気心は未だ若い「老生」の「余話」

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増税せず、税収増を図れるという公約の妥当性は?

2014-12-12 00:02:28 | 時評

総選挙戦も最終盤を迎えている。選挙の結果、●一強多弱の状況が更に進むのか、●逆に大いに見直されるのか●多弱の中でもどの党が伸びるのか等々、選挙予想も縷々報道され当方もそれなりに大いに関心を持っている。

ところで、野党各党が声高に主張している似たような政策の中で、唯一、観点を異にして、「消費税引き上げは延期ではなくきっぱり中止し、その対案として別の途による税収を目指すべし」だと大胆に公約している政党は共産党のみである。確かに、妙案だと評価する選挙民もいるだろう。一般国民に負担をかけなくても、年々増加する国の社会保障費を十分に賄えるという公約だからだ。

その要旨は、大企業や富裕層からの応分の徴税約20兆円、大企業の内部留保金の一部活用で更に約く20兆円、合せて約40兆円の税収により、増税なしで必要財源は十分確保出来、危機的な財政再建も可能になるというのである。

成程如何にも我々低所得者層にはそう願いたい気もする公約だ。だが、この公約は、国の財政政策として、対象にされている富裕層や大企業だけでなく、多くの国民の十分な理解と協力を得られる真に具現可能な政策なのだろうか。以前から大変疑問に思っている。

結論から先に云えば、この公約は、極めて独善的かつ強権的で、具現には多大の政治的軋轢と経済の停滞を招来することに繋がる政策ではなかろうか。一党独裁の国の政治体制下であれば、さして社会問題化することなく実施は可能であろう。

しかし、100歩譲って仮に「富裕層・大企業等特別増税及び特定企業関連内部留保金の部分徴収に関する税制改革法案」のようなものが、国会審議入りしたとしても、与野党合意のもと、粛々と審議・決議され、抜本的な税制施策となる可能性は、昨今の国会審議の無様振りから観ても、まずゼロに近いのではなかろうか。

国会議員を僅か5人削減する法案の審議さえ、大変難渋した国会である。仮に近い将来、与野党拮抗の院内構成になったとしても、前記公約の実現に至る道程は極めて厳しい茨道となるであろう。

疑問視する論点を更に進めよう。公約だから具体策は当然ある筈だが、残念ながら当方は、その公約に関する具体策を聞いたことも見たこともない。●どの程度の富裕層に、どの程度の累進課税を求めるのか●どの程度の規模や業績のある大企業に、どの程度の税率で、いつから、どのように徴収するのか●どの程度の内部留保のある大企業が、どの程度の額や比率で内部留保金を収めさせることにしているのか。疑問の範囲は広がるばかりだ。

この公約が政治問題化すれば、毎年過大な負担を強いられることになる富裕層や大企業からの批判や反発及び抵抗も当然噴出するだろう。大企業の海外進出、産業の空洞化が更に進み、国内経済の混乱・停滞を招くことになりはしないか。これは決して稀有な恐れではなく、当然憂うべき恐れである。

大多数の国民に負担のない政策は全て善作であるとは限らない。かの有名なケネディ大統領はある演説で「祖国があなたに何をして呉れるかを問うのではなく、貴方が祖国のために何が出来るかを考えて欲しい・・」と訴えたそうだ。

富裕層や大企業の経営者と雖もそのことは意識の中にある筈だし、多くの国民も「必要な相応の負担」の必要性を理解していると思う。いづれにしても、消費税に頼らなくても別の途で財源の確保・財政再建は可能だとする公約は、低所得者層には特に、一見・一聞しただけで妙案のように思えるが、実はこれこそ、問題点山積で非現実的な空論だと老生は感じている。