「隠し身のしるし」展、トロントからシカゴへ
「隠し身のしるし(Signs of the Intangible)」展が在シカゴ日本国総領事館広報文化センター(Consulate-General of Japanese in Chicago JIC Hall)で始まりました(11月28日まで)。
この展覧会は、私が10年前に行ったNY公立舞台芸術図書館(リンカーンセンター)での展覧会「Men at Dance – from Noh to Butoh」(能から舞踏へ)を継承しつつ、現在世界巡回中の「光と希望のみち」展の続編として、東大寺の天平彫刻の最高傑作や伎楽面、春日大社の舞楽面の写真作品を加えさせていただき、「日本の1400年の舞と武の心体景観」を焙り出す展覧会として、再構成したものです。
日本とカナダの修好90周年を記念事業として、本年5月にトロント日系文化会館においてキックオフとなり、シカゴへ巡回することになりました。11月13日(月)には、アーティストトーク&ショートムービーの上映会を実施いたします。大変光栄なことに、伊藤直樹総領事にも、ご挨拶をいただきます。
また伎楽をバレエとして復興させた「伎楽バレエ」(踊り手:春双)も、シカゴでは二度目の発表になりますが、トロント、リオ、そして11月8日のメキシコに続き、披露させていただく予定です(芸術監督:伊藤みろ)。
シカゴへお立ち寄りの際には、ぜひ足をお運びくださいませ。(※詳細は、ブログテキストの最後に記載させていただいておりますので、ご参照ください。)
美術の起源を探る旅
さて、この15年間、日本の1400年の芸能史を紐解く思いで、奈良を中心に、有形無形の世界遺産・国宝・重要文化財を撮影・取材させていただきながら、「祈りと奉納の系譜」を、探求してまいりました。
もとより美術の起源には、象徴表現がその大元にあります。原始時代においては、自然の力への崇拝として、狩猟や子孫繁栄への願いのしるしとして、洞窟や岩壁に形象が描かれてきました。宇宙にみなぎる不可視の力を見える形で視覚化させるために、イメージの創造という、文化の根幹である象徴表現が生まれ、祈りの儀式が起こり、神話が語られ、原始宗教が始まりました。
聖なるものを目指すイメージの創造は、記号や文字を生み出し、文明を萌芽させました。そして古代のイメージの創造における頂点ともいえる、エジプトやギリシャの神話の世界においては、現世と神々の世界の交流のために、崇高なる美の世界が追求されました。神の観念の擬人化が行われ、人体像や半人半獣像が作られ、現実と聖なる世界は、奉納や儀式という「場」で結びついてきたのです。
こうした古代ギリシャの奉納像の伝統は、アレクサンダー大王の東方遠征に伴い、西アジアや中央アジアへと伝えられ、仏像の起源となりました。さらに伎楽や舞楽などの仮面芸能も、ギリシャが発祥とされています。
この度の展覧会は、2020年の東京オリンピック開催に合わせて、日本の1400年の有形・無形文化遺産の伝統の豊かさとシルクロードとのつながりを訴え、東西・南北の世界の心の連帯を訴求していくためのものです。
こうした趣旨のもと、仏像などの奉納像から伎楽面や舞楽面などの仮面、そして能や古武道、果ては舞踏、現代舞踊まで、私が25年以上、撮影しているテーマに他ならず、同展「隠し身のしるし」の根幹にあるテーマです。
トロントに次ぐ、シカゴ展では、名門私立大であるノースウェスタン大学でも、「隠し身のしるし」のテーマについて、11月16日に特別講義を行う予定です。
また2019年には、リオデジャネイロ国立歴史博物館へも、開催の提案中ですが、世界を東西南北へと縦断する、巡回を予定しています。
お力添えをいただいたご関係の皆様に、主催・共催者を代表して、厚く御礼申し上げます。
2018年11月吉日
伊藤みろ メディアアートリーグ代表
www.mediaartleague.org
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Exhibition: Signs of the Intangible
開催場所:在シカゴ日本国総領事館広報文化センター
Consulate-General of Japanese in Chicago JIC Hall / 737 N. Michigan Ave. Suite 1000, Chicago, IL 60611
http://www.chicago.us.emb-japan.go.jp
開催期間:2018年11月1日から11月28日
開催時間:午前9:00から午後5:00(月・火・木・金)
午前9:00から午後6:00(水)/土・日・祝日は休み
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Artist Talk & Short Film Screening by Miro Ito
イベント日時:2018年11月13日(午後6:00)
パフォーマンス:Gigaku Ballet by Shunso
(Music by Sukeyasu Shiba / Artistic Direction by Miro Ito)
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共催:メディアアートリーグ、一般財団法人 日本カメラ財団
助成:一般社団法人 東京倶楽部
後援:公益社団法人 日本ユネスコ協会連盟、奈良県ビジターズビューロー
写真&映像作品、文章:伊藤みろ(メディアアートリーグ)
英語編集:Andreas Boettcher (Media Art League, Toronto)
撮影協力(敬称略):東大寺、春日大社、奈良国立博物館
金春穂高(金春流シテ方能楽師)、武田志房・友志・文志(観世流シテ方能楽師)、
室伏鴻(舞踏家)、滑川五郎(舞踏家)、Sal Vanilla(舞踏ユニット)、春双(舞踊家)
音楽協力:芝祐靖
その他協力:キャノンマーケティングジャパン、イイノメディアプロ(機材協力)、Canon USA(プリント協賛)、佐河太心(掛け軸装丁)、新井工作所(額協賛)ほか
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