「男女共同参画白書(令和4年度版)」によれば、今からおよそ40年前の1985年時点において、妻が64歳以下の世帯のうち専業主婦世帯は936万世帯あり、共働き世帯の718万世帯を大きく上回っていたとされています。一方、1990年代に入るとその構成比は同程度となり、直近の2021年には共働き世帯が1177万世帯と、専業主婦世帯の458万世帯を大きく上回っているということです。
つまり、現在の日本において「専業主婦世帯」の割合はわずかに28%程度に過ぎず、その2倍以上が「共稼ぎ世帯」だということ。しかし、この見方は正確ではないと、コラムニストの荒川和久氏は指摘しています。(「夫婦二馬力で稼げばいい」と言うが…。専業主婦夫婦が減っている分だけ婚姻数が減っているという事実」(Yahoo news 2023.4.14)
なぜなら、この共稼ぎの中には、週1回1時間でもパートで働いた場合も含まれているから。パート自体は立派な労働であっても、基本的には家計の収入の助けとして補助的にやっているものだとすれば、それはフルタイムで就業している妻とは別物として考えることもできるということです。
実際、全夫婦世帯における、フルタイムで就業している妻がいる世帯の割合は1985年から2021年にかけて、35年以上もほぼ3割で変わっていないと氏は言います。一方、完全専業主婦世帯は減っているが、その分、妻がパート就業している夫婦世帯が増加している。つまり、昨今の「女性の就業率が増えている」という指摘は、あくまで「パート主婦が増加している」という意味だというのが氏の見解です。
因みに、フルタイムで妻が就労する世帯は、割合だけではなく、実数もほぼ不変だと荒川氏はしています。これは(別の見方をすれば)、皆婚時代だった1980年代も3割の夫婦は妻がフルタイムで働く夫婦であったことを意味している。現在、婚姻数が激減しているが、それでもフルタイムで働く妻の割合は約3割と一定で、社会情勢の変化の影響を大きく受けている様子は見られないということです。
さて、(結局のところ)日本の女性のうち、結婚し家庭を持った以降も「フルタイムで働き続けたい」と考え「フルタイムで働き続けられる」環境下にある女性は約3割に過ぎず、残りの約7割は「働かなくてもいいかな…」「フルタイムはちょっと…」というところに落ち着いているということでしょうか。
ともあれ、フルタイム・パートタイムを問わず、仕事を続ける女性がかなり一般化しているこの時代。それでは、実際に仕事に就いていない女性たちはどのような意識でいるのか。
5月7日のマイナビニュースに『女性の非就業理由、「経済的に働く必要がない」と答えた割合は?』と題する記事が掲載されていたので、参考までにここで触れておきたいと思います。
リクルートの調査研究機関『ジョブズリサーチセンター』が実施した、「女性の就業に関する1万人調査2023」(2月14日~20日:全国18~69歳の女性1万人を対象にインターネットで実施)の調査結果を記事は紹介しています。
記事によれば、非就業者の女性(3,980人)に、今後の就業意向について聞いたところ、約3割に当たる30.7%が「すぐにでも職業を持ちたい」「よい仕事があれば職業を持ちたい」と回答したとのこと。実際に仕事探しをした人は17.5%で、そのうちの6割は「仕事探しをしたが見つからず、「現在も仕事探しの最中」「現在は仕事探しをやめている」と回答したということです。
これは、現在は非就業でも、「可能であれば働きたい」と思っている人、「実際に仕事を探している人」が一定数はいるということ。必ずしも積極的に非就業を選択しているわけではないこと示しているというのが記事の認識です。
一方、非就業者の「現在、働いていない理由」を聞くと、最も多かったのが「家事、育児、介護などで働く時間がないので」(18.5%)、次に「経済的に働く必要がない、働かなくてもやっていけるので」(13.6%)が続き、3番手が「仕事をする自信がないので」(13.5%)だったと記事はしています。
特に、子育て世代の30代・40代では「家事、育児、介護などで働く時間がないので」が多く、ブランク期間が長くなるとともに「仕事をする自信がないので」の回答が増えていく傾向が見られた。また、希望就業時間に関しては、「4時間程度」を希望している人が多いこともわかったということです。
さらに「就業に当たって不安に感じること」について尋ねたところ、「人間関係においてうまくやっていけるか」(41.9%)が最も多く、「体力面で感じる不安」(40.2%)が続いたと記事はしています。「自分には何ができるかわからない」「仕事をするにあたって足手まといにならないか」といった不安も多く、特に就業意向の高い「すぐにでも職業を持ちたい」層にこの傾向が見られたということです。
さらに仕事を選ぶ際に重視する項目の上位には、「安心して働けそうであること」(72.9%)、「休暇をとりやすいこと」(67.5%)、「通勤の便が良いこと」(67.4%)などが並び、いわゆる「やりがい」や賃金などにはあまり目が向いていないことがわかります。また、「たいへん重視する」「重視する」と回答した項目では、「安心して働けそうであること」(22.9%)、「休暇をとりやすいこと」(20.8%)、「長く働けそうであること」(17.2%)などが多かったということです。
さて、こうした調査からは、実際に非就業の状態にある(多くは「専業主婦」と呼ばれる)女性たちの間では、就業を求める切迫感や強い意欲があまり感じ取れないというのが、多くの人たちの感想かもしれません。
女性の経済的自立や男女共同参画が声高に叫ばれることの多い昨今ですが、もとより「女性活躍」の機会が就業先などの経済活動の場だけにあるわけではないことを、こうした調査結果からは改めて感じさせられるところです。
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