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ある宇和島市議会議員のトレーニング

阪神大震災支援で動きの悪い体に気づいてトレーニングを始め、いつのまにかトライアスリートになってしまった私。

【戦時の人肉食】難波先生より

2014-11-04 09:08:19 | 難波紘二先生
【戦時の人肉食】
 ニューギニア戦では地元福山市編成の「第四一連隊」が投入されたこともあり、「中国新聞」編集委員だった御田重宝が「人間の記録」シリーズとして少なくとも3冊の本を1988年までに出しているが、「週刊朝日」だけでなく「正論」12月号の田辺敏雄もこれを引用していない。
 御田の『戦争と人間の記録:ニューギニア地獄の戦場』(徳間書店, 1978)だけでも読むべきだったろう。この本は、目次もしっかりしており、索引はないが参考文献が多数載っている。巻末には「南海支隊主要将校」名簿もある。ここに「正岡隆中尉」がいる。

 私はこの第三大隊第三機関銃中隊正岡隆中尉の従卒だった西沖芳松(94)元上等兵に12回のインタビューを行い、「病気になった中尉のために人肉を塩と交換で入手した」という話を聞き出した。もちろん本人も食っている。
<「白ブタの肉」は人肉と知って食った。一塊の重量は一五〇グラムぐらいあった。咬んで少しずつ口に入れて食べた。少し酸味があってあまり旨いものではなかった。>
という。当時「白ブタ」がオーストラリア兵の屍肉を意味することは、現地の日本兵には広く知られていた。
 御田も上掲書で、飢えた兵に豪州兵の死体が「食糧に見えた」、それを知った豪州軍がスピーカーで「それはやるな。日本兵は卑怯ではないか」と呼びかけてきた(p.241-42)と、食人の事実を間接的に表現している。

 私がニューギニア高地における日本兵の食人に興味を持つのは、現地パプア人に食人の風習がありこれがクルー病という遅発性脳疾患の原因であり、クロイツフェルト・ヤコブ病と近縁であること。
 これを発見した米NIHのC.ガジュセックにノーベル医学賞(1976)が出て、さらにその病原体がプリオンだと発見した米S.B.プルシナーにもノーベル医学賞(1997)が与えられているからだ。(福岡伸一学習院大教授『プリオン説は本当か?』講談社ブルーバックス, 2005のようにこれを疑う日本人学者もいる。)

★10/24(木)=ブランドン・パーマーの「日本統治下の朝鮮」に関する2冊目の本が出た。
http://www.amazon.co.jp/%E3%83%96%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%89%E3%83%B3-%E3%83%91%E3%83%BC%E3%83%9E%E3%83%BC/e/B00OR1VEIK/ref=dp_byline_cont_book_1
 『検証・日本統治下朝鮮の戦時動員 1937〜1945』(草思社, 2014/10)
 予約注文をアマゾンにしておいたものだ。ブランドンは1970年生まれ、現コースタル・カロライナ大准教授。近代朝鮮史が専門で、2005年ハワイ大学から博士号(朝鮮史)を得ている。その時教授だったジョージ・秋田の指導を受け、前著『日本の朝鮮統治を検証する 1910-1945』を共著で書いた。
 本としてはG.アキタ & B.パーマー『<日本の朝鮮統治>を検証する 1910〜1945』(草思社, 2013)の方が、読みやすいし幅がひろい。
 今回のものは、学位論文をもとに本にしたもので、基本的には学術書だが、索引と引用文献がしっかりしており、(彼は日本語、朝鮮語、英語が読めるようだ)各種統計までよく表にそろっている。朴正煕が軍隊志願をした時の血書文面まで引用してある。
 「はじめに」の序論部では、「日本の朝鮮統治時代」についての日韓米の研究の現状がうまく紹介されていて、著者の問題意識がよくわかる。NCIのHPをコピーした小保方晴子とは大違いだ。4章に分かれているが、各章末に100~200個以上の注がつき、巻末に索引がある。参考文献も300冊以上あげられている。
 実証的データに基づいて論理(ロジック)を組み立てており、これで「慰安婦問題」と「強制連行」の話は終わったといえよう。なぜ日本の近現代史学者はこういう本が書けないのだろうか。
 日本人の関係者として首相の小磯国昭、朝鮮総督の南次郎、映画監督の今井正、作家の梶山季之が出てくるが、以下は知らない人たち:
 上田竜男、内海愛子、塩原時三郎、柴山兼四郎、田中武雄、樋口雄一。
 まあ、あとでじっくり読むことにしよう。

 この本は最近、韓国でも次第に台頭しつつある「植民地近代化」理論、つまり台湾では常識になっているが、「植民地にまげずに近代化したのではなく、植民地のせいで近代化した」という理論を実証したものだ。
 序文を寄せているマイクル・ロビンソン(インディアナ大准教授)が要約しているように、「朝鮮では戦時産業化にともなって、新しい経済社会環境が生まれ、民衆は植民地体制のもとで当局に協力し、労働にいそしむ機会が生まれた」(p.9)という説が本当らしく見える。
 ただ日本の設備投資は半島北部に集中していたから、最初は北朝鮮が工業国で、南は農業国だった。「日韓基本条約」で日本が韓国に多額の無償援助を行ったから「漢江の奇跡」が起き、韓国の高度成長経済が始まったということだろう。
 さあ、この本をどの新聞が最初に書評するかが楽しみだ。
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