MIRO ITO発メディア=アート+メッセージ "The Medium is the message"

写真・映像作家、著述家、本物の日本遺産イニシアティブ+メディアアートリーグ代表。日本の1400年の精神文化を世界発信

「運命よ、いらっしゃい」(中村天風哲学、笑顔で勝つこころ)

2008-02-25 21:15:40 | Weblog
「運命よ、いらっしゃい」(中村天風哲学、笑顔で勝つこころ)

 先のブログでは、柳生新陰流の前宗家にならった「さあ、いらっしゃい」という運命への対処法を書きましたが、それを同流では「迎え」と呼んでいます。

  すなわち、まず技の前に「無形(むぎょう)」という位があって、それはまっさらな状態とでもいいましょうか、何にも捕われず、無限な広さをたたえた心のあり方をいいます。
 
  その状態でないと「勝つべくして勝てない」(柳生延春師範)と説かれるのも、心の面では何事にも捕われない状態だからこそ、「相手が自ら働いてしまう様に仕向ける」ための「先」を観ることが可能になるからです。それを流祖である柳生石舟斎は「迎え」と呼び、「先々の先」の心持ち(位)と合わせて「勝つ」ための基本としました。

 私には、もちろんそんな剣の達人のような先を観るほどの力もなく、自分の本来の姿に出会うために、ドイツ~アメリカ~日本~と三つの国で運命の綱渡りをしてきました。「迎え」どころか、自分の目指す「本物」が一体どこにあるかもわからず、いつも先の読めない、がむしゃらな心持ちだったように思います。

 勢いだけで大海に出てしまった「舵もコンパスもない帆船」とでもいいましょうか、ただひとつ「自分探し」だけが揺るがぬ目標でした。いつか嵐のような海を切り抜け、おだやかな光の下にたどり着けることを信じながら…。

 そんな私にとって、ほぼ10年経ったいまだから種明かしができるわけですが、「プラス思考」を日本に最初に説いた鉄人であり、ヨガ行者の中村天風哲学に接したことは、ひとつの転機となりました。そこで説かれていたのは、自分の心に打ち勝つための積極的な考え方です。私自身の運命との「一騎打ち」に、新しい光を与えてくれる言葉でした。

「人間の力でどうしようもない運命はそう沢山あるものではない」「人生は心ひとつのおきどころ。思い方考え方で人生の一切をよくもし悪くもする」 「こころに犬小屋みたいな設計を描いて広壮な邸宅などできるはずがない」「宇宙の造物主は、もともと人間を強く幸福に生きるように造った」….等々。

 かの松下幸之助も師と仰いだ天風のことばは、誰でも分かるような、単純きわまりない言葉でありながら、嵐の中でも動かぬ厳かな岩のように強靭な力を孕んでいます。「幸福になるために生まれて来た」という視点から人生を改めて見つめ直す、瑞々しい勇気としなやかなこころの力を教えてくれるものです。

 その勇気を「最高の宝物」として抱きしめ、2000年を機に単身NYへと移住しました。「怖いものがない、ということほど強いことはない」ということ、何も持たなくても勇気さえあれば、何でも実践できること。ないことは、すべてあることと同じ__それらは、いまの私を支える大きな自信になりました。

 さて「昨年のわれに 今年は勝つべし」がモットーの新年は、運命のお導きを積極的に「迎え」ながら、もう一歩進んで、運命にさらに働かきかけて、次に来たるものをどんどん良いものにしていく「先々の先」の位をもつことが目標です。

 改めて「運命よ、さあいらっしゃい」と嬉々とした期待に弾け、まっさらな気持ちを保ちながら、一歩一歩努力することを、つねに笑顔で実践していきたいと思います。

「きのうのこころに きょうは笑顔でかつべし」

 伊藤 美露
 http://www.miroito.com
 text and photo by miro ito, all rights reserved.
 sky over kamiuma,2.17.2008


 ※ 柳生新陰流の剣の理については、詳しくは『柳生新陰流道眼』(柳生延春著、島津書房刊1999年刊、ISBN 978-4882180623)をご参考ください。
 
 ※ 現在私が『アサヒカメラ』で連載中の「極意で学ぶ 写真ごころ」のなかでも、柳生新陰流に限らず、日本文化の極意論を写真の実技講座の中で展開しています。ぜひお読みください。

 ☆☆☆☆☆☆☆☆  好評連載中 by 伊藤美露  ☆☆☆☆☆☆☆☆
 「極意で学ぶ 写真ごころ」(『アサヒカメラ』朝日新聞社)
 2008年の3月号のテーマは「写真の『不射の射』とは何か」」p.176~179
 
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 『魅せる写真術 発想とテーマを生かす撮影スタイル』
 著:伊藤美露 定価 : 2,079円 B5判/160P/オールカラー    
 ISBN 978-4-8443-5921-0
 発行:株式会社エムディエヌコーポレーション

勝つためのこころー柳生新陰流 前宗家の教え

2008-02-09 23:26:26 | Weblog
勝つためのこころー柳生延春師範の教え

「きのうのわれに きょうはかつべし」を座右の銘にスタートさせた新年_。

 この言葉を教えてくだった柳生新陰流の前宗家・柳生延春師範には、かつて勝つための哲学の一端を教えていただきました。
 それは「勝つためのこころ」についてでした。

 勝つためには、まず自分の「勝ちたい」「打ち負かしてやろう」という気持ちから自由になること。
 そうして初めて、自分のこころという「最大の敵」から解き放たれ、相手の「活き」を「わがもの」として使う余裕が生まれるのです。

 延春師範はよく「全身の力を抜き切って、『さあ、いらっしゃい』という気持ち、『いつでも来い』という余裕綽々たる気持ちの中でこそ、敵の動きを正確に視ることができ、自らの力として使うことができる」とおっしゃっていました。それは剣が上手の相手でも、相手の力に乗じて巧く使うことで、勝つ事ができる、ということです。

 これを「運命」に置き換えてみると、人生のさまざまな局面でも、大切な秘訣であることに気がつきます。

 私はいつも「運命に負けたくない」という気持ちで、人生に降り掛かる「重荷」をバネに、人生に立ち向かってきました。
 大学卒業後、最初にドイツに移住する前_。そしてドイツから一旦、日本に戻ったとき、その後、再びアメリカに移住する際にも、すべて「運命に負けたくない」という気持ちで、自分のもてる全てを賭けてきました。
「運命との一対一の真剣勝負」といったあまりにも真面目すぎる覚悟で、振り返る余裕など一切なく、「次に来るもの」の未知の可能性に次々と挑んできました。

 しかしアメリカから4年前に帰国した時は、個人的な葛藤ではなく、より大きな目標に向かうことになりました。私自身このときになってはじめて、人生の重荷と表裏一対だった、「運命に負けたくない」という気持ちから自由になれました。

 柳生師範のことばを思い出すなら、ここではじめて運命を「わがもの」として味方につけることができるようになったのかもしれません。

 どんな逆境にあっても、「さあ、いらっしゃい」という余裕、困難さの中にも「活き」をみつけ、それに乗じて、状況そのものから知恵を絞りだす、そんなこころを持ち続けていきたいものです。


 伊藤美露
 http://www.miroito.com
 text and photo by miro ito, all rights reserved.
 sky over kamiuma, 01.22.2008


 ※現在私が『アサヒカメラ』で連載中の「極意で学ぶ 写真ごころ」のなかでも、柳生新陰流に限らず、日本文化の極意論を展開していきます。よろしければ、併せてお読みください。

 ☆☆☆☆☆☆☆☆  好評連載中 by 伊藤美露  ☆☆☆☆☆☆☆☆
 「極意で学ぶ 写真ごころ」(『アサヒカメラ』朝日新聞社)
 2008年の2月号のテーマは「写真の『瞬間力』とは?」」p.170~173
 
 ☆☆☆☆☆☆☆☆  日本図書館協会選定図書  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆
 『魅せる写真術 発想とテーマを生かす撮影スタイル』
 著:伊藤美露 定価 : 2,079円 B5判/160P/オールカラー    
 ISBN 978-4-8443-5921-0
 発行:株式会社エムディエヌコーポレーション