映画「怪物」 監督:是枝裕和 脚本:坂元裕二 音楽:坂本龍一
ネタバレありです、ご注意ください。
感動した
素晴らしかった
という陳腐な言葉しか
持ち合わせていないのがもどかしい。
是枝監督の答えを明確に示さない
撮り方はこれまでと同じ
なぜそうするのか
是枝監督じゃないからわからないけど
答えは自分の中に見え隠れするものなのだろう。
そうとらえてきた。
といっても監督の作品を見るのは3作目だ。
今作は、脚本を私の大好きな坂元裕二氏が書いている。
それは、これまでの是枝監督作品とは
違うなとはっきりとわかるものだった。
最初は母親目線で始まる。
母親から見た事実の描写。
それが母親にとっての真実。
そのつもりで観ている自分がいる。
何も間違っていない。
母親とはそういうものだろう。
私だってそうすると思う。
もしかしたらもっと早く学校に行ったかもしれない。
もしかしたら学校はすっ飛ばして
教育委員会に行ったかもしれない。
学校の対応は
もう、イライラさせられる。
担任にも、失望する。ハズレだと思う。
それはもう本当に最低だと感じる。
そういう真実だった。
堀先生からみた事実は
堀先生の真実。
彼は、彼の見たことを紐解いて
真実を知ろうとする。
様子がおかしい、と感じたら
生徒に正す。
その場面しか知らないのだから、
彼は彼で間違ってはいなかっただろう。
プライベートの彼の気味悪さはちょっとした
ホラーだった。
美しい彼女がいるのが
ちょっと不思議に思えるくらい
だったけれど、それは多分
先に母親目線を見ているからだろう。
子どもたちの見たことは事実。
それは子どもたち一人一人の真実。
すぐにはやし立てるお調子者、
いじめとは思っているのかいないのか
思慮深さのないことをする生徒。
男子は。。。ということではすまされないなぁと思う。
それは私目線だ。
そういうやつが大嫌いだった過去を思い出してしまった。
先生は正すべき生徒を間違えた
それは、子どもがそうなるようにしたからだ。
学校目線はどうなのか。
これが一番最低かな。
事実も調べない、真実もない。
学校の真実は、まるくおさめることだ。
特徴的だった
校長先生。
それはもうほんとうに
母親目線から見ているときは
絶望的だ。
この校長先生にも
また、別の真実がある。
校長先生と湊がトロンボーンとホルンを
吹くところは圧巻だった。
そこにだけに、明かされない真実がある。
その真実を隠したがために
いろんなことが起こってしまった。
「誰かにしか手に入らないものは幸せとは言わない。
誰でも手に入るものを幸せというの」
校長の言う言葉、重い。
麦野湊と星川依里、
二人の二人だけの真実。
子どもに生き方を押し付けてはいないか
当たり前を押し付けてはいないか
嘘をつかなければならなかったのは
誰かを幸せにしたいから。
あぁ、
全てにおいて切ない。
大切な人を大切にすることは
別の大切な人を傷付けることなのだろうか。
きっとなるんだろうな。
人は傷つけあって生きている。
流石の坂本裕二氏
さすがです
ぎゅーってなる大人の恋愛映画を
書いて欲しいと思っていたし
なんで是枝監督なのかなぁと
思っていたけど流石だった。
全ての役者が素晴らしかった。
台無しにする人が誰もいないというのは
すごい。
特に、黒川想矢くんと柊木陽太くん
是枝監督は子役を選ぶのが絶妙だ。
坂本龍一氏の音楽も
心にきりきりと迫った。
今年の一番がやってきた感じ。