奈良、
歴史という「生」の積み重ねへの感謝
奈良に足を運ぶ度に心が洗われるのは、自然や人間を超えた宇宙の意思に生かされている、という気持にさせてくれるものとの出会いがあるからです。
伝統の重みといえば月並みですが、身体行や芸を通して切磋琢磨をされてきた、僧侶や演者の方々の無数のかけがえのない「生」の蓄積と接することで、まさに日本の精神の核心に触れる思いがします。
私が奈良を取材している中で、常に魂を揺さぶられるのは、こう古代からの人々からの「思いの丈」に触れる瞬間です。過去との出会いでありながら、変わらない何か、未来にも続いてほしい何か_
それは私がテーマにしている「聖なるもの」たちへの敬虔な気持ちにほかなりません。
「見えないもの」でありながら、形に託された尊きものへの祈りであり、そして奉納の気持です。
こうした尊い気持ちを教えてくれるのが、私にとっては仏像であり、奈良の宗教行事であり、そして御能などの伝統芸能なのです。
これまで奈良というテーマを、NY在住時より足かけ5年がかりで、取材を進めてまいりましたが、これからは展覧会や書籍ほか、さまざまなかたちで発表していきたいと思いますので、世界の多くの方々に見ていただきたいと願っています。
さて、今月初めに、先月に続いて奈良の桜井の夕陽を撮りに行きました。
かの聖徳太子が見たであろう夕陽は、先月は日本最古の国立劇場跡の「土舞台」から撮りましたが、今月は土舞台を右手に眺める小高い丘から撮りました。
太陽が二上山の袂に半分に割れて沈むさまが、感動的でした。
山が「神格化」されたのは、太陽である「カミ」をお隠しになるからかもしれない、とそんなことを思ったほどです。
太陽をまたたく間に懐深くに抱きかかえ、世界が明日また眠りから醒めるまで太陽を休ませる、そんな太陽の休息の場所が山なのでしょうか....
この太陽とともに営み、沈んでいった無数の「生」への感謝をこめて
伊藤美露
text and photo by miro ito, all rights reserved.
sunset over sakurai, 02.04.2008
☆☆☆☆☆☆☆☆ 好評連載中 by 伊藤美露 ☆☆☆☆☆☆☆☆
「極意で学ぶ 写真ごころ」(『アサヒカメラ』朝日新聞出版社)
2008年の5月号のテーマは「『分かち合う』写真表現へ」p.196~199
☆☆☆☆☆☆☆☆ 日本図書館協会選定図書 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆
『魅せる写真術 発想とテーマを生かす撮影スタイル』
著:伊藤美露 定価 : 2,079円 B5判/160P/オールカラー
ISBN 978-4-8443-5921-0
発行:株式会社エムディエヌコーポレーション
歴史という「生」の積み重ねへの感謝
奈良に足を運ぶ度に心が洗われるのは、自然や人間を超えた宇宙の意思に生かされている、という気持にさせてくれるものとの出会いがあるからです。
伝統の重みといえば月並みですが、身体行や芸を通して切磋琢磨をされてきた、僧侶や演者の方々の無数のかけがえのない「生」の蓄積と接することで、まさに日本の精神の核心に触れる思いがします。
私が奈良を取材している中で、常に魂を揺さぶられるのは、こう古代からの人々からの「思いの丈」に触れる瞬間です。過去との出会いでありながら、変わらない何か、未来にも続いてほしい何か_
それは私がテーマにしている「聖なるもの」たちへの敬虔な気持ちにほかなりません。
「見えないもの」でありながら、形に託された尊きものへの祈りであり、そして奉納の気持です。
こうした尊い気持ちを教えてくれるのが、私にとっては仏像であり、奈良の宗教行事であり、そして御能などの伝統芸能なのです。
これまで奈良というテーマを、NY在住時より足かけ5年がかりで、取材を進めてまいりましたが、これからは展覧会や書籍ほか、さまざまなかたちで発表していきたいと思いますので、世界の多くの方々に見ていただきたいと願っています。
さて、今月初めに、先月に続いて奈良の桜井の夕陽を撮りに行きました。
かの聖徳太子が見たであろう夕陽は、先月は日本最古の国立劇場跡の「土舞台」から撮りましたが、今月は土舞台を右手に眺める小高い丘から撮りました。
太陽が二上山の袂に半分に割れて沈むさまが、感動的でした。
山が「神格化」されたのは、太陽である「カミ」をお隠しになるからかもしれない、とそんなことを思ったほどです。
太陽をまたたく間に懐深くに抱きかかえ、世界が明日また眠りから醒めるまで太陽を休ませる、そんな太陽の休息の場所が山なのでしょうか....
この太陽とともに営み、沈んでいった無数の「生」への感謝をこめて
伊藤美露
text and photo by miro ito, all rights reserved.
sunset over sakurai, 02.04.2008
☆☆☆☆☆☆☆☆ 好評連載中 by 伊藤美露 ☆☆☆☆☆☆☆☆
「極意で学ぶ 写真ごころ」(『アサヒカメラ』朝日新聞出版社)
2008年の5月号のテーマは「『分かち合う』写真表現へ」p.196~199
☆☆☆☆☆☆☆☆ 日本図書館協会選定図書 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆
『魅せる写真術 発想とテーマを生かす撮影スタイル』
著:伊藤美露 定価 : 2,079円 B5判/160P/オールカラー
ISBN 978-4-8443-5921-0
発行:株式会社エムディエヌコーポレーション