昨夜のNスペ「人体ミクロの大冒険3」(老いと免疫)を見て違和感を覚えた。
「老化」といえばよいのに、何で「老い」というのか。
「老い」は個体全体の現象で、「老化」はエイジング(Aging)であり、細胞にも部品にも使える。言葉は論理の基礎であり、正確な言葉を使わないと、論理そのものが破綻する。
イタリアのサルディニア島に「百歳人」が多いというが、人口の年齢別構成、平均寿命、有病率、死因はどうなっているのか。
百歳の老女が眼鏡なしで新聞を読むが、彼女の視力や水晶体の弾性率は若い人と同じなのか? 焦点距離が30センチ位に固定されていて、白内障がなければ、裸眼で新聞は読める。
山中伸弥教授が出て来て、iPS細胞から精子も卵子もできると口走るが、仮にiPS細胞を同じ2倍体の精母細胞、卵母細胞に誘導しても、精子や卵子を作る「減数分裂」を制御できるのか?
老化は免疫系にも起きる。これは高齢化に伴い「血液のがん」である悪性リンパ腫が多発する理由であるし、自己免疫病が増える理由でもある。
それを「5分間の運動で、免疫細胞の老化が防げる」だのとは、トンデモといわれても仕方がないだろう。
金属にも疲労があるし、星にも寿命がある。
オリバー・ウエンデル・ホームズはハーヴァード大学の内科学教授で名随筆で知られる。息子が同名の米最高裁判事で、これも法学者として有名だ。
父ホームズの詩に「協会執事の傑作」あるいは「完全な馬車」がある。
車輪、車軸、スプリング、ボルト、座席、御者台、どこも故障することなく、百年間乗ることができた。ある朝、牧師が乗って出かけたところ、小さな丘の傍の集会堂の傍で馬が止まった。
初めに小さな振動が起こり、ついで馬車がきしみ始め、ボロボロと崩れ始めた。
気がついたら牧師は路傍の岩に腰掛けていた。路上には崩れ落ちて原型をとどめない馬車の残骸があった。(L.トマス「歴史から学ぶ医学」思索社, 1986)
まあ、これが理想の人の一生だろう。もともと生物としては子孫を残した後は「余生」なので、進化は生殖を終えた個体を長持ちさせるように設計していない。カゲロウもサケも産卵したら個体は死ぬ。
ヒトだけが言語により文化的伝達単位「ミーム」を獲得したので、長寿者が知恵を蓄積できるようになり文化が生まれ、文明が生まれた。
時間が一方向にしか流れないこと、すべて物質は低エネルギー状態に向かうこと(エントロピーが増大すること)は「熱力学第二法則」に従っている。何ものもこの法則から逃れられない。
「死ぬ時節には死ぬがよく候。これは是、災難を逃るる妙法に候。」(良寛)
部分の異常は修理交換が効くが、システムの異常は完全には直せない。ことに時間経過にともなう成人病いわゆる生活習慣病は無理である。私は糖尿病を「糖質制限食」で直したが体質的に糖新生機能が高く、タンパク質と脂肪しか取らないのに、空腹時血糖は130mg/dlが続いている。
NHKは公共放送として正しい科学解説番組をつくり、間違った「不老不死」願望を正さなければいけないのに、Nスペの担当者はおかしい。
「教養とは専門的知識はなくても、相手の話のどこが正しくどこか間違いかを判断できる能力をいう」(アリストテレス)
Nスペのディレクターにはこの意味での教養が欠けているようだ。
Nスペの「超常現象」にはあきれたので、今回書評に取り上げました。
藻谷浩介+NHK広島「里山資本主義」(角川新書)は、点と線だけを取材したインチキ本だと思う。里山は桃源郷だと書いてある。実態は「檻の中」をお読み下さい。
東広島市がその檻を「14年間貸与する」とかで、この集落の世話人が同意書を取りに来た。「タダから申し込みたい」そうだ。14年間貸与とは返す必要がないということだ。その頃には、この集落は人口が半分以下になっていて、檻と柵だけが残っているだろう。
修復腎移植にも書くことが沢山ありますが、ノバルティス社奨学寄付金問題と小川発表于、高木論文に触れました。
高橋さん執筆の「修復腎移植を考える」パンフの送付依頼が相継いでいますが、
送付先と希望部数を明記して下さるようにお願いいたします。(送料無料)
「老化」といえばよいのに、何で「老い」というのか。
「老い」は個体全体の現象で、「老化」はエイジング(Aging)であり、細胞にも部品にも使える。言葉は論理の基礎であり、正確な言葉を使わないと、論理そのものが破綻する。
イタリアのサルディニア島に「百歳人」が多いというが、人口の年齢別構成、平均寿命、有病率、死因はどうなっているのか。
百歳の老女が眼鏡なしで新聞を読むが、彼女の視力や水晶体の弾性率は若い人と同じなのか? 焦点距離が30センチ位に固定されていて、白内障がなければ、裸眼で新聞は読める。
山中伸弥教授が出て来て、iPS細胞から精子も卵子もできると口走るが、仮にiPS細胞を同じ2倍体の精母細胞、卵母細胞に誘導しても、精子や卵子を作る「減数分裂」を制御できるのか?
老化は免疫系にも起きる。これは高齢化に伴い「血液のがん」である悪性リンパ腫が多発する理由であるし、自己免疫病が増える理由でもある。
それを「5分間の運動で、免疫細胞の老化が防げる」だのとは、トンデモといわれても仕方がないだろう。
金属にも疲労があるし、星にも寿命がある。
オリバー・ウエンデル・ホームズはハーヴァード大学の内科学教授で名随筆で知られる。息子が同名の米最高裁判事で、これも法学者として有名だ。
父ホームズの詩に「協会執事の傑作」あるいは「完全な馬車」がある。
車輪、車軸、スプリング、ボルト、座席、御者台、どこも故障することなく、百年間乗ることができた。ある朝、牧師が乗って出かけたところ、小さな丘の傍の集会堂の傍で馬が止まった。
初めに小さな振動が起こり、ついで馬車がきしみ始め、ボロボロと崩れ始めた。
気がついたら牧師は路傍の岩に腰掛けていた。路上には崩れ落ちて原型をとどめない馬車の残骸があった。(L.トマス「歴史から学ぶ医学」思索社, 1986)
まあ、これが理想の人の一生だろう。もともと生物としては子孫を残した後は「余生」なので、進化は生殖を終えた個体を長持ちさせるように設計していない。カゲロウもサケも産卵したら個体は死ぬ。
ヒトだけが言語により文化的伝達単位「ミーム」を獲得したので、長寿者が知恵を蓄積できるようになり文化が生まれ、文明が生まれた。
時間が一方向にしか流れないこと、すべて物質は低エネルギー状態に向かうこと(エントロピーが増大すること)は「熱力学第二法則」に従っている。何ものもこの法則から逃れられない。
「死ぬ時節には死ぬがよく候。これは是、災難を逃るる妙法に候。」(良寛)
部分の異常は修理交換が効くが、システムの異常は完全には直せない。ことに時間経過にともなう成人病いわゆる生活習慣病は無理である。私は糖尿病を「糖質制限食」で直したが体質的に糖新生機能が高く、タンパク質と脂肪しか取らないのに、空腹時血糖は130mg/dlが続いている。
NHKは公共放送として正しい科学解説番組をつくり、間違った「不老不死」願望を正さなければいけないのに、Nスペの担当者はおかしい。
「教養とは専門的知識はなくても、相手の話のどこが正しくどこか間違いかを判断できる能力をいう」(アリストテレス)
Nスペのディレクターにはこの意味での教養が欠けているようだ。
Nスペの「超常現象」にはあきれたので、今回書評に取り上げました。
藻谷浩介+NHK広島「里山資本主義」(角川新書)は、点と線だけを取材したインチキ本だと思う。里山は桃源郷だと書いてある。実態は「檻の中」をお読み下さい。
東広島市がその檻を「14年間貸与する」とかで、この集落の世話人が同意書を取りに来た。「タダから申し込みたい」そうだ。14年間貸与とは返す必要がないということだ。その頃には、この集落は人口が半分以下になっていて、檻と柵だけが残っているだろう。
修復腎移植にも書くことが沢山ありますが、ノバルティス社奨学寄付金問題と小川発表于、高木論文に触れました。
高橋さん執筆の「修復腎移植を考える」パンフの送付依頼が相継いでいますが、
送付先と希望部数を明記して下さるようにお願いいたします。(送料無料)
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