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人口の東京一極集中を抑えることを目的に、政府は東京圏から地方に移住して起業する人を対象に最大300万円を支給する補助制度をつくる方針を固めたとの報道がありました。
費用負担が足かせとなって移住をためらう若年層を後押しするため、内閣府では移住者が中小企業に就職した場合にも最大100万を補助するとしており、そのための予算として84億円を2019年度の概算要求に盛り込むと伝えられています。
さらに政府は、移住とは別に地方で一定期間職に就いていない人向けの補助金も新設を検討する方針で、地方創生推進交付金を総額で2018年度当初予算比15%増の1150億円を計上するとしています。
制度の詳細は新たに発足させた有識者会議で検討するということですが、東京圏(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県)からそれ以外の地方への移住者を対象に、地方創生推進交付金を活用し(財源は)国と地方自治体で半額ずつ負担することになるようです。
総務省の統計では、東京圏の1都3県で転入者が転出者を上回る「転入超過」は2017年時点でおよそ12万人とされており、4年連続で10万人を超えています。
「地方創生」を掲げる政府は2014年に、2020年までの6年間で東京圏と地方の人口の移動を均衡させると閣議決定していますが、一極集中への歯止めは一向に収まる気配がありません。
都市から地方への移住のための補助金支給を巡っては、政府の「地域魅力創造有識者会議」が「経済的負担の軽減策として、支度金や都会と地方の所得格差を埋める財政的な支援が必要」との提言をまとめています。
しかし、(ある意味「禁じ手」とも言える)個人への高額な補助金の支給には「バラマキ」との批判の声が上がる可能性もあり、制度の実効性が課題となっています。
また、国全体で考えれば、(都市部を含めた)全国で人手不足が本格化する中、主に都市部で納税された税金が、こうした形で地方に還流されることに違和感を持つ人々も多いかもしれません。
改めて人口の分布を見てみると、2017年の東京圏の人口は3643万9000人と、全人口の約3分の1が(東京圏に)集中していることが判ります。
経済的にも(少し古いデータになりますが)2014年度の東京圏のGDPは1兆6167億ドルと韓国全土のGDP1兆4170億ドルを上回り、ニューヨーク、ロサンゼルスに次ぐ世界第3の経済規模を誇っています。
日本中の人やカネを飲み込み、世界を相手に日本経済を引っ張って行こうという東京に対し、こうした流れに竿を刺そうと一人頭100~300万円の公金を費やすことにどれほどの意味があるのかは、確かに十分検討する必要がありそうです。
東京圏への転入超過の大半は10代後半と20代の若者で、進学や就職がそのきっかけだということです。政府はその流れを「好ましくないもの」として否定しているわけですが、若者が東京の暮らしにあこがれ一度は東京で暮らしたいと考えるのを、邪魔する権利は誰にもないでしょう。
むしろ、もしも(新天地としての)東京を若者が目指さなくなったとしたら、それこそが日本の発展にとって、最も憂うべきことかもしれません。
さて、(それはそれとして)若者は何故に東京の街に惹かれ、故郷を離れるのか。その理由は(恐らく)「地方には仕事がないから」というばかりではありません。
折からの労働市場のひっ迫により、地方部の人手不足も次第に顕著になっています。家賃だって物価だって生活環境だって、(多分)地方の方がよほど割安で暮らしやすい環境にある事は間違いありません。
それでも若者が東京に流れるのは、(言い辛い話ですが)一言で言えば「地方に魅力がない」からということではないでしょうか。
代々続く一部の声の大きい人たちが発言力を持ち、古い考え方を若者に押し付け美味しいところを占有している地方都市や農山村に彼らの居場所はありません。
例え100万円の札束をいくつか積み上げられても、(最初から故郷に戻ろうとしている人達は「ラッキー」と思うかもしれませんが)都会に出たいという若者の想いを押しとどめることはできないでしょう。
そして、年寄りや都会に暮らすエリートたちが、税金を使って(坂の上の雲を目指す)彼らの決意や望みを断とうとすることが、「大人」として適切な姿勢かどうかは改めて指摘するまでもありません。
中国の文化大革命やカンボジアのポルポト政権の例を引くまでもなく、若者をむりやり地方に押し込めようとしても、それが大人の思う通りに上手く行ったためしはありません。
いくら札びらを切っても、地方が若者にとって(本質的に)魅力あるものとならない限りその流れが根本的に変わることはないということです。
そう考えれば、小手先の策を弄するよりもむしろ、地方に暮らす人々が本気で地域を若者にとって魅力的なものにしていく努力を積み重ねることこそが、地方の活性化にはよほど必要だと考えるのですがいかがでしょうか。
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