MoiMoi。のココデハナイ ドコカ。               

「この世界には私が撮らなければ誰も見たことがないものがあるのだと信じています」by ダイアン・アーバス。   

沈みかけた気分の時はショートストーリーでも書いてみる。

2014-06-26 | ショートショートストーリー。

『あの時、見た潜水艦』by MoiMoi。

子どもの頃に1度だけ行った事がある湖。

湖のちょうど真ん中あたりに島があった。

その島まで自分でボートをこいで行った時、かすかに湖底に何かを感じた。

誰かが僕を呼んでいる。

僕は泳ぎが得意ではなかった。

なので潜る事などまったくできなかった。

でも、その湖底には潜水艦が沈んでいると思った。

なんで潜水艦だと思ったのだろうか。

あの頃の湖は奇麗だったが、今はどうだろう。

近くに外人村があった。

そこにいた外国人の女の子と少し仲良くなった。

彼女はハーフだったので日本語が出来た。

名前はジュリアだったかジョアンナだったか。

あのボートに彼女は乗っていたのだろうか。

記憶はすでに曖昧になっていた。

行ってみよう、あの湖へ。

汽車は目的の駅に向かってゆっくりスピードを落としていった。

村の様子は、あの頃とほとんど変わっていない。

まるで昨日のように記憶がよみがえって来た。

駅前にまだ本屋があった。

隣の郵便局もだいぶボロくなっていたが健在だった。

と言う事は、当時泊まった旅館もあるかも。

ホテル形式の旅館は湖畔にあった。

湖は旅館の敷地内にあるようなもんだった。

駅から旅館があった方向に歩いて行った。

駅から湖までは二キロぐらいある。

湖が見えたら左折。

大きな木が目印の旅館。

「台東旅館」は存在していた。

少し坂を下って行くと玄関があった。

玄関脇には駐車場があったが車は一台も停まっていなかった。

夏は混んでいるかと思っていたが、やはり寂れた土地なのだろう。

観光客がいない方がこちらとしては楽なので特に問題は無い。

玄関入ると正面に小さな絵が飾ってあった。

潜水艦の絵。

驚いた。

旅館の人に、なんで潜水艦の絵が飾ってあるのか聞いてみたら、昔、家族で泊まりに来た子どもが描いた絵だと教えてくれた。

僕は絵が描けない。

僕以外に湖底に潜水艦を感じた、子どもがいたと言う事だろーか。

荷物を置いて、さっそく湖まで行き、ボートを借り真ん中にある島まで漕いで行った。

大人になってからも泳げない。

何かあっても潜れない。

誰もいや何も僕に呼びかけて来ない

何も感じない。

島にたどり着いたが、そのまま引き返そうとした、その時、突然波が起こり船が大きく揺れた。

島で遊んでいた女の子が、幽霊と遭遇したようなビックリした顔で、こっちを見た。

何が起こったのかと後ろを振り返ると、潜水艦が浮上していた。

それも2隻。

小さい方の潜水艦は、まるで親子のように大きな潜水艦に寄り添っている。

大きい方の潜水艦は僕を見つめているようだった。

女の子が

「ママ!ママ!」と大きな声で母親を呼んだ。

「どーしたの?何があったの?」

大人には見えていないのか、母親は平然としている。

でも僕には見えていた。

そのあと、潜水艦はゆっくり潜り始め目の前から消えてしまった。

僕が初めて潜水艦と出会った時の話はこれでおしまい。

これ以降、潜水艦は時々目の前に現れる。

Copyright(C)2014 MoiMoiAll rights reserved.


 




 









コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« はみ出しもんですから。 | トップ | 今朝はこんなの書いてみた。 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

ショートショートストーリー。」カテゴリの最新記事