ある宇和島市議会議員のトレーニング

阪神大震災支援で動きの悪い体に気づいてトレーニングを始め、いつのまにかトライアスリートになってしまった私。

【ドングリ調理】難波先生より

2014-10-20 19:12:05 | 難波紘二先生
【ドングリ調理】
 「ドングリは水で晒すとあくが抜ける」と東京の栄養学者W氏がメールで知らせてくれたので、実験することにした。調理場にゆでたまま置いてあったドングリを、まずアーミーナイフの短い刃を使って縦に切断した。こうすると殻がすぐに取れる。「たで食う虫」というが、1個だけ虫食いのドングリがあり、中に死んだ幼虫がいた。このドングリは表面にカビがわいていた。
 ついで「晒す方法」を考えた。ザルに入れて水道水を使うのは安易だ。ポットの温度を低温にして、これを「晒し器」として利用することも考えたが、「縄文人の方式」の追試をすることにした。
 小川の水に切断したドングリの実を晒すことにした。そこでまず浅い容器、捕虫網、ザルを考えたが、浅い流水に晒すには「多数の穴のあいた袋」がよいと考えた。
 そこで廃品の透明なビニール袋にパンチを使って沢山の穴を開けた。2連パンチだから一回で2個穴があくし、三重に折りたためば一度に6個の穴があく。割ったドングリをこの袋に詰めて平坦になるように、ホッチキスで要所要所を留めたら、こんなものができた。(写真7)
写真7)
 これを小包ひもでくくり、小川の縁の木の幹に括りつけた。うまく水に晒されるようになったが、さて腐らずに渋が抜けるか。それとも夜のうちに、イノシシか狸に食われてしまうか。(写真8)サンダルで行ったので危うく土段を滑り落ちるところだった。台風で段が一部壊れていた。暗闇は危ない。
(写真8)
 帰りに巨大なナメクジが落ち葉の上にいるのを発見した。滅多に見ないヤマナメクジの大物だ。
10/15朝、見に行くとドングリは無事だったが、ナメクジのいたあたりに狸かアナグマの穴が掘られていた。
 1日半水に晒して食ってみたら渋くなかったので、殻を除去し、ナイフで裁断してすり鉢で摺って粉にした。ガラスのコーヒーカップに入れ、「片栗粉(実際は馬鈴薯デンプン)」を20%混ぜ、甘みを出すためパルスィートを小さじ2杯分加えた。水を加えたら多すぎた。さじでよく掻き回したら泥状になった。
 電子レンジの「オーブンモード」で5分加熱しても固化しないので、ガラス蓋の金属鍋に移し、プロパンガスで加熱した。約10分で上の水が蒸発し固化したので、取り出そうとして、コップの取手をティシューペーパーで持ったら、鍋底に触れた部分が黒く焦げて燃え始めた。摂氏250度以上になっている(紙の燃焼温度)という証拠だ。(レイ・ブラッドリ『華氏451度:本のページに火がつき、燃え上がる温度』,ハヤカワ文庫, 1975)
 あわてて濡れ布巾でつかみ、ステンレスのキチン卓上に置いたら、ガラスコップがパチンと壊れた。ともかくハプニングはあったが、「ドングリクッキー」が1個できた。(写真9)ルーペとピンセットでガラス細片を除去するのにひと苦労した。
(写真9)
 夕食時に家内と半分わけして食べた。家内は「美味しい」といってくれた。しかし自己評価では、堅さはまずまずだが、粉粒が荒く、甘みはあるが渋みが少し残っており、あまりうまいとはいえない。重曹でも使って少しふくらした方が良かったと思う。恐らく20%の「馬鈴薯デンプン」がなければ成形に失敗しており、「縄文クッキー」が存在したとする中野益男説には賛成できない。
 で、家内にドングリの種名を聞かれたが答えられないでいると、「ドングリはへた(殻斗=かくと)の形で分類する」とへたの形状を問われた。実を拾うのに夢中で、そこまで見ていない。
 仕方なく翌日の午後、また山に登って実とへたを拾ってきた。(写真10)
(写真10:スケールは1cm
 家内に借りた『どんぐり ころころ』(ひさかたチャイルド, 2007)という子供用写真集を見ると、アベマキ、クヌギ、カシワの順によく似ているが、『原色日本植物図鑑:木本編Ⅱ』(保育社, 1979)、『原色植物図鑑』(集英社, 1964)、馬場多久男『花実でわかる樹木:951種の検索』(信濃毎日新聞社, 2009)を見ても、自信をもって同定できない。どなたかのご教示をお願いしたい。
 WIKIに「縄文時代に食用にされた」とあるのはクヌギだけだが、煮たらあまり渋みはない。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AF%E3%83%8C%E3%82%AE
 『平凡社・世界大百科事典』(1972)には「団栗は、クヌギ、ナラ、カシなどクリに似た果実の俗称」とあった。「イチイガシ、ウバメガシは食用になり、カシワの果実からはデンプンをとる」ともあった。ますます混乱する。
 「廻れば大門の見返り柳いと長けれど、お歯ぐろ溝(どぶ)に燈火(ともしび)うつる…」と樋口一葉「たけくらべ」(『樋口一葉小説集』ちくま文庫)の冒頭に出てくる「お歯黒」は「ウバメガシの葉の渋(タンニン)と鉄からつくられた」ともある。
 今回の実験考古学のテストは、元「国立健康栄養研究所」理事長W氏への報告を兼ねて、ひとまずこれで終わりだ。しかし『食品標準成分表』にはトチは載っているがドングリはどれも載っていないなあ。
コメント (1)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 【昆虫整理】難波先生より | トップ | 【小川論文要約】難波先生より »
最新の画像もっと見る

1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (Unknown)
2014-10-21 02:45:19
お写真のドングリは、クヌギかアベマキです。写真だけだと区別するのは不可能です。落ち葉の裏側を見れば、密生したトリコームが残って白っぽいのがアベマキだと判断できます。ただ、両種は交雑もできるので、雑種の可能性もあります。

私は、クヌギに1票。
返信する

コメントを投稿

難波紘二先生」カテゴリの最新記事