MIRO ITO発メディア=アート+メッセージ "The Medium is the message"

写真・映像作家、著述家、本物の日本遺産イニシアティブ+メディアアートリーグ代表。日本の1400年の精神文化を世界発信

NYでの個展が10月15日から始まります (NY公立パフォーミンングアーツ図書館、1月5日迄)

2007-09-30 19:24:01 | Weblog
 [ご案内] NYでの個展が10月15日から始まります
 (NY公立パフォーミンングアーツ図書館、1月5日まで)

 "Men at Dance - from Noh to Butoh by Miro ITO:
 Japanese Performing Arts, Past and Present"

 伊藤美露 写真展「能から舞踏へ:日本の身体表現、過去、そして現在へ」
 開催場所: The NY Public Library for Performing Arts (Plaza Lobby-Wall Gallery),
 40 Lincoln Center Plaza, NYC, NY 10023 /ニューヨーク公立パフォーミングアーツ図書館
(2007 NY Butoh Festivalとのタイアップ展)

 開催期間: 2007年10月15日から2008年1月5日まで
 助成:国際交流基金 (JFK Grant)
 後援:在ニューヨーク日本国総領事館
 協力:Canon USA, Inc., IINO MEDIAPRO CO., LTD., Media Art League L.L.C.

 出品作品:合計50点
 舞踏30点(室伏鴻『Quick Silver』、Sal Vanilla - 蹄ギガ、KIK_07ほか『inter-active』)
 御能 20点(観世流武田志房『高砂』、武田友志『絵馬』、武田文志『敦盛』、
 金春流 金春穂高『翁白式』)

ご挨拶

 かつてNYで体験した「911」以来、身体を通して命の大切さを伝え、祈りや鎮魂、自らを高き世界に捧げるという行為を見える形にしようと、「祈りの身体」「奉納の身体」というテーマで、日本の身体芸術を追いかけてまいりました。

 このほどNYの舞踏フェスティバル(2007 NY Butoh Festival) 開催とタイミングを合わせ、来月より始まる個展「Men at Dance-from Noh to Butoh:Japanese Performing Arts, Past and Presen (能から舞踏まで)」におきまして、日本での4年がかりの撮影の成果の一端を、50点の作品にまとめて発表いたします。

  50点の作品の中で登場する、撮影にご協力くださった方々は、日本を代表する能楽師、前衛舞踏家の皆様方です。 御能の世界からは、観世流のシテ方(主役)の重鎮であられる武田志房(Yukifusa TAKEDA)氏をはじめ、その志房氏を師にシテ方を継がれているご子息の友志 (Tomoyuki TAKEDA) 氏と文志 (Fumiyuki TAKEDA) 氏。そして金春流シテ方として奈良を拠点に活躍され、春日大社・興福寺の薪御能では欠かせない存在である金春穂高(Hodaka KOMPARU)氏。
 また舞踏界では、いまや日本のみならず世界の舞踏家となった、舞踏のベテラン、室伏鴻(Ko MUROBUSHI)氏。気鋭の若手でサイバー空間における舞踏の可能性を追究してきたSal Vanillaの蹄ギガ(Giga HIZUME)、KIK_07の両氏など、舞踏のインターナショナルシーンをリードする方々です。

  この個展では、主に祈りと鎮魂、大いなるものへ捧げる身体という視点から、作品を組み立ててみました。
 御能では「高砂」「絵馬」「敦盛」(観世流)をはじめ、奈良の春日大社の薪御能で演じられる翁白式(金春流)を、それぞれスタジオで撮りおろしています。
 また舞踏では、2006年のヴェネチア・ビエンナーレ(ダンス部門)の公式イメージとなった室伏鴻の「Quick Silver」、六本木ヒルズのオープニングイベントで演じられたSal Vainnlaの「inter-active」 (2003)を、スタジオで撮影。
 御能の特徴である「気と集中力」を、スタジオでの美しい光の中の一瞬の動きの中に見出し、また舞踏では、無意識から電脳空間までに広がる存在の深みを身体に乗せて、モノクロームに近い色彩構成の中で切り取ってみました。

  同展は、NY公立Performing Arts図書館の主催により、第三回目となった「 NY Butoh Festival 」とのタイアップ展として、実現の運びとなりました。私にとっては「ポスト911」プロジェクトとして、「世界発日本精神文化」の第一弾になりますが、コンテンポラリーダンスのメッカ、NYで日本の御能と舞踏の600年に跨がる美の対比がどのように受けとめられるか、身体、そして日本への新たな関心が芽生えてくれることを願ってやみません。

 能から舞踏へ__そこには人間と見えない世界の繋がりや、無意識の宇宙ともいえる「大いなるもの」への祈り、聖なるものへと自らを捧げるという奉納の気持ちが「共通項」として息づいています。このたびの個展「Men at Dance - from Noh to Butoh」では、日本の身体表現の伝統と現在を紹介しながら、このことをテーマにしました。

 同展を通して「奉納」や「祈り」の日本発のヴィジョンが、宗教や民族の違いを越え、人類に共通する願いとして、伝わっていってほしいと思います。

 伊藤美露
 2007年9月吉日
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 Location: The NY Public Library for Performing Arts / Plaza Lobby -Wall Gallery
 40 Lincoln Center Plaza, NYC / NY 10023-7498 / Phone: (212)870-1630
 Exhibition Hours: Tues, Wed & Fri: 11 to 6; Mon, Thurs: 12 to 8; Sat: 10 to 6

 ---------------------- 日本図書館協会選定図書 -------------------------
 『魅せる写真術 発想とテーマを生かす撮影スタイル』
 著:伊藤美露 定価 : 2,079円 B5判/160P/オールカラー    
 ISBN 978-4-8443-5921-0
 発行:株式会社エムディエヌコーポレーション

911から6年ー鎮魂と追悼の祈り

2007-09-11 10:33:12 | Weblog
911から6年ー鎮魂と追悼の祈り

NYで体験した「September 11」から、今日でちょうど6年が経ちました。

かつてニュースキャスターの下村健一さんの依頼で、下村さんがキャスターを務めていた「ネクストステージ」(BSジャパン)という番組での放映用に、詩を綴ったことがありました。

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三つの選択

「その瞬間」に立ち遇ったことで、
NYの人々には大きな選択の時がやってきた。

人間世界の暗黒への「怒り」と「怖れ」を選択し、苦悩し続ける人。
感情で受け止められる以上の「憤り」を感じて「正義の戦い」に邁進する人、
そして「怒り」も「怖れ」も「憤り」も乗り越えて、
人類の新たな「愛」の連帯に目覚める人。

その3つの選択が、写真家である私自身にもやってきた。
写真家として「惨事」を「警告」として伝える人。
「悲劇」を「ドラマ」として切り取る人。
そして「惨事」と「悲劇」の向こう側に、
鎮魂と追悼の「祈り」を見つめる人。

私にできることは、ただひたすら平和のために、
カメラを通して「祈り」、地球を、そして人類を
愛し続けていくことだけだ。

NYではそれでも毎日くり返し、同じ選択が人々の心を駆け巡る。
「怒り」か「祈り」か?
「制裁」か「対話」か?
「戦争」か「平和的解決」か ...?

(詩:伊藤美露、BSジャパン「ネクストステージ:特集ニューヨークの『いま』/
ニュースキャスター、下村健一」 2001年10月6日放映より抜粋)

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その後、私は「鎮魂と追悼の『祈り』を見つめる」選択をし、
身体を通して、見えない世界への橋渡しとなるような作品を作りたいと思い、
日本に戻ってきました。

私が伝えたいのは、身体という「衣」を脱ぎ捨てたとき、魂的にはすべての人が繋がっていること。
草木のすべてに仏性をみる仏教、万物にカミをみる神道など、表現の仕方は違っても、世界のすべてにいのちが宿り、すべては支え合っていること。
このことにもう一度立ち還ることで、誰しも世界への愛、他者への愛を取り戻せるのではないでしょうか。

空が気づきとなるのも、人が大いなる存在に抱かれていることに目覚め、
大いなる自然との繋がりを、意識できるきっかけとなるからでしょうか。

同様に、身体を通して「いのち」というレベルから、
人間の存在の重みが改めて問われるとき、
初めてなにをなすべきかが見えてくるのかもしれません。

911から6年_。
今日も世界が少しでも新たな愛に目覚め、
平和への種をひとつでも育むことを願いながら、
鎮魂と祈りのために、
永遠へと向かう時間の中で、
光を見続けていきたいと思います。


空に鎮魂と追悼の祈りを捧げながら....
合掌 伊藤美露

2007/9/11
text and photo by miro ito, all rights reserved.
sky over kamiuma, 2007.9.7


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 著:伊藤美露 定価 : 2,079円 B5判/160P/オールカラー    
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野村万之丞さんのこと: 見えない本物を探る旅

2007-09-05 13:57:46 | Weblog
野村万之丞さんのこと: 見えない本物を探る旅

前回、癒しの日本文化の源について、ほんの少しばかり思いを巡らしましたが、海外で写真家・アーティストとして活動した後、立ち還ったのが日本文化です。
この3~4年間は、日本文化の中の祈りだったり、奉納だったり、聖なる世界を見えるかたちにしようと思い、日本の前衛から伝統を繋ぐ身体表現に絞って、日本で撮影してきました。

ドイツやNYに住んでいた私が、なぜ日本の伝統芸能に興味を持ち始めたかというと、そのきっかけは、911同時多発テロ事件です。テロ後のアメリカの大国の論理と世界の混沌の中で、日本文化から世界に対して「共栄共存」のメッセージを発信できないか,というのがその動機になります。

文化的な土壌が違う西洋に対してメッセージを発信しようとするとき、「癒しの哲学」である仏教への関心が深まり、すべての人間に共通する「身体」という土俵から、アートに凝縮された祈りや奉納のかたちを焙り出したい、と思うようになりました。

そのようなテーマを追いかけているとき、不世出の総合芸術家で狂言師の野村万之丞さんとの出会いがありました。
野村万之丞さんは、才能も思考も行動も、天才のみが持つ破格のスケールで、日本を代表するだけでなく、世界的な(そしておそらく歴史に残るような)人物でした。その万之丞さんは、中世の幻の芸能といわれた田楽の復興の後、仮面を通して世界を繋ぐプロジェクト「楽劇 真伎楽」を携えて、シルクロードを逆流する「マスクロード」を推進中に、3年前、44歳の若さで急逝されました。
その後万之丞さんの遺した作品のうち、私が撮影していた写真を、ご縁あって写真集や一周忌の回顧写真展をはじめいくつかの展覧会としてまとめたことが契機となって、日本文化にどっぷりと嵌まってしまった訳です。

野村万之丞さんとのご縁以来、御能や古武道、奈良の宗教行事ほか日本文化の深淵へと取材を進めてきましたが、それは万之丞さんが「見えないシン(神、真、心、信、親….)と呼んでいた「見えない本物」を探る旅となりました。

その一端をこの秋、NYにて「御能から舞踏まで(Men at Dance - from Noh to Butoh : Japanese Performing Arts, Past and Present) 」と題して、「The NY Public Library for Performing Arts」にて個展として発表します (10月15日から1月5日まで、40 Lincoln Center Plaza, NYC, NY 10023)。


さて空を見ていると、時折、野村万之丞さんのことを思い出します。
とくに台風の時は….

野村万之丞さん(本名:耕介さん)は、まさに台風のような人でした。
生前は「伝統芸能界の風雲児」などと呼ばれていたようですが、風雲児などという生温いものではなく、まさに行く先々で嵐を巻き起こす人でした。
嵐のように衝撃的なことを軽々とやってしまうだけでなく、本当に天のエネルギーと直結しているように、有名な「雨男」「雷男」「台風男」でした。天にそれだけ愛された人でした。

いつも大事な公演やお仕事のときには、大雨や雷、台風になったそうです。
案の定、3年前の葬儀のときも、最後の別れのとき、晴れていた空が急に泣き出し、大粒の雨が降ってきたことが思い出されます。最後の舞台となった六本木ヒルズでの公演も、降り続く雨の中でした。

私は雨や雪、霰さえが降っていても「晴れ」てしまう根っからの「晴れ女」なので、野村万之丞さんとは正反対ですが、行く先々で晴れてくれなかったら、写真家にはほとんど不向きだったかもしれません。

思えば、歴史とは、台風のような衝撃的な存在が時々現れて、見えない世界を暴き、次なる時代への橋渡しとなるムーブメントの種を植え付けて、それが一般の人々の心の中に深く実を結んでいくことで、連綿と作られてきたのだと思います。

万之丞さんの撒いた種である「楽劇 真伎楽」は、この秋、中国へ渡ります。
そして私の「見えない本物」を見つめる旅は、さらに続きます….


晩夏の雷雲を眺めながら…

伊藤美露
text and photo by miro ito, all rights reserved.
sky over kamiuma, 2007.8.20

 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
 『万歳楽ー大きくゆっくり遠くを見る 野村万之丞作品写真集』
 著:伊藤美露 定価 : 3,990円 大型本: 167ページ
 発行: 日本カメラ社 (2004/10)
  ISBN 978-4817920768
  野村万之丞さんのWebサイト http://www.tmdnet.jp

 ☆☆☆☆☆☆☆☆ 日本図書館協会選定図書 ☆☆☆☆☆☆☆☆
 『魅せる写真術 発想とテーマを生かす撮影スタイル』
 著:伊藤美露 定価 : 2,079円 B5判/160P/オールカラー    
 ISBN 978-4-8443-5921-0
 発行:株式会社エムディエヌコーポレーション
 http://www.MdN.co.jp/