかを、チベットやブータン、インド舞踊や中東の騎馬民族の踊りなど、アジア諸国の芸能にまで遡り、楽劇として復元されたのが野村万之丞さんでした。

私は、昨年の平城京遷都1300年を記念して開いた個展「光の道:祈りと芸能のシルクロード」(Canon Expo Tokyo)のために、東大寺の伎楽面を撮らせていただき、展覧会の後、作品を東大寺に奉納いたしました。それがきっかけとなって、今回、東大寺伎楽面の写真と野村万之丞さんの真伎楽面ならびに「楽劇 真伎楽」の写真をもとに、「伎楽 仮面の道」という作品を制作し始めることになりました。間もなく完成しますので、12月から東大寺ミュージアムにてご覧いただけるかと思います。

さて先月の10月10日、東大寺初の宝物館となる東大寺ミュージアムがオープンになりました。東大寺ミュージアムは、南大門を入った左手の東大寺学園跡地に建てられた「東大寺総合文化センター」内に設けられ、連日大変な賑わいを見せています。

オープニングの展示は、「奈良時代の東大寺」。東大寺の1300年前の至宝60点が集められています(2013年1月14日まで)。このミュージアムの最大の魅力は、現在、須弥壇が修理中の法華堂のご本尊「不空羂索観音立像(ふくうけんさくかんのんりゅうぞう)」と月光菩薩、日光の菩薩像が展示されていることです。

「不空羂索観音立像」は、法華堂内陣でのお姿とは異なり、光背や宝冠(現在修理中)で飾られておられない分、その堂々たる体躯から発散される圧倒的なパワーに息を呑まれる方は多いかと思います。

東大寺の中でも一番古く、東大寺の創建の歴史ともつながりの深い「不空羂索観音立像」の前に立つとき、1300年間受け継がれ、守られてきた聖なるもの、そこに捧げられてきた数多の祈りや歴史の重みと向き合わせていただける、何にも喩え難い尊い体験となります。
この観音さまならば、きっと聖武天皇の大仏造立の願いを叶えられたことでしょうか。

なかでも観音さまの智慧に溢れた眼に強く打たれました。観音さまの眼は世を憂い、かつまた人類の過去から未来を貫くすべての悲しみを見つめているようでした。

私は、観音さまの眼から溢れ出る智慧の光に、未来への答えを求める気持ちで頭を垂れ、深い祈りを捧げました。

さて同ミュージアムのロビーの映像コーナーでは、私にとって初の映像作品となった「大仏さまは生きている」をご鑑賞いただけます(東大寺へ寄贈)。
大仏さまとは、一体どういう仏さまであるかを、写真から作った動画により、映像詩として構成いたしました。ぜひご覧くださいませ。

http://culturecenter.todaiji.or.jp/museum/

1300年前に思いを馳せながら、世界の安寧への願いをこめて

伊藤みろ メディアアートリーグ
2011/11/23

Photo and Text by Miro Ito, All Rights Reserved.
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[ フォトエッセイ]
書名: 心のすみか奈良 いのちの根源なるものとの出合い
古寺・古社・古儀に学ぶ「いかに生きるべきか」のメッセージ
著者: 伊藤みろ(写真・文)企画・編集: メディアアートリーグ
出版社: 武田ランダムハウスジャパン 
定価: 2,000円(本体1,905円)ISBN: 978-4-270-00564-4
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つながる心にこそ、希望あり:能楽師 武田友志さんの活動に同行して

2011-05-24 14:59:36 | Weblog
「つながる心にこそ、希望あり:能楽師 武田友志さんの活動に同行して」

東日本大震災から2ヶ月が過ぎた去る5月13日、観世流シテ方 能楽師の武田友志(ともゆき)さんの災害支援活動に同行し、宮城県石巻市勝雄地区の8カ所の避難所に、1000人分の食材を届けてまいりました。

友志さんいわく「我々のような小規模の支援は誰も行かないような小さな町に、と考え雄勝を選んだ」とのこと。実際、現地に足を運ぶと、避難所がどこにあるのかさえ分からない場合も多く、迷路のように入り組んだ山道を何度も曲がりながら、ようやく探し当て辿り着く感じでした。

友志さんは、震災直後、被災地の惨状と窮状をテレビで知り、まずは放射能の風評被害で支援物資が届かない福島県に「1箇所でも自分で持って行けば必ず届く、絶対に自分で行動しよう」と決め、単独でいわき市四倉を訪れました。

二度目の訪問の際、「もっと(被害の)酷い宮城や岩手に行ってあげてください」といわきの方からいわれ、宮城を訪れることに。これまで被災地を4回訪れ、雄勝へは2度目の訪問でした。

さて、件の雄勝地区では、地域のコミュニティセンターや老人憩いの家など、比較的規模の大きい避難所は物資も届いていましたが、個人宅が避難所になっている地域では、訪れる人もなく、本当に自分たちで届けない限りは、ほとんど何も届いていない状況でした。

私が感動を覚えたのは、縁もゆかりもない地域に出かけ、暖かな励ましを送り続ける友志さんの姿でした。その姿にこそ、人としてのあるべき姿があり、日本の未来があるように思われました。

極限状態におかれながら、被災された方々の秩序だった行動や礼儀正しさ、冷静な態度は世界的にも報道され、驚きの声で迎えられました。そうした日本人の美徳は、長い伝統や文化力によって育まれてきたものですが、友志さんのように、見ず知らぬ人々を応援したいという真心と受け取られる方々の感謝にこそ、その真意が認められるのではないでしょうか。

友志さんいわく「私達が伺った被災地の方は『誰か知り合いがいるの?』と聞かれます。そして何の縁もない私達や、その仲間が支援してくれているということに、心を打たれ喜び、涙を流す方もいらっしゃいます」。

そのような「思いやり」と「助け合い」という心が響き合う力こそ、被災地から世界に向けて希望の光を灯す、ひとつのメッセージになりうるのではないでしょうか。

私自身、9.11同時多発テロ事件をNYで体験した時、心のつながりの尊さを知りました。それは繁栄の頂点を目指して、NYの人々を競争へと駆り立てていた利己主義を溶かし、人間にとってより大切な「つながり」と「行い」の美徳に目覚めさせてくれました。

それ以来、私は微力ながら、日本の伝統文化から、写真や書籍・映像作品を通して、世界平和の基盤となる「連帯」の心を訴えたいと願い、創作活動を行っていますが、友志さんのような「行い」にこそ、人と人をつなぐ希望の光があるのだと思います。

8カ所の避難所を訪れた後、最後に同地区の船越小学校を訪問し、湯島食堂(国境なき料理団)のシェフ本道佳子さん、深澤大輝さん(深澤フーズ)、岡山からいらしたWaRa倶楽部の船越耕太さん三名による炊き出しを手伝いました。小学校32名、中学校31名のために、心のこもったランチが振る舞われ、子供たちが美味しそうに食べる様子を目にし、私自身、本当に心の暖まるひと時が過ごせました。

子供たちの愛らしく屈託のない明るさ、被災地の惨状の直中にあっても前向きな先生方の笑顔、そして友志さんや料理団の皆さんの心が一つに溶け合い、私は日本の未来を信じられる気持ちになりました。

ランチの後、後ろ髪を引かれる思いで被災地を後にしながら、次には、私自身の課題として「9.11」と「3.11」を繋ぐ活動をしようと誓いました。

思えば、バブル以降、いまほど日本が国際的に注目されたことはなかったのではないでしょうか。世界中の人々がさまざまな苦難に喘ぎながらも、自分たちの国情を顧みず、無条件に日本にエールを送り、また国家間のわだかまりや過去の経緯を乗り越え、支援し続けてくださる国々の善意は、国同士のつながりの大切さを、改めて思い起こさせてくれます。

国際社会が総出で日本を支援してくれることにこそ、復活を目指す日本が、新しい地球文明時代に、人として国として見本となれるよう、答えていかなくてならないのだと思います。

その答えの一つとして、人と人、人と社会、国と国、そして人と世界、人と生きとし生けるものすべての「いのち」との「つながり」を訴えていくことにあるのではないでしょうか。

その上にこそ、平和への第一歩があるのだと、改めて実感する次第です。

末筆ながら、このたびの震災により、ご家族や親類、ご友人をなくされた方々のために、改めて心よりご冥福をお祈り申し上げます。

伊藤みろ

メディアアートリーグ

2011年5月25日

写真:宮城県石巻市雄勝町
Photo and Text by Miro Ito, All Rights Reserved.
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[ フォトエッセイ]
書名: 心のすみか奈良 いのちの根源なるものとの出合い
古寺・古社・古儀に学ぶ「いかに生きるべきか」のメッセージ
著者: 伊藤みろ(写真・文)企画・編集: メディアアートリーグ
出版社: 武田ランダムハウスジャパン 
定価: 2,000円(本体1,905円)ISBN: 978-4-270-00564-4
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[メディアアートリーグについて]
アートを通して世界へ平和を発信する目的のもと、日本に遺され守られている「人類遺産」としての世界的な文化を、海外に紹介する活動。伊藤みろが写真家・アーティスト・プロデューサーとして推進。作品は寺社をはじめ、世界の図書館や大学、財団などに寄贈。文化を写真や映像作品、書籍として伝承し、世界で共有する活動。
http://www.miroito.com

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「つながり」と「おこない」:9.11と3.11

2011-04-17 12:22:36 | Weblog
「つながり」と「おこない」:9.11と3.11

 一ヶ月前の大震災、津波の被害、そして原発事故により、日本全体が大きく揺れる中、かつてNYで体験した9.11を思い出しています。

 このたびの東日本大震災ならびに原発事故の被災者の方々のご不幸には本当に言葉を失いますが、いまこそ、多くの方々が「思いやり」や「助け合い」の輪を広げ、日本が見失ってしまった精神的な価値を見つめ直すときなのだと思います。

 一筋の光明があるとすれば、芸能界やスポーツ界をはじめ、多くのボランティアの方々が被災者の救済のために名乗りを上げ始め、かつてないほどの規模とスピードで、心暖まる「思いやり」や「助け合い」の「つながり」と「行い」の輪が急激に広がりつつあることでしょうか。

 私自身、かつてNYで9.11を体験したことを契機に、人生が大きく変わりましたが、9.11を契機に、NYでも、本当に多くの人々が「つながり」を「行い」で示し始めました。 

 あの事件を境に、「New Reality」という言葉が現れ、世界が一変しました。残念ながら、政治レベルでは、「制裁」が新しい戦争を引き起こし、その後も不幸を生み出し続けていますが、「祈り」を選択した人々は、つながりに目覚めました。

 私自身もそうした一人として、世界の平和に貢献したい一心で、大仏さまをはじめ、日本の精神文化を世界発信するプロジェクトを「9.11」を境にスタートさせました。世界の人々に、希望の光を作品を通して発信したいと思ったからです。

 その後、奈良の社寺にご協力いただきながら、8年がかりで日本の精神文化を取材し、作品を創り進めていますが、今年は映像作品として広く発表いたしたく、被災地でも、いずれ作品を見せることができたら、と願う毎日です。

 もとより奈良の大仏さまが作られた時代も、現代のように、未曾有の天変地異をはじめ、疫病や飢饉に見舞われた試練の時代だったといわれています。

 そんな時代に「動植物にいたるまで、すべてを救いたい」という聖武天皇の願いから、大仏さまが国づくりのシンボルとして創られたのです。そしてのべ260万人の人々の「つながり」と「おこない」によって、大仏さまは完成されました。
 その後、二度の戦火に遭いながらも、大仏さまが二度とも再建されたのも、この「つながり」と「おこない」によるものでした。

 いま日本では、「震災後」ともいうべき「New Reality」が始まったのだと思います。
 どうか人々の心の本来の姿が現れる出来事で満たされた時間であってほしいと思います。

 大惨事の中で、力になりたい、助けたい、という連帯と共感に支えられた真心からの行いこそ、新しい日本を創れるのではないでしょうか。

「私の行いは所有物であり、
 私の行いは私の遺産であり、
 私の行いは私を生む子宮であり、
 私の行いは私の隠れ家である」
(『アングッタラ・ニカーヤ』からの仏陀の言葉:訳 菊地晶美)

 惨事でお亡くなりになった多くの方々のご冥福を、心よりお祈り申し上げます。

 合掌

 伊藤みろ  メディアアートリーグ
 2011年4月17日

写真:東大寺盧舍那大仏 撮影協力:東大寺


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[ フォトエッセイ]

書名: 心のすみか奈良 いのちの根源なるものとの出合い

古寺・古社・古儀に学ぶ「いかに生きるべきか」のメッセージ

著者: 伊藤みろ(写真・文)
企画・編集: メディアアートリーグ

出版社: 武田ランダムハウスジャパン 

定価: 2,000円(本体1,905円)ISBN: 978-4-270-00564-4

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シドニーからの手紙 ( S.T.氏より) ~過去現在未来と響き合う~

2011-01-23 12:14:38 | Weblog
シドニーからの手紙 ( S.T.氏より) ~過去現在未来と響き合う~


2011年のキーワード「響き合う」という新春のメッセージお送りしたところ、シドニーからお便りをいただきました。とても素敵なメッセージですので、ご紹介させてくださいませ。


「(東大寺の鏡池は)何十回となく見ているのに、こんな姿に気がついたことがありませんでした。
やはり立ち止まってじっくり目を凝らし耳を澄ますことが大切ですね。

さて、「響き合う」、良いですね。
耳だけじゃなくて胸やお腹で感じるバイブレーションの素晴らしさが奈良の最も良いところの一つかもしれませんね。
それに、音は時間ですから、過去現在未来をつなぐのに響きの比喩はとてもしっくりきます。

西洋では「建築は凍れる音楽」とか言うそうで、フェノロサが薬師寺東塔を指してそう言ったという話があります。

以前から納得できない話だと思っていましたが、その理由がよく分かりました。
東塔は凍ってなどいない。千三百年の豊穣が今も響きわたっています。こちらの心持ち次第では未来に向けて共鳴することもできます。
そういうことを伝えるのに、響きの比喩は良いですね。

また、人間の情報処理能力を越える大量の情報が眼から入ってきて、私たちを惑わせています。

心を落ち着かせてじっくりとものを考えるには、自分の気持でも、他人の意見でも、自然の音でも、未来の可能性でも、耳を澄まして聞こえてくるものにもう少し集中したほうが良いかもしれませんね。

そういう意味でも写真家が響きをテーマにする、というのは、とても大切なことですね (S.T.)」

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私は、S.T.さんと同様、胸やお腹で感じる素晴らしいバイブレーションのようなものをいつも奈良で感じています。それを写真に託すことができたらと思い、アメリカから一旦日本に取材のために戻り、2005年から奈良を撮り続けてまいりました。

奈良では、1300年の豊穣は今も響き合っています。

1301年目の奈良に足を運んで、ぜひ体験してみてください。

心の眼と耳を澄まして、聞こえてくるものに、身をゆだねてみてください。
きっと過去現在未来へと響き合い始めている自分を感じていただけることと思います。

2011年1月23日

伊藤みろ

写真:元興寺から眺めた空

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[ フォトエッセイ]
書名: 心のすみか奈良 いのちの根源なるものとの出合い
古寺・古社・古儀に学ぶ「いかに生きるべきか」のメッセージ
著者: 伊藤みろ(写真・文)
企画・編集: メディアアートリーグ
出版社: 武田ランダムハウスジャパン 刊行日: 2010年2月24日
定価: 2,000円(本体1,905円)判型: A5上製 ページ数: 144ページ
ISBN: 978-4-270-00564-4
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[メディアアートリーグについて]
アートを通して世界へ平和を発信する目的のもと、日本に遺され守られている「人類遺産」としての世界的な文化を、海外に紹介する活動。伊藤みろが写真家・アーティスト・プロデューサーとして推進。作品は寺社をはじめ、世界の図書館や大学、財団などに寄贈。文化を写真や映像作品、書籍として伝承し、世界で共有する活動。
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いかに生きるべきかのメッセージ 2「未来と響き合う」~ 奈良1300年の伝統から未来へ

2011-01-10 12:53:47 | Weblog
 いかに生きるべきかのメッセージ 2 「未来と響き合う」~ 奈良1300年の伝統から未来へ 

 2011年のキーワードを私なりに考えてみました。
 それは「未来と響き合う」ということです。

 見えるものと見えないものとの間で、過去の心と響き合うことで、私たちが「どこから来たのか」、私たちの姿そのものも見えてきます。「系図」への回帰とでも呼んだらよいのでしょうか、日本での取材活動を通して、そんな貴重な体験を作品として、育てることができました。

 実際、奈良に遺されたアジアの太古の伝統から、世界の人々と響き合う作品を創るために、この7年間、取材を深めれば深めるほど、1300年という歳月を経て、受け継がれてきたものが持つエネルギーの強さに圧倒されるのを感じます。時空の壁を突き破って届けられた「タイムカプセル」のように、太古の時代の神々や人々の心をしっかりと凝縮させているからです。

 大仏さまは、見えない仏の心と人のこころが響き合う、「つながり」を光の道として、語りかけてくださいます。
 そしアジアの王朝芸能として、1500年以上の歴史を持ち、日本にだけ遺された貴重な舞楽。
舞楽では、仮面や舞、音楽を通して、見えないものとかたちあるものが響き合い、呼応し合う「和楽」(笠置侃一先生のお言葉)がその原点にあります。

 この二つをテーマに、人類が共有しうる平和へのメッセージとして、二本のショートムービー&クロスメディア作品(「大仏さまは生きている」「仮面のいのち 春日大社の舞楽 若宮おん祭の舞楽」)を制作・監督し、昨秋の個展「光の道:祈りと芸能のシルクロード」に引き続き、昨年末、奈良県・平城京1300年遷都祭主催の「祈りの回廊 発展フォーラム」で上映発表いたしました。作品は寺社に寄贈させていただいたことをはじめ、これから世界の多くの方々と共有していきたいと願っています。

 奈良を訪れると、1400年の古(いにしえ)の心から見つめられると同時に、そのメッセージを、さらに未来へと思いを伝える勇気をいただきます。無常な生の有限な時間のなかだからこそ、精神の光という、変わらないものを見つめることの大切さを知り、見えないもの、本物のもつ力を感じます。

 私にとって、そのことに出合えるのが、大仏さまであり、神の「まほろば」である奈良の祈りと芸能の伝統なのです。
 
 本年も、シルクロードの終着の地である奈良、日本の1400年の精神文化の伝統から、世界に向けて平和を発信したいと存じます。

2011年1月吉日

伊藤みろ

写真:東大寺鏡池
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[ フォトエッセイ]
書名: 心のすみか奈良 いのちの根源なるものとの出合い
古寺・古社・古儀に学ぶ「いかに生きるべきか」のメッセージ
著者: 伊藤みろ(写真・文)
企画・編集: メディアアートリーグ
出版社: 武田ランダムハウスジャパン   刊行日: 2010年2月24日
定価: 2,000円(本体1,905円)判型: A5上製 ページ数: 144ページ
ISBN: 978-4-270-00564-4
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アートを通して世界へ平和を発信する目的のもと、日本に遺され守られている「人類遺産」としての世界的な文化を、海外に紹介する活動。伊藤みろが写真家・アーティスト・プロデューサーとして推進。作品はすべて寺社をはじめ、世界の図書館や美術館、大学や財団などに寄贈。文化を写真や映像作品、書籍として伝承し、世界で共有する活動。
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「いかに生きるべきか」のメッセージ ~ 平城京遷都祭「祈りの回廊 発展フォーラム」で映像作品を上映

2010-12-31 21:29:22 | Weblog
「いかに生きるべきか」のメッセージ ~「祈りの回廊 発展フォーラム」で映像作品を上映

 2010年は、私にとって、書籍発刊や映像作品発表、個展開催などで、平城京記念のプロジェクトに捧げた1年でした。

 全国的な盛り上がりを見せた奈良県・平城京遷都祭主催の最終イベント「祈りの回廊 発展フォーラム」(12/23) では、大仏さまと春日大社舞楽を紹介する二本の映像作品を上映させていただきました。ともにアートを通して平和を伝えるドキュメンタリー&クロスメディア作品として、私自身がプロデュース・撮影・執筆した初監督作品(EOS静止画・動画によるショートムービー、企画制作:メディアアートリーグ)です。

 二つの作品には、この7年間、奈良の伝統と向き合う中で、育ませていただいた神仏への感謝、歴史の重み、平和への願いのすべての「思いの丈」を込めました。監修のご支援をいただいた東大寺や春日大社の先生方、南都楽所の笠置侃一先生からのご指導には、本当に感謝の気持ちで一杯です。

 さて、平城京遷都1300年を記念する、11月からの一連の作品展ならびに作品上映(個展「光の道:祈りと芸能のシルクロード」は、かつて東ベルリンで体験したベルリンの壁崩壊から21年、NYで目撃した「9.11」同時多発テロ事件から数えますと、10年来のひとつの目標を遂げた「折り返し地点」のように思えました。

 これからどこまで辿り着く事ができるのか、私が少なくとも、奈良での取材活動を通して、仏教や神道の教えと神仏習合の伝統を知って、自信を持って伝えることができることがあるとすれば、人として目指すべき、「光の道」があるのでないか、ということです。

 私自身、自分の生きる意味を求めて、ドイツやアメリカで永住権を取得しましたが、いまは誰もがもつ「心、本来の輝き」とともに、「苦」をも私自身の「人格の一部」として認め、それを大きな感謝に変えることができることを、奈良で学びました。

 この経緯は、拙書「心のすみか奈良 いのちの根源なるものとの出合い」(フォトエッセイ、武田ランダムハウスジャパン)にも詳しく書かせていただきました。同書では、私自身の「魂の旅」の経緯を綴らせていただいただけでなく、奈良を代表する森本公誠東大寺長老、西山明彦唐招提寺執事長、辻村泰善元興寺住職、岡本彰夫春日大社権宮司の先生方から、「奈良の1400年の叡智」として、仏教や神道の教えを通して、「いかに生きるべきか」のメッセージを頂戴いたしました。奈良に関心を持つ方々だけでなく、多くの方々に「いかに生きるべきか」についてのひとつの指針として、ぜひ読んでいただきたいと思います。

 もとより「いかに生きるべきか」は、人として本来、何が大切かを見失いがちな現代社会では、答えのない問いかけかもしれません。私自身の体験から申し上げることをお許しいただければ、仏教や神道は、そうした問いかけへの答えとなりうるのではないでしょうか。仏教は「すべてが繋がっている」ことを諭してくれます。一人一人が煩悩の垢を削ぎ落として、心を磨くことで、誰もが仏陀(悟れる者)になりうる道を示してくれます。また神道は、自然に遍満する神々の息吹によって、すべてが活かされていることの感謝を教えてくれます。

 新年では、これら奈良発の日本の精神文化の作品を、日本語だけでなく、さらに広く海外へと英語で発信する予定です。奈良に遺された叡智を世界の多くの方々と共有し、宗教や文化の違いを超え、平和のための相互理解に役立てていきたいのです。そのために私自身、この7年間、NYから日本に一旦拠点を移し、奈良を中心に取材活動を展開してきました。

 世界に平和が訪れることがあるとしたら、それは仏陀の教えのように、人が光となる道である「光の道」を目指して行くことを措いて他はないのではないでしょうか。このことは「光の子となるために、光のあるうちに、光を信じなさい」と説き、自ら「いかに死にゆくか」を示すことで、「いかに生きるべきか」を示したイエスを範とする、キリスト教でも同じことなのではないでしょうか。
 
 Peace is in the way for light ..... 2010年大晦日に、平和への祈りを込めて

伊藤みろ

写真:東大寺二月堂からの夕陽
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[ フォトエッセイ]
書名: 心のすみか奈良 いのちの根源なるものとの出合い
古寺・古社・古儀に学ぶ「いかに生きるべきか」のメッセージ
著者: 伊藤みろ(写真・文)
企画・編集: メディアアートリーグ
出版社: 武田ランダムハウスジャパン 刊行日: 2010年2月24日
定価: 2,000円(本体1,905円)判型: A5上製 ページ数: 144ページ
ISBN: 978-4-270-00564-4
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[メディアアートリーグについて]
アートを通して世界へ平和を発信する目的のもと、日本に遺され守られている「人類遺産」としての世界的な文化を、海外に紹介する活動。伊藤みろが写真家・アーティスト・プロデューサーとして推進。作品はすべて寺社をはじめ、世界の図書館や美術館、大学や財団などに寄贈。文化を写真や映像作品、書籍として伝承し、世界で共有する活動。
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東大寺伎楽面 春日大社舞楽面 祈りと芸能のシルクロード 写真展開催 ごあいさつ (伊藤みろ by Miro Ito)

2010-11-16 01:31:55 | Weblog
祈りと芸能のシルクロード 東大寺伎楽面 春日大社舞楽面 伊藤みろ 写真作品展

ごあいさつ

古代の日本は、中国大陸や朝鮮半島などアジアの隣国との交流が盛んで、710年に都となった平城京は、アジアの文化の粋を集めた開かれた国際都市でした。

西の果ては地中海に続く、ユーラシア大陸を貫く「シルクロード」を経て、ペルシアなどの国際色豊かな宝物とともに、インドからの仏教の教えが中国を経て、数百年の時をかけて奈良まで伝来しました。

奈良は、北のステップロード、中央のオアシスロード、南海路の三つのシルクロードの終着地であり、数万キロと数千年の旅路からの有形無形の宝物を、今日まで遺しています。

それらは正倉院の御物として知られるだけでなく、「精神」という地平の上で、光の教えのシンボルとしての東大寺の大仏さま(盧舍那仏)や、ユーラシア大陸最古の仮面劇(行道を中心とした一種のパントマイム)といわれる伎楽、中国や朝鮮半島の王朝芸能として伝えられた舞楽など、「祈りと奉納」のかたちに託されてきました。

こうしたユーラシア文化の豊かな結晶の上に、日本古来の信仰や文化が融合し、日本文化の基礎が作られていきました。

本展では、「精神のシルクロード」と呼びうる「祈りと芸能のシルクロード」というコンセプトにて、アジアの共通の遺産として天平期から中世の仮面芸能の紹介を行います。「天平文化」に託された「精神性」を、アジアの太古の祈りと奉納の文化を結集させたものとして、作品を通じて未来にむけ、国境を越えて発信いたしします。

奈良が守り続けてきたシルクロードの遺産、アジアの連帯のシンボルである、幻の芸能である伎楽、アジアの王朝芸能の伝統を今日まで伝える舞楽。それら1500年以上の伝統の上に立つ「人類遺産」としての文化力、その智慧と時空を超えた美を知っていただくことで、その源である中国や韓国、インドシナ諸国をはじめ、広く世界の方々とつながり、歴史と未来とを豊かに結んでいくことができることでしょうか。願わくは、この展覧会が平和な未来への、平城京の伝統からのメッセージとなればと願っています。

この展覧会をご覧になる、ひとりでも多くの方々が、奈良の伝統を通して、過去や未来と出合い、地球規模の視点から、文化を「共有・伝承」する、心の架け橋となってくださることを願ってやみません。

伊藤みろ (メディアアートリーグ代表)


撮影協力:東大寺 春日大社 奈良国立博物館
後援:社団法人平城遷都1300年記念事業協会
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奈良まほろば館 展覧会 (2010年11月14日~19日)
祈りと芸能のシルクロード 
東大寺伎楽面 春日大社舞楽面
伊藤みろ写真作品展

11月17日 (14:00~15:30)
「東大寺の伎楽面 春日大社の舞楽面」 
記念講演
秋田真吾氏 (春日大社学芸員)

※聴講をご希望の方は、下記までお申し込みください。
http://www.mahoroba-kan.jp/
〒103-0022 東京都中央区日本橋室町1-6-2 日本橋室町162ビル1F・2F
開館時間 10:30~19:00 TEL:03-3516-3931 FAX03-3516-3932
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[ フォトエッセイ(最新刊)]
書名: 心のすみか奈良 いのちの根源なるものとの出合い
古寺・古社・古儀に学ぶ「いかに生きるべきか」のメッセージ
著者: 伊藤みろ(写真・文)
企画・編集: メディアアートリーグ
出版社: 武田ランダムハウスジャパン

 刊行日: 2010年2月24日
定価: 2,000円(本体1,905円)判型: A5上製 ページ数: 144ページ
ISBN: 978-4-270-00564-4

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[メディアアートリーグについて]
アートを通して世界へ平和を発信する目的のもと、日本に遺され守られている「人類遺産」としての世界的な文化を、海外に紹介する活動。伊藤みろが写真家・アーティスト・プロデューサーとして推進中。作品はすべて寺社をはじめ、世界の図書館や美術館、大学や財団などに寄贈。文化を写真や映像作品、書籍として伝承し、世界で共有する活動。

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Photo and Text by Miro Ito, All Rights Reserved.


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祈りと芸能のシルクロード~東大寺伎楽面 春日大社舞楽面~伊藤みろ写真作品展 開催のご案内

2010-11-14 02:05:39 | Weblog
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奈良まほろば館 展覧会 (2010年11月14日~19日)
祈りと芸能のシルクロード 
東大寺伎楽面 春日大社舞楽面  
伊藤みろ写真作品展 
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「祈りと芸能のシルクロード : 東大寺伎楽面 春日大社舞楽面 ~ 伊藤みろ写真作品展」が始まります。Canon EXPOでの個展「光の道:祈りと芸能のシルクロード」を好評のうちに終え、奈良県の広報施設・奈良まほろば館(東京 日本橋)で展示が行われます。

 平城遷都1300年を記念して、シルクロード伝来のアジアの文化の結晶を「祈りと芸能の道」として紹介いたします。アジア最古の仮面劇といわれる、幻の芸能「伎楽」(ぎがく 日本だけに仮面が現存) 。 そして1500年前に日本に伝来し、今日まで継承されている舞楽に光を当てます。とりわけ舞楽は、日本にのみ遺され、中国や朝鮮半島ではすでに滅びてしまったアジアの太古の王朝芸能の伝統を、今日に伝えるものです。伎楽面(天平期)、舞楽面ともに、大変貴重な「人類遺産」といえるものです。

 伎楽では、752年(天平勝宝4年)の大仏開眼供養会のときに奉納されたといわれる、東大寺の伎楽面(重要文化財・天平時代)を写真作品として紹介します。東京国立博物館で開催中の「東大寺大仏―天平の至宝展」(12月12日まで)で展示中の二体を含む、八体の写真作品を展示いたします。伎楽面は、同東大寺大仏展で本物をご覧いただくことができます。

 舞楽では、春日大社の秘宝である重要文化財指定の舞楽面(平安時代~江戸時代ほか)を含む、九体を写真作品として紹介いたします。春日大社では現在「平安の正倉院展II 花開く舞楽の美」展(2011年1月16日まで)が開催されており、展示作品の舞楽面の実物を見ることができますので、興味のある方は、ぜひ奈良までお出かけください。

 また奈良まほろば館では、11月17日の14:00から春日大社学芸員の秋田真吾氏による記念講演が催されます。春日大社の舞楽面ならびに東大寺の伎楽面について、お話をお聞かせいただきますので、ご希望の方は、奈良まほろば館までお申し込みください。

  私の活動「メディアアートリーグ」は、アートを通して平和を伝える活動として、日本に遺され、守られている人類遺産を展覧会として発表し、寺社をはじめ、世界の著名な図書館や美術館、大学などに寄贈して行く活動です。
  国際間を生きてきた人間として、アートをメディアに、世界の平和に役立たせていただきくことが活動の目標です。

 東大寺伎楽面、春日大社舞楽面の造形としての完成度と時を超えた輝きは、それぞれ古代、中世の頂点といえるものです。ぜひご覧ください。

伊藤みろ


[展示作品]

東大寺伎楽面 八体 国指定重要文化財
酔胡王 酔胡従 迦楼羅 力士 太孤父 治道 婆羅門 崑崙

春日大社舞楽面 九体
地久 崑崙八仙 貴徳鯉口面 納曽利 散手 新鳥蘇(以上 国指定重要文化財) 蘭陵王(二点)
還城楽

撮影協力:東大寺 春日大社 奈良国立博物館
後援:社団法人平城遷都1300年記念事業協会

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奈良まほろば館 展覧会 (2010.年11月14日~19日)

祈りと芸能のシルクロード 
東大寺伎楽面 春日大社舞楽面  伊藤みろ写真作品展

11月17日 (14:00~15:30)
東大寺の伎楽面 春日大社の舞楽面 
記念講演 秋田真吾氏 (春日大社学芸員)

http://www.mahoroba-kan.jp/
〒103-0022 東京都中央区日本橋室町1-6-2 日本橋室町162ビル1F・2F
開館時間 10:30~19:00 TEL:03-3516-3931 FAX:03-3516-3932
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[ フォトエッセイ ]
書名: 心のすみか奈良 いのちの根源なるものとの出合い   
古寺・古社・古儀に学ぶ「いかに生きるべきか」のメッセージ
著者: 伊藤みろ(写真・文)
企画・編集: メディアアートリーグ
出版社: 武田ランダムハウスジャパン
刊行日: 2010年2月24日  定価: 2,000円(本体1,905円)
判型: A5上製 ページ数: 144ページ
  ISBN: 978-4-270-00564-4
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[メディアアートリーグについて]
アートを通して世界へ平和を発信する目的のもと、日本に遺され守られている「人類遺産」としての世界的な文化を、海外に紹介する活動。伊藤みろが写真家・アーティスト・プロデューサーとして推進中。作品はすべて寺社をはじめ、世界の図書館や美術館、大学や財団などに寄贈。文化を写真や映像作品、書籍として伝承し、世界で共有する活動。

Photo and Text by Miro Ito, All Rights Reserved.
記事、写真の無断転載を禁じます。
Copyright (c) 2010 Miro Ito + Media Art League

東大寺のお水取りー火と水、懺悔によって清められる大切さ

2010-03-07 11:52:23 | Weblog
東大寺のお水取りー火と水、懺悔によって清められる大切さ

 今年1259回目となる東大寺のお水取り。このお水取りに魅せられ、新刊「心のすみか奈良 いのちの根源なるものとの出合い」では、私がこれまで撮ってきたお水取りの作品も載せています。『アサヒカメラ』のグラビア(2008年10月号)でも紹介されましたが、私が惹かれるのは「炎」に象徴される「いのちの願い」です。

 2月24日発行になった拙書は、写真集を兼ねたフォトエッセイですが、「日本文化深層への旅」という解説エッセイも添えました。
 以下、同書「心のすみか奈良 いのちの根源なるものとの出合い」から少しばかりご紹介させてください。
 
 「東大寺の『お水取り』では、古代の日本人が思い見た、さまざまな聖なるものとの出合いがあります。 仏と神、火と水、祈りと懺悔、過去と未来 ... ご本尊は十一のお顔をもつ大小二つの観音さま。
 仏教の行でありながら、神道のお祓いの作法も行う、神仏習合のかたち。火は人間の罪過を焼き尽くして浄化する力であり、水は生命や霊力の源です。
『火と水の行法』として『達陀(だったん)』(*1)と『水取り』(*2)の二つの峻厳な儀式が執り行われ、火と水の神秘的な力が崇められ、仏と神の前でこころを祈り浄めながら、春の到来という再生の時を祝福します。」(P.132)

 さて同書では書かなかったことですが、火は、イスラム教以前のペルシャの宗教であるゾロアスター教では神の化身です。火を神格化された聖なる力としてみなし、正義または天則(アシャ)を具現させるものとして、火は古来より崇められてきました。それは「いのちの願い」というよりも、もっと運命的なものです。
 火は最後の審判の際に、すべての物が火によって試され、清められなければならないという畏怖の力の象徴なのです。

 ゾロアスター教では、「火」によって「終わり」と「はじまり」が区切られ、火によって歴史の摂理そのものが考えられるようになったといわれます(『ゾロアスター教』岡田明憲著)。火は、世界と己の運命を投影させるだけでなく、まさに歴史という「時間」の誕生の生みの親ともいえるのです。

 同じアーリア人の拝火信仰の流れを汲むインド(ヴェーダ教典)では、火神アグニは、天空では太陽を象徴し、中空では稲妻、地では祭火など、世界に遍在する火の源となります。これが仏教では火天となり、お水取りの終盤の「陀達」の儀式を執り行います。

 いっぽう、すべては水によってまた清められるのです。
 ヴェーダの天を司る神ヴァルナは、ゾロアスター教の最高神アフラマズダとなったといわれますが、ヴァルナはまた水神です。
 仏教では水天となりました。この火と水の両方を崇める儀式が東大寺のお水取りです。
 
 さて、東大寺のお水取りは、正式には「十一面悔過(けか)」という名の法会として、かつては旧暦の二月に行われていたものです「修二会(しゅにえ)」といも呼ばれます。大仏さまの開眼供養と同じ年の752年に始まり、以来1250年以上、一度も途絶えることなく続けられていることから、「不退の行法」といわれています。 

 「この法会で最も大切な修行となるのが『懺悔(さんげ)』です。インド哲学者の中村元氏によると、万民のための『悔過』を集団で行う、世界的にも珍しい修行体系であるといわれます。 
 毎年 3月1日から14 日まで二週間に亘り、東大寺二月堂の内陣で11人の『練行衆(れんぎょうしゅう)』とよばれる俗世界を離れた参籠僧によって、尊い祈りが捧げられます。僧侶はいわば、私たちの『身代わり』となって万民の罪を浄め、天下の安泰と豊楽を祈ってくださるのです。」(P.133)

 自然への畏敬の念、祈りと悔過を通して、私たちが自然の恵みによって生かされていることに気づくとき「過去から現在、そして未来へ続く力の源」とひとつになることができるのではないでしょうか。

 火はいのちの願いであり、そして運命さえも投影させながら、「こころ」そのものを本来の清浄なあり方へと正す、偉大な力そのものなのです。その火や水と向き合うとき、ひとりひとりが火によって「まっさらなこころ」として再生され、水によって清められ、「懺悔」という謙虚さの大切さを教えてくれるのではないでしょうか。

 お水取りを訪れる機会がありましたら、私たちの大本にある「いのちの根源」と出合える体験をきっと味わっていただけることでしょう。

 その経緯は拙書に書いていますので、ご高覧いただければ幸いです。

 3月7日は小観音さまの日ですが、奈良では今日も敬虔なる「いのちの願い」が練行衆によって、紡がれていることでしょうか。

伊藤みろ メディアアートリーグ
2010/3/7
Photo and Text by Miro Ito, All Rights Reserved.
記事、写真の無断転載を禁じます。Copyright © Media Art League

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(*1) 「達陀(だったん)」=達陀帽をかぶった八天のうち、水天と向き合った火天が3メートル以上ある松明を抱えて、内陣を引き回す、東大寺お水取りの独特の行法として知られる。

(*2) 二月堂の下にある若狭井(わかさい)という井戸から、若狭遠敷明神を祈請して、本尊の観音さまにお供えする「お香水(こうずい)」を汲み上げる儀式。

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  書名: 心のすみか奈良 いのちの根源なるものとの出合い
     古寺・古社・古儀に学ぶ「いかに生きるべきか」のメッセージ
  著者: 伊藤みろ(写真・文)
  企画・編集: メディアアートリーグ
  出版社: ランダムハウス講談社
  刊行日: 2010年2月24日
  定価: 2,000円(本体1,905円)
  判型: A5上製 ページ数: 144ページ
  ISBN: 978-4-270-00564-4
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伊藤みろ「心のすみか奈良 いのちの根源なるものとの出合い」発刊ご案内

2010-02-27 12:12:34 | Weblog
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  ☆---------☆ Media Art League NEWS ☆---------☆

  書名: 心のすみか奈良 いのちの根源なるものとの出合い
  著者: 伊藤みろ(写真・文)
  企画・編集: メディアアートリーグ
  出版社: ランダムハウス講談社
  刊行日: 2010年2月24日
  定価: 2,000円(本体1,905円)
  判型: A5上製 ページ数: 144ページ
  ISBN: 978-4-270-00564-4
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 今年は日本の都が平城京に遷されて1300年になりますが、1000年、1500年という単位の年月は、想像を絶するスケールです。それを「いのちと祈り」の景観として、現代の私たちにも「見える」かたちで連綿と伝えてきたのが、奈良の精神文化の「奇跡」のような神仏習合の伝統です。

 20年前に「ベルリンの壁」の崩壊を東ベルリンで体験し、そしてNYで9.11同時多発テロを経験した私が、「いのちの根源なるもの」を求め、探し続けてきた答えは奈良にありました。その私自身の「求道」の旅の経緯を、奈良の1400年の叡智に学ぶかたちで、「いかに生きるべきか」のメッセージとして、このほどフォトエッセイとして書き下しました。

 新しい本は『心のすみか奈良 いのちの根源なるものとの出合い』(ランダムハウス講談社)という題です。
 「9.11」以降、私なりにアートを通して平和を伝えようと進めてまいりました「メディアアートリーグ」の活動として、アーティスト自らが発案する「メディア=メッセージ」として、精神の啓蒙を訴えるものです。
  2004年に日本に戻って以来、奈良の精神文化についての6年の取材の成果を、まずは奈良シリーズ第一弾として「ことば力」+「伝統力」+「写真力」の融合を基軸に、同書にまとめました。

 「ことば力」では、まず総論として私自身の「いのちの根源なるものとの出合い」を、東大寺の「9.11」当時の管長だった橋本聖圓長老に宛てた手紙として書き綴りながら、仏陀や奈良の伝統に基づき「いかに生きるべきか」について橋本師よりお教えいただきます。
 またインタビューによるご講話は、東大寺前管長の森本公誠長老から始まります。森本長老はイスラム史の権威としても知られる奈良を代表する高僧のお一人です。続いて唐招提寺からは、執事の西山明彦師から、鑑真和上の知られざる功績についてのお話を、また日本最古の寺院である元興寺(飛鳥寺の後身)の辻村泰善住職からは、深いながらも大変分かりやすい仏教入門をお話いただきました。さらに春日大社・岡本彰夫権宮司から「誇りをもつこと」「道をいくこと」の大切さともに、神道入門を兼ねた日本文化論を披瀝いただいています。

 また「古寺・古社・古儀」に学ぶ「伝統力」の地平では、東大寺、唐招提寺、元興寺、春日大社に代表される奈良の世界遺産の伝統行事を写真にてご紹介いたします。東大寺の修正会~修二会(お水取り)~燃灯供養・万灯供養、唐招提寺の修正会~うちわまき、元興寺の地蔵会万灯供養、そして春日大社の万燈籠を通して、日本の最初の都であった奈良の伝統行事の「極み」といえるような、精神の深みに触れていただけることと存じます。それは同時に解説として書き下しました「日本文化の深層への旅」を誘うものです。
 
 日本の「心のすみか奈良」である奈良に継承されてきた1400年の叡智に学び、いまこそ「心、本来のあり様」を見つめ直すときなのではないでしょうか。
 奈良の伝統から現代の私たちに贈る、鮮烈な未来へのメッセージとして、ひとりでも多くの方々に読んでいただきたいと願っています。

 奈良で「いのちの根源なるもの」と出合った私の経験を本書を通して、皆様にもご共有いただければ幸いに存じます。
 平城京遷都1300年の記念の年に、日本文化の曙である奈良を「精神」としてぜひご体験いただきたいと願いつつ、ご案内に代えさせていただきます。

 なお本願成就を期しまして、昨年よりこれまで漢字の雅号「美露」から「みろ」とひらがなに改めました。
 引き続きどうぞご支援のほど宜しくお願いいたします。

伊藤みろ メディアアートリーグ
2010/2/26