MEMORANDUM 今日の視点(伊皿子坂社会経済研究所)

 伊皿子坂社会経済研究所のスクラップファイルサイトにようこそ。

#2074 人口激減と日本経済

2022年01月27日 | 社会・経済


 メディアが新型コロナの感染状況を報道する姿ももはや日常の風景となったウィズコロナ、ポストコロナの世界において、主要国の共通課題として(次に)大きくクローズアップされてくるのは人口減少問題と言ってもよいかもしれません。

 このほど発表された「令和2年国勢調査結果(確定値)」によれば、2020年10月1日現在の日本の総人口は1億2614 万6099人で、前回調査(2015年)から94万8646人減少。減少率こそ2015年〜2020年で0.7%減と、1920年の調査開始以降初めての人口減少となった2010年〜2015年の.8%減をわずかに上回るものの、毎年平均0.15%、約20万人が減少している状況に変わりはありません。

 特に減少が著しいのが15歳未満人口で、前回調査から91万9040人、率にして5.8%の減少を見ています。これはどういうことかというと、全世代の人口減少数のほとんどを15歳未満人口の減少が稼ぎ出しているということ。15歳未満人口は1980年調査の2750万7078人をピークに一貫して減少を続けており、少子化に歯止めがかかっていないことは明らかです。

 こうした状況に、政府は妊娠、出産支援から子育て支援など、子ども政策を一元的に所管する「こども家庭庁」を23年度に創設し、少子化・人口減少問題の司令塔にする考えを示しています。しかし、従来とは次元の違う大胆な対策を打たない限り、(行政機能の改変だけでは)世界的に進む少子化の傾向を変えていくのはなかなか難しいことでしょう。

 これから先、日本の少子化・人口減少はどのような道筋をたどっていくのか。1月5日の「サンデー毎日×週刊エコノミストOnline」に「総人口3000万人台の厳しい近未来 東京都は人口増でも消費激減」と題する記事が掲載されていたので、参考までに(この機会に)紹介しておきたいと思います。

 国立社会保障・人口問題研究所の推計(「日本の将来推計人口(2017年)」)によれば、日本の総人口は、2015年の1億2709万人から、50年後の2065年には8808万人となり(出生中位・死亡中位ケース)、さらに50年後の2115年には5055万人に半減するとされている。記事によれば、これは日本に定住する外国人人口も一定数盛り込んだもので、(出生率の推移によっては)なお過大との評価もあるということです。

 記事において人口経済学が専門の加藤久和明治大学教授は、「おそらく日本の人口は100年後には現在の3分の1程度になるのではないか」と、さらに厳しい見方を示しています。

 日本の人口は、明治維新時(1868年)は約3380万人、大戦終戦時(1945年)で7199万人だったが、同じ3000万人台でも明治維新の頃は若い世代が人口の多くを占めている。人口構成の違いを考えれば、これから訪れる少子高齢化の社会とは全く景色が異なるというのが記事の認識です。

 こうした数字を前に、今後の人口急減は日本経済にこれまでにない大きな影響を与えることは間違いなさそうだと記事は指摘しています。国内消費市場は、2015年の158.4兆円から、2050年には121兆円に減少する。特に実店舗購入額は、(少子化や高齢化による消費の低迷で)145.9兆円から64.1兆円まで激減するだろうと記事は見ています。

 一方で、インターネット通信販売など電子商取引(EC)を活用した購入額は大きく伸びて、12.4兆円から56.8兆円に拡大する可能性が高い。総人口は2015年の1億2709万人から、45年1億642万人となるが、国内消費市場規模は、実店舗購入に限れば81兆円もの減少を見ることになる(だろう)ということです。

 個別にみれば、消費額が最も大きく落ち込むのが東京都(8兆6991億円減)。これに神奈川県(5兆8754億円)、大阪府(5兆6898億円)と続くと記事は試算しています。こうした状況に前出の加藤教授は、「若者層の人口が多ければ、多様性が広がりそれが市場創出、市場拡大につながるが、高齢者の市場は画一的で拡大しにくい」と指摘しているということです。

 少子高齢社会は社会の活力を奪い、経済活動・消費活動の停滞は経済全体に強い負のスパイラルをかける可能性があるということでしょう。さらに言えば、社会保障費の増加は特に若い世代の可処分所得の減少を招くほか、厳しい財政政策が強いられた結果、政府支出や公共投資も大きく削られていく可能性も高いと思われます。

 これから先、人口減少や高齢化がどんどん進めば、追い込まれた中で打てる経済対策はさらに限られてくるでしょう。そうなる前に、できることは何でもやる。少子化対策になり振り構っていられない状況にあることを、私たちはもう少し自覚した方がよいのかもしれません。 



最新の画像もっと見る

コメントを投稿