7月3・4日の両日、注目の中韓会談が行われた。中朝関係が冷え込んでいることもあり、中国の主席が北朝鮮より先に、韓国を訪問したのは、歴代主席の中では習主席が始めてであった。これも歴史の必然であろう。注目の共同声明には、「日本の歴史認識問題に関する言及」はなかったこともあり、韓国マスコミの反応は総じて「失望感」を表明していると報道されている。
確かに日米に対する両国双方の配慮もあって、共同声明の文言には盛られていないけれども、朴大統領の反日姿勢特に慰安婦・歴史認識問題に関する拘りは、何等変わってはいない。中国側もこの会談に合わせたかのように、日本軍の戦争犯罪を内容とする「戦争犯罪書面白書」なるものを出版したし、講演会等では習主席が、秀吉の朝鮮遠征時にも中韓が共に戦ったことを言及する一幕もあつた。習主席が、中韓の歴史認識に関する連帯感を強調し、韓国に対する寄り添いの姿勢を示したのも対韓外交上の配慮からであるようだ。一方、米中2足の草鞋を履かざるを得ない朴大統領の立場はより複雑なのだろう。中韓接近に関し、当方が知りたいことは、朴大統領が昨今問題視されて来ている「もう一つの歴史認識問題」についてどんな認識を持っているかと云うことである。
それは、朝鮮戦争当時における●米軍・韓国軍に対する国内の慰安婦問題であり、●20万人余の中共軍が参戦・侵略し同戦争で韓国人約240万人が犠牲になった歴史についての認識である。同大統領は、これ迄こうした「もう一つの歴史認識問題」について公的な認識を示してはいないし、韓国マスコミも殆ど取り上げていないのは何故か、疑問が深まるばかりだ。
現状では朴大統領は、米中両国からどちら向きの姿勢なのか「踏み絵」を踏まされているようで、唯一鮮明にしている反日の御旗を基軸とした外交路線を踏襲せざるを得ないのだろう。しかし、韓国が反日の御旗を掲げ続ける限り、日韓の政冶経済共に冷冷の影響が日本よりも韓国内で今後徐々に拡大されるのではないだろうか。近く中韓FTA協定の締結により中韓貿易拡大策が採られても、現状の深刻なウオン高がこのまま続けば、1997年以上の経済危機に陥ると韓国通経済識者の観方も出ている。
「体面」を重んじ、先進国化の道を歩む国の指導者は、このところ益々「親中・離米・反日」の方向性を強めているが、偏狭な「体面」や国論に拘らず、国内の現状と行く末を見定め、より大局的見地から近隣諸国との善隣友好の路線を模索して行くべきではなかろうか。いずれにしても今回の中韓蜜月を印象づけた会談は、双方の利害が微妙に絡んだ外交ショー的意味合いの強い会談だったと云うべきであろう。