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DSM-5について

2019年02月24日 | 教育
 DSM-5は,米国精神医学会(APA)によって2013年に発行された精神疾
患の診断分類体系の最新版である。DSMとは,米国精神医学会が作成する
精神疾患,精神障害の分類マニュアルである。正式には「精神疾患の診断統計マ
ニュアル(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)」と
いう。本来はアメリカの精神科医が使うことを想定したものだが,事実上,国
際的な診断マニュアルとして使われている。DSMの初版(DSM-Ⅰ)は1952
年に出版され,以降数回に渡って改訂版が発行されてきた。

1 DSMの歴史

 米国における精神疾患分類の歴史は19世紀の人口調査における疾病の統計分
類に始まった。1917年,米国精神医学会(APA)は各精神科病院で統一して
用いる統計分類を作成し,これは後の国税調査に採用された。当時の精神疾患分
類は,臨床よりも統計上の使用を主な目的としていた。その後,第二次世界対戦
を経て,精神科診断の信頼性を高める機運が国際的にも高まり統一した精神疾患
分類の開発が進んだ。

2 DSMの目的

 第二次世界大戦中,兵士の適性検査や帰還兵の治療において精神科医が重要な
役割を果たした。その治療を目的としてこの時に使われた診断マニュアルが,現
在のDSMのもとになっている。
 第3版(DSM-Ⅲ)以降,DSMは,精神医学に「共通言語」を与えるという目
標があった。これは,精神科医のそれぞれの見解によるものではなく統一され
た基準を作り,それにしたがって根拠に基づいた医療行為を行うということが
大きくあった。この方針が, DSMの在り方の基本となっている。
 そして,作られた診断基準が適切かどうかを見直し場合によっては修正するこ
とも,DSMが「共通言語」として機能していくためには大切なことであり,改
定がなされてきた。

3 DSM-5全体の改定点

 DSM-5でこれまでの改訂版と比較して最も大きく変わったのは各精神障害
群の章の構成である。DSM-ⅢからDSM-Ⅳまでは,冒頭に児童青年期の精神障害
があり,続いて器質性精神障害,物質関連障害統合失調症・精神病障害等の順
であった。DSM-5では,生涯の発達に沿って構成され,「幼年期・児童期」で
現れる統合失調症・スペクトラム障害及び他の疾患,その後「青年期・成人期
早期「に出現することの多い障害群,最後は「老年期」に関連する障害群とい
う流れになった。
 具体的な診断の中での変更点として,最もよく知られているのは,「自閉スペ
クトラム症/自閉症スペクトラム障害(autism spectrum disorder)」とい
う概念が導入されたことである。「自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラ
ム障害」は,DSM-IV-TRで「自閉性障害」「アスペルガー障害」「広汎性発達
障害」「高機能自閉症障害」などと呼ばれていたいくつかの障害をすべて含ん
でいる。アスペルガー障害という名称は広く使われているが,医療の世界では
現在,診断名もつかなくなった。
 「スペクトラム」(連続体)という見方は,DSM-5でとくに重視されている
見方である。これは,診断項目に「当てはまるか,当てはまらないか」を判断
するよりも,その症状が少しあるのか,強くあるか,「どの程度当てはまる
か」を判断するほうがが適切だろうという考え方である。こうした考え方は,
診断名としてはもちろん,診断方法としてもDSM-5を特徴付けている点の1つ
でもある。

4 診断のされ方

 DSM-5では,まず,精神障害が大きく22カテゴリーに分類されている。そ
の下に,一つひとつの診断名が挙げられている。たとえば,ADHD(注意欠如
・多動症/注意欠如・多動性障害)は,DSMでは「神経発達症群/神経発達
障害群」という大分類の下にある。「神経発達症群/神経発達障害群」には,
ADHDのほかに,・知的能力障害群(知的障害)・コミュニケーション障害群
(吃音など)・自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害・限局性学習
症/限局性学習障害(ディスレクシアなど,いわゆる「学習障害」)・運動
症群/運動障害群(発達性協調運動障害,チックなど)が含まれている。


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