今年1月から6月の上半期において平年の予測を上回った「超過死亡者」の合計が、過去3年に比べて少ないことが厚生労働省研究班の推計で分かったと、9月30日の日経新聞が伝えています。
死亡数はここ数年高齢化で増加しており、2017~19年の上半期の超過分はそれぞれ2万人前後となっていたが、今年は最大7467人にとどまったと記事はしています。
都道府県別でみると、新型コロナウイルスへの感染が広がった東京都で最大647人、大阪府で最大426人など、平年に比べ統計的な上限を超えた死亡数は13都府県で確認されたものの、国全体では平年より減少した県が多く過去3年より少なくなったということです。
高齢化の影響によって、2019年の死亡者数は前年より1万9千人増え、約139万人となりました。
同年の上半期(1~6月)の死亡数は約70万7千人。しかし、今年の同期間では約69万人と(昨年よりも)2万人近く減っており、7月も減少傾向が続いていることから、同じ傾向が下半期も続けば年間で3万人程度減少する可能性があるとされています。
一方、新型コロナウイルス感染拡大によりウイルス性肺炎により数多くの死者が確認されている米国では、3~5月の死者数が例年より12万人余り多かったとする調査結果が10月1日に公表されています。
医学誌「JAMAインターナル・メディシン」に掲載された調査結果によると、3~5月の3か月間の米国内の死者数は、新型コロナ以外の死因を含め約78万1000人と予測死亡者数よりも約12万2300人多かったということです。
日本の超過死亡が減少しているという状況について、厚労省研究班の鈴木基・国立感染症研究所感染症疫学センター長は、「今年はインフルエンザの流行が小規模で、新型コロナ対策で他の感染症も減った影響ではないか。新型コロナによる超過死亡は海外と異なり多くないと思われる」と話していると記事はしています。
勿論、多くの感染者を出した東京や大阪などの都市部の状況を見れば、新型コロナウイルスへ感染症の影響が高齢者を中心に死者の増加として顕在化していることは(恐らく)事実です。
しかし、コロナウイルスへの感染を避けるための「新しい生活様式」の浸透により「コロナ感染症以外の死亡リスク」が下がったことで、全国的に見れば日本の死亡者は減少しているという(ある意味皮肉な)結果を生んでいるということでしょう。
この後、改めて様々な分析がなされるとは思いますが、実際、交通事故死者数は全国で明らかに減っており、(芸能人に関する報道などで注目される機会の増えた)自殺者数も減少傾向にあると聞きます。
また、2020年の上半期(1~6月)に全国の警察が認知した刑法犯の件数も、外出自粛の影響などにより、前年同期より5万6010件少ない30万7644件(15.4%減)だったと報じられています。
その他、マスク着用の習慣化や手洗いの励行などにより、インフルエンザなどの感染症による死者も減ることが予想されるほか、外食が減少することで(特にキノコやフグ、生肉など食べる機会も減るでしょうから)食中毒による死者なども減っていく可能性が高いと考えられます。
生活の不規則化やストレス、検診の自粛などにより、がんや循環器系の疾病など生活習慣に起因する疾病が今後増えていく可能性はあると思われますが、それにはしばらく時間がかかるでしょう。
そう考えれば、コロナウイルスが(少なくとも日本の社会に)もたらしたものは、決してマイナスの要素ばかりではない。「コロナと共に生きる」という生活は、私たち日本人にある種の「安全」をもたらしていると言っても過言ではありません。
もちろん、私たちが安全に暮らすためにはめにはまず、「コロナウイルス感染症にならない」ことが求められます。
しかし、そこのところさえ各自がきちんとケアすれば、日本人が通常生活を行っていくうえで生命に危険をもたらすリスクは明らかに減っているという現実を、もっと前向きに受け止める必要もあるかもしれません
さて、そこで問題になるのは、経済活動に制約が生まれている現状をどう乗り越えるかということと、個人の「やりたいことができない」というストレスとどう向き合うかということでしょう。
ICTや通信技術の進歩や活用によって、経済活動については何とかなりそうですが、やっかいなのは消費の拡大、ひいては経済の拡大をもたらす人間の欲求をいかにコントロールするかというところです。
旅行に行きたい、おいしいものを食べたい。素敵なものを手に入れたいし、めったにないような経験もしてみたい。個人の価値観は様々ですが、そうしたものへの欲望を満たしてくれるのがお金というもので、だからお金がたくさん欲しい。
宗教や封建主義に縛られていた社会に近代化もたらしたのがこのような「資本主義」であるならば、その資本主義を支えてきた「人間の欲望」そして「価値」という怪物にいかに対峙し、社会の進歩や発展につなげるかが(次の時代への)大きなカギを握っているということなのかもしれません。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます