5月18日のYahoo News への寄稿において、ITビジネスアナリストとして活躍中の大元隆志氏が、社会の高齢化とテレビというメディアのこれから(将来)について非常に面白い視点を提供しています。
大元氏は、5月10日のYahoo Newsに配信された日本テレビ㈱メディアデザインセンターの太田正仁氏へのインタビュー記事において、今後の日本の社会の高齢化がテレビ(の特に視聴率)に与える影響について尋ねています。(因みに、このインタビューは合計37万PVに達し、予想外ともいえる大きな反響があったということです。)
質問に対し太田氏は、インターネットの普及などにより一般的には視聴者の「テレビ離れ」を指摘される機会が増えているものの、実際のところテレビ局関係者の認識では、今後はテレビ視聴率は「増える」可能性があると答えています。
現在、60歳以上の日本人のテレビ視聴時間は1日に6~7時間もあり、他の世代の実に2倍に達しているというのが太田氏の見解の根拠です。一世帯あたりのテレビ台数の減少や、若年層のテレビ離れが加速したとしても、今後さらに人口構成の高齢化が進む中で「テレビの視聴率は微増するであろう」というのが業界の認識であると大田氏は言います。
さて、この「これからシニアが増えればテレビの視聴率は増える」という太田氏の予想に対し、インタビュー公開後のWeb上のリアクションには「反対意見」が多かったと大元氏は述べています。記事によれば、中でもネットリテラシーの高い人からの反対意見が多く、特に「今の40~50歳代はパソコンもスマホも使えるし、この世代がシニアになったら、テレビの前になんて居ないだろう」という主張が多く見られたということです。
こうした指摘を「もっともだ」としながらも、大元氏は最近の「視聴者」と「テレビ」の関係性の変化に着目し、これからシニアが増えればテレビの視聴率は増える可能性について以下のとおり説明しています。
大元氏によれば、今、テレビの前には「四種類の人」が存在しているということです。
一つは、文字通りの「視聴者」です。従来からいる「テレビ番組」を見るためにテレビをつけている人であり、現在のテレビの広告単価の重要な要素となっている人達です。
二つ目は、先進的なテレビ局で昨今注目されるようになった「ユーザ」と呼ばれる人たちの存在です。テレビをみながら、スマートフォンやPCを使って「テレビに能動的に参加する」人達 のことを指しています。
三つめのカテゴリーは、テレビを見て買い物をする「消費者」です。テレビで紹介された商品は良く売れる。消費者としての目線でテレビ番組を見ている人達の存在です。
そして四つ目が「生活者」だと大元氏はしています。「まず、テレビを点ける」という生活習慣でテレビを点けている人達が一定数(それもかなりの割合で)存在している。彼らにとって「テレビは見る物」ではなく「生活空間に存在する装置」として位置づけられているというものです。
この「生活者」にとって、テレビは「暖炉」のような存在ではないかというのが大元氏の認識です。「テレビ」を囲んで家族と食事をしたり笑ったりする「テレビのある家庭」を経験してきた世代にとって、リビングにあるテレビは、自然と家族がリビングに集まってくるという「なんだか点いているだけで安心する体験」が刷り込まれている稀有な存在だと大本氏は指摘してきしています。
当然、テレビの前からネットへと移行する時期はかなりの確立で訪れる。「自分が楽しめることが一番」という若い世代にはネットが強さを発揮するだろう。しかし、「家族が楽しめることが一番」と考えるステージへとシフトしたとき、人はきっとまたテレビの前に戻ってくるだろうと大元氏は言います。
今後増加が見込まれるこうした「生活者」がテレビに求めていることを理解し、「家族で見て楽しめる」「世代を超えて楽しめる」コンテンツ作りとブランド作りが出来たならば、きっとライフステージの変化と共に、生活者はテレビの前に戻ってくる。テレビを必要とするそうした生活者に対し、コンテンツの制作者は「テレビが何を提供出来るか」をよく考えるべきだとする大元氏の指摘は、これからの時代の社会や家庭を読み解く上で多くの示唆を与えてくれていると感じました。
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