♯947 結婚相手に求める条件

　結婚相談所や情報提供などの婚活支援サービスを全国展開する「パートナーエージェント」が、今年2月に25歳から34歳の独身女性約2000人を対象に「結婚相手に求める条件」をテーマにアンケートを実施した結果が、11月3日の「週刊朝日」誌に掲載されていました。

　その1位は「優しい」で74.3％、2位は「暴力をしない」（72.3％）、3位「価値観が合う」（71.1％）、4位「借金をしない」（68.1％）、5位「浮気をしない」（64.1％）と続きます（いずれも複数回答可）。

　一方、バブルの時代は「三高」などと言われた「高収入」は29.8％で24位、「身長が自分より10cm以上高い」は23.9％で28位、高学歴はわずか8.8％で27位に過ぎなかったということです。

　確かに、結婚相手に優先順位を付けるとすれば、暴力を振るわないことや借金をしないこと、浮気をしないこと、健康であることなどが前提条件になるのは判りますが、それにしても世の独身男性にとっては（ここに来て）結婚へのハードルが随分下がったようにも思えます。

　果たして男子にとって世の中は、そんなに甘いものなのか。もしもそうならば、なぜ男性平均初婚年齢や生涯未婚率は上昇の一途をたどっているのか。

　「週刊朝日」（11月3日号）では、今回のアンケート結果に関連して「恋愛は家電選びと同じ？イマドキ女子が求める「3NO」男とは」と題する（ある意味）興味深い記事を掲載しています。

　経済の停滞や若者の働き方の変化などで結婚相手に高望みをしないという傾向が強まったことで、高収入、高学歴、高身長の「3高」に代わる新たな3要素として「3NO」が注目されていると記事は記しています。

　結婚相手に求める3つの「NO」。これはすなわち、「暴力をしない」「借金をしない」「浮気をしない」のことを指すものです。

　何やら「当たり前」のことばかりのように聞こえますが、見た目に加え、リーダーシップや経済力、学歴などの将来性などの条件が相対的に下がってきている理由について、記事はまず、現代は夫婦の共働きが当たり前の時代であり、結婚を目指す女性たちも男性の経済力などには（これまでほど）重きを置いていないことを挙げています。

　むしろ、彼女たちにとって必要なのは「お金」よりも「癒やし」であり、パートナーには浮気、暴力、借金をしない安心感を求めている。社会進出によってストレスが溜まる中、生活を共にする相手に癒やしを求めるのは当然のことだという指摘です。

　また、取材から、男性と対等でありたいという思いから「3NO」を重視するという女性の姿も見えてきたと記事は説明しています。

　自分に自信があるイケメンで高収入の男性は、自分好みの形で女性を隷属させようとする。浮気を繰り返したり、「俺が養ってやってるんだ」と高圧的な態度をとられたりするようなことを考えれば、最低限「3NO」がそろっている男性の方がいいという考え方だということです。

　さらに、SNSの浸透などで、誰もが情報を得られる環境が「3NO」を引きつけると分析する向きもあると記事はしています。

　結婚生活に関する情報氾濫し、他の家庭との比較が容易になっている。そのため、「人と比べて恥ずかしくない結婚をしなければいけない」という思いが強くなり、より堅実な男性を求めるようになっているということです。

　そうした観点に立てば、暴力、借金、浮気が3大離婚原因であることは明らかで、そこのところは何としても譲れない。事実婚や別姓婚がはやっていることでもわかるように、結婚にリスクを負いたくないのが若者の結婚観だと記事は説明しています。

　記事はこうした昨今の女性たちの結婚相手選びについて、もはや「恋愛」や「好きなタイプ」などではなくて、（性能や価格などの条件で選ぶ）家電製品のようになっているのではないかとしています。

　彼女たちにとっては、結婚ばかりでなくあらゆる場面で「守り」に入ることが習慣化されている。そしてそのことが、まず「最低ラインを引く」という態度につながっているのではないかという指摘です。

　さて、こうして、女性側のハードルは下がり続けているとしても、結婚に踏み切れない男女が増えているのは何故なのか。それ以上に、結婚によって縛られることを恐れ、躊躇する男性が多いということでしょうか。

　「結婚」への期待感が下がり、コスパの悪いことと思う人が増えているのか。それとも、男女それぞれが自分に自信を失ってきているということか。いずれにしても、男性にとって「３NO」さえクリアすれば誰でも結婚が上手くいくワケでないことは自明です。

　果たして、これからも「3NO」時代は安泰なのかどうなのか。それとも新たな条件が台頭するのか。先のことはわからないにしても、女性主導の条件に男性が振り回されるのは世の常だと（ある意味突き放した形で）結ばれたこの記事を、それなりに楽しんで読ませてもらったところです。