【「死の臓器」TV版】
USBでテレビドラマ「死の臓器」(全5回:各50分)を送ってくれた方があり、とりあえず最終回を見た。厚く感謝いたします。初めにこれまでの要約があり、原作を読んでいたから、よくわかった。TVドラマは時間がかかるので、私は苦手だ。本だと拾い読みができるが、ドラマだとそうもいかない。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%AD%BB%E3%81%AE%E8%87%93%E5%99%A8
「レストア腎移植・意見交歓会」という患者団体と移植学会との討論会が開かれていたり、上海の病院での腎移植が、台湾になっていたりなど、原作との違いもあった。
エンディング・クレジットに「レストア腎移植は、2015年現在、有効性および安全性が予測される臨床研究でのみ実施が認められている術式です」と出て驚いた。
原作ではTV取材の沼崎恭太が「報道スクープ」に登場して、富士樹海殺人事件と渡航移植の謎解きをするだけだが、ドラマでは沼崎が予定外の「メディア批判」をする。これは3月の「報道ステーション」での古賀茂明発言を意識したものか、と思った。
主役のジャーナリスト沼崎恭太を演じているのは、小泉孝太郎で、万波医師をモデルにした日野医師を武田鉄也が演じていた。監督は佐藤裕市だった。「時を駈ける少女」で記憶がある。
8/9「スポ日」はこう伝えている。
http://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2015/08/09/kiji/K20150809010898140.html
<小泉孝太郎(37)主演のWOWOWの連続ドラマW「死の臓器」が「リアルすぎて怖い」と視聴者の間で評判となっている。「臓器売買」という地上波のドラマではなかなか取り上げられないテーマだけに、刺激を求める視聴者には「怖いもの見たさ」の心理も手伝って注目が集まっている。
麻野涼氏の同名小説が原作で、人体実験かと思われた謎の遺体から、やがて臓器売買の闇へとつながっていくというサスペンスドラマ。“臓器移植せずに人工透析をすすめ、金儲けをする”といったセリフも出てくるなど、現代の医療倫理に対し深く切り込んだ骨太の作品に仕上がっている。…
7月12日放映の初回の満足度は高満足度の基準3・7を超える3・89(5段階評価)で、最終回直前の8月2日放映の第4話では4・0まで上昇した。
9日は最終回。物語の発端となった“樹海の遺体”の謎がいよいよ明かされる。>
その後、全5話をざっと見たが、日本の移植医療の現状、渡航移植ビジネス、透析医療、マスコミの誤報などの問題をリアルに扱っていて、迫力があった。
テレビ局下請け会社の沼崎(小泉孝太郎)と白井刑事(豊原功補)が、対立する立場で協力して謎を解いて行くところも面白く思った。
原作では「レストア・キッドニ」となっているが、ドラマでは「レストア腎」、「修復腎」となっていて、「修復腎移植」への理解も深まったものと思われる。(「修復腎、レストア移植という言葉が頻繁に出てきましたが、こうした流れがさらに加速すればいいなと思いました」という意見が視聴者のひとりから寄せられた。)
ドラマの中で厚労省の「調査委員会」が「26例のレストア腎移植例中、1例がんが再発して亡くなった例がある」とその危険性と手術の禁止を言い渡す場面がある。日野医師がレストア腎移植を受けた患者の家に車を走らせ、息子から父親死亡の原因について聞く場面が続く。
この患者については想い出がある。著者が07年1月に松山市で行った講演では「病理解剖がおこなわれていないので、尿管癌と肺・肝臓腫瘍との関連性は決定できない」と誤解のないよう強調したのだが、朝日新聞が「尿管癌の転移による肺癌で死亡」と大誤報した。
この移植は尿管癌の症例で、94年に、愛媛県在住の65歳の女性から高知県在住の45歳男性に移植されたものだ。初回移植が母からで、2回目の移植となる。ところがこの男性の場合、2年2ヵ月後に移植腎の腎盂に、予想しなかった癌の局所再発が起こった。腎盂は漏斗状をしていて腎臓から出る尿を集め、尿管に送る部分である。通常なら腎臓を摘出するところだが、患者が透析に戻ることを拒否したため、やむなく癌を部分切除した。
その後肺に単発性病巣が現れ、喀痰と気管支の擦過細胞診により、「肺原発の扁平上皮癌」と診断されている。(この時、がん細胞のドナー由来が疑われたら、性染色体を調べれば、男性ならY染色体が、女性ならX染色体のみが検出されるので、簡単に決着がついただろう。つまり原発について、臨床上の疑念はなかったということだ。)さらに同時期に肝転移が発見され、99年1月に市立宇和島病院で死亡した。第1回目の移植から9年11ヵ月、修復腎移植から4年11ヵ月生きたことになる。病院のカルテは破棄されていた。
その後、妻の手許に死亡診断書が保存されているのが発見された。そこに直接死因=「転移性肝癌」、その原因=「肺癌」と記入されているのを確認できた。病理解剖が行われていない以上、医学的・法的に意味を持つのは死亡診断書で、患者は同病院検査部の記録と死亡診断書に照らし合わせて、「移植腎は生着したまま、原発性肺がんとその肝転移により死亡した」と断定せざるをえない。つまり移植腎由来のがんではない。
ドラマでは小泉孝太郎の沼崎恭太が「この事実を伝えるべきだ。この大誤報はニュースになる」と叫ぶ場面が出てきて、ついこのことを思い出した。報道関係者は思い込みで記事を書かないでほしいものだ。なお原作(麻野涼「死の臓器」, 文芸社文庫)については、前にアマゾンのレビューに実名で書評を書いた。7件のレビューがあり6/7が五つ星になっている。
USBでテレビドラマ「死の臓器」(全5回:各50分)を送ってくれた方があり、とりあえず最終回を見た。厚く感謝いたします。初めにこれまでの要約があり、原作を読んでいたから、よくわかった。TVドラマは時間がかかるので、私は苦手だ。本だと拾い読みができるが、ドラマだとそうもいかない。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%AD%BB%E3%81%AE%E8%87%93%E5%99%A8
「レストア腎移植・意見交歓会」という患者団体と移植学会との討論会が開かれていたり、上海の病院での腎移植が、台湾になっていたりなど、原作との違いもあった。
エンディング・クレジットに「レストア腎移植は、2015年現在、有効性および安全性が予測される臨床研究でのみ実施が認められている術式です」と出て驚いた。
原作ではTV取材の沼崎恭太が「報道スクープ」に登場して、富士樹海殺人事件と渡航移植の謎解きをするだけだが、ドラマでは沼崎が予定外の「メディア批判」をする。これは3月の「報道ステーション」での古賀茂明発言を意識したものか、と思った。
主役のジャーナリスト沼崎恭太を演じているのは、小泉孝太郎で、万波医師をモデルにした日野医師を武田鉄也が演じていた。監督は佐藤裕市だった。「時を駈ける少女」で記憶がある。
8/9「スポ日」はこう伝えている。
http://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2015/08/09/kiji/K20150809010898140.html
<小泉孝太郎(37)主演のWOWOWの連続ドラマW「死の臓器」が「リアルすぎて怖い」と視聴者の間で評判となっている。「臓器売買」という地上波のドラマではなかなか取り上げられないテーマだけに、刺激を求める視聴者には「怖いもの見たさ」の心理も手伝って注目が集まっている。
麻野涼氏の同名小説が原作で、人体実験かと思われた謎の遺体から、やがて臓器売買の闇へとつながっていくというサスペンスドラマ。“臓器移植せずに人工透析をすすめ、金儲けをする”といったセリフも出てくるなど、現代の医療倫理に対し深く切り込んだ骨太の作品に仕上がっている。…
7月12日放映の初回の満足度は高満足度の基準3・7を超える3・89(5段階評価)で、最終回直前の8月2日放映の第4話では4・0まで上昇した。
9日は最終回。物語の発端となった“樹海の遺体”の謎がいよいよ明かされる。>
その後、全5話をざっと見たが、日本の移植医療の現状、渡航移植ビジネス、透析医療、マスコミの誤報などの問題をリアルに扱っていて、迫力があった。
テレビ局下請け会社の沼崎(小泉孝太郎)と白井刑事(豊原功補)が、対立する立場で協力して謎を解いて行くところも面白く思った。
原作では「レストア・キッドニ」となっているが、ドラマでは「レストア腎」、「修復腎」となっていて、「修復腎移植」への理解も深まったものと思われる。(「修復腎、レストア移植という言葉が頻繁に出てきましたが、こうした流れがさらに加速すればいいなと思いました」という意見が視聴者のひとりから寄せられた。)
ドラマの中で厚労省の「調査委員会」が「26例のレストア腎移植例中、1例がんが再発して亡くなった例がある」とその危険性と手術の禁止を言い渡す場面がある。日野医師がレストア腎移植を受けた患者の家に車を走らせ、息子から父親死亡の原因について聞く場面が続く。
この患者については想い出がある。著者が07年1月に松山市で行った講演では「病理解剖がおこなわれていないので、尿管癌と肺・肝臓腫瘍との関連性は決定できない」と誤解のないよう強調したのだが、朝日新聞が「尿管癌の転移による肺癌で死亡」と大誤報した。
この移植は尿管癌の症例で、94年に、愛媛県在住の65歳の女性から高知県在住の45歳男性に移植されたものだ。初回移植が母からで、2回目の移植となる。ところがこの男性の場合、2年2ヵ月後に移植腎の腎盂に、予想しなかった癌の局所再発が起こった。腎盂は漏斗状をしていて腎臓から出る尿を集め、尿管に送る部分である。通常なら腎臓を摘出するところだが、患者が透析に戻ることを拒否したため、やむなく癌を部分切除した。
その後肺に単発性病巣が現れ、喀痰と気管支の擦過細胞診により、「肺原発の扁平上皮癌」と診断されている。(この時、がん細胞のドナー由来が疑われたら、性染色体を調べれば、男性ならY染色体が、女性ならX染色体のみが検出されるので、簡単に決着がついただろう。つまり原発について、臨床上の疑念はなかったということだ。)さらに同時期に肝転移が発見され、99年1月に市立宇和島病院で死亡した。第1回目の移植から9年11ヵ月、修復腎移植から4年11ヵ月生きたことになる。病院のカルテは破棄されていた。
その後、妻の手許に死亡診断書が保存されているのが発見された。そこに直接死因=「転移性肝癌」、その原因=「肺癌」と記入されているのを確認できた。病理解剖が行われていない以上、医学的・法的に意味を持つのは死亡診断書で、患者は同病院検査部の記録と死亡診断書に照らし合わせて、「移植腎は生着したまま、原発性肺がんとその肝転移により死亡した」と断定せざるをえない。つまり移植腎由来のがんではない。
ドラマでは小泉孝太郎の沼崎恭太が「この事実を伝えるべきだ。この大誤報はニュースになる」と叫ぶ場面が出てきて、ついこのことを思い出した。報道関係者は思い込みで記事を書かないでほしいものだ。なお原作(麻野涼「死の臓器」, 文芸社文庫)については、前にアマゾンのレビューに実名で書評を書いた。7件のレビューがあり6/7が五つ星になっている。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます