6月15日に閣議決定された政府の「骨太方針」に、外国人の新たな在留資格の創設が盛り込まれました。
これは、これまで原則として認めてこなかった単純労働の分野でも外国人に対し事実上就労の門戸を開くもので、外国人労働政策の大きな転換点となるかもしれません。
現在、景気が拡大基調にあることを背景に、産業の各界では人手不足が大きな課題となりつつあります。少子高齢化の進展で地方自治体の半数で「消滅可能性」がささやかれる中、労働力不足は全国各地でさらに深刻さを増すことが予想されています。
そういう意味で言えば、今回、政府が打ち出した海外からの労働者受け入れは(選択の余地のない)時代の要請といえるかもしれません。
実際、外国人労働者はこの5年で2倍近く増え昨年10月時点で約128万人に上ります。しかし、(建前上は)その4割が就労を目的としない留学生と技能実習生という位置づけです。
外国人労働者の存在が特に目につく現在のコンビニ業界や建設業界などを見ても、こうした「いびつ」な現状を是正していく必要があることは言うまでもありません。
政府が考えている新たな在留資格の対象は、介護や農業、建設、宿泊、造船の5つの分野で、来年4月以降、2025年までに50万人超の受け入れを見込むというものです。
もう少し詳しく見ていくと、直近(2017年12月末)の日本の就業者数は6531万人で、外国人労働者数(2017年10月末)は前述のように127万人ですから、日本の就業者の約2%、およそ50人に1人を(既に)外国人が占めていることが判ります。
また、過去5年間に日本人の就業者は250万9千人増えていますが、そのうち外国人が59万6千人ということですので、増加分の4人に1人が外国人だったことになります。
因みに、現在の外国新労働者の導入状況を業種別にみると、製造業では増加分の30.2%と約3分の1を外国人が占めています。また、卸・小売業では13.0%、宿泊・飲食業では12.3%と、実生活の身近な業種で外国人労働者がいなければ立ち行かない状況が生まれていることが判ります。
こうした状況について6月25日の時事通信社「官庁速報」は、厚生労働省の幹部の声として、「既に技能実習生制度でも事実上の『移民化』が進んでいる」との指摘を紹介しています。
日本にとっての外国人労働者は、その規模感から言って、日本の経済・社会になくてはならない存在になっています。しかし、「骨太方針」は、外国人受け入れを拡大しその期間を10年にまで伸ばしているにもかかわらず、彼らに家族の帯同を禁じている。
この点について先の厚労省幹部は、「根っこで(外国人への)人権意識が欠落している。自分たちに都合よく外国人労働者を利用しようとしてはいないか」との懸念を表しているということです。
一方、過疎地域を支える地方の首長などと外国人農業実習生の話をしていると、「ああ、農家でやっている嫁取り制度のことか」と理解されることが多いと記事は指摘しています。
そこには、女性実習生に対する現場でのリアルな感覚があり、少子化が進む地方の実情を生々しく突き出される気がするということです。
現実の世界でアジア全体に視点を移せば、経済発展と社会の成熟化が進み、各国間で労働力獲得競争が始まる気配も漂う。今後は実際に「嫁に来てもらう」ための競争が始まるのであり、外国人に対する意識が変わらなければ淘汰されるだけだと記事はしています。
確かに日本の現状を鑑みれば、外国人を単なる「労働者」として受け入れるだけでなく、共に暮らす隣人として受けとめていく必要があるのは言うまでもありません。当然そのためには日本のコミュニティを形成する一員としての整理が必要で、社会制度の面から見ても権利だけでなく義務も果たしてもらうことが求められると考えられます。
これから先、50万人、100万人という単位で外国人労働者が日本の社会に入ってくるとすれば、日本国内で結婚したり、子供が生まれたりという状況も当たり前となるでしょう。
子供の教育や言葉の問題、そして納税者である彼らの(地方参政権なども含めた)社会的な権利に関する問題と、リアルに向き合っていかなければならなくなるのも恐らく時間の問題です。
果たして私たち日本人には、地域のコミュニティの中で外国人と共に暮らす日常生活が普通にイメージできているのか。
現実が先行している現在の姿に、少しの不安と戸惑いを覚えるところではありますが、まずは現状を受け止めて、混乱が少しでも小さくて済むような対策を練っていく必要がありそうです。
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